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JOURNAL / 世界の食トレンド

「エチェバリ」の右腕。在バスク・前田哲郎氏の薪火レストランがついに開店!

Spain [Atxondo]

2023.07.10

「エチェバリ」の右腕。在バスク・前田哲郎氏の薪火レストランが開店!

text by Yuki Kobayashi / photographs by Txispa

スペイン料理界に詳しい人なら誰もが知る邦人シェフがいる。それが前田哲郎氏だ。フランスとの国境、バスク州オンダリビアの名店「アラメダ」で修業後、“薪火の魔術師”ビクトル・アルギンソニスがいるバスク州アチョンド村の「エチェバリ」へ。「世界のベストレストラン50」での成功など、世界的に評価の高いビクトルシェフの影には、この10年、常に支えてきた前田氏がいた。

その彼がエチェバリを去り、同じ村に薪火をメインとしたレストランを開いたのだから、話題にならないわけがない。業界に噂が流れ始めた2022年後半から、築400年の伝統的バスク家屋の改装工事現場を訪ねるフーディーや料理人が少なくなく、いつ開くのか、どんな料理が並ぶのかと注目の的だった。その「チスパ(Txispa)」が、2023年5月中旬にオープンした。


(写真)100%現地の食材で、かつ日本人にしか思いつかない料理を目指す前田哲郎氏。

(写真)100%現地の食材で、かつ日本人にしか思いつかない料理を目指す前田哲郎氏。

薪火焼きの粋を極めたJOSPERの特注器具が鎮座するキッチン。裏庭には彼とスタッフが丹精込めた畑。数々の魅力的な料理の中でも、牛タンのタン芯だけを糀漬けにして丸ごと焼いたものが素晴らしい。付け合わせには、自家製の牛タン醤に浸したワラビのおひたしが。当日に畑で収穫したリアスからし菜、水菜、クレソン、タネツケバナはシンプルを極め、畑の朝露をいただくような命の味。バスクのタコスである「タロ」を自家製そば粉で作り、鴨チョリソをのせ、鴨南蛮そばを彷彿させる一品にするなど、遊び心も随所に溢れる。ワインリストには熱狂的邦人ファンが多いベガ・シシリアも欠かさない。この村で、かつ日本人である彼だけにしかできない味だと、開店初日からインスタグラムが賑わう。

(写真)5000㎡の耕作地に耕作専門の日本人スタッフがいる贅沢な環境。レストランで扱うすべての野菜の自家栽培を目指している。

(写真)5000㎡の耕作地に耕作専門の日本人スタッフがいる贅沢な環境。レストランで扱うすべての野菜の自家栽培を目指している。

開店早々すでに世界各国のフーディーや、スペイン国内外のガストロノミージャーナリスト、料理人たちが続々、アチョンド村に詰めかけている。師匠ビクトルに追いつき、追い抜くのか。常に自然体で、師匠と同じようにこの村を愛し続ける前田シェフの挑戦から、しばらくは目が離せない。

(写真トップ)前田氏が扱う牛はフリソナ種とガリシア種のかけあわせ。150日間のドライエイジングの後、入念な火入れで完璧な状態に。

(写真)前菜の盛り合わせ。左奥から時計回りに:ウサギのコロッケ。ペレチコスと呼ばれる旬のキノコはフレッシュで。軽く炙った卵焼きの上には鰹節ならぬ鶏胸肉の削り節。軽くスモークした昆布の香りのエビ。ウナギの蒲焼はシェリービネガーと。アンチョビーはスペインのタパス「ヒルダ」を思い出させる。

(写真)前菜の盛り合わせ。左奥から時計回りに:ウサギのコロッケ。ペレチコスと呼ばれる旬のキノコはフレッシュで。軽く炙った卵焼きの上には鰹節ならぬ鶏胸肉の削り節。軽くスモークした昆布の香りのエビ。ウナギの蒲焼はシェリービネガーと。アンチョビーはスペインのタパス「ヒルダ」を思い出させる。

(写真)客席は6卓、最大24席。400年の歴史を持つ古民家は15年前まで使用されていたが、今回大規模な改装を行い、静寂の漂う空間に。

(写真)客席は6卓、最大24席。400年の歴史を持つ古民家は15年前まで使用されていたが、今回大規模な改装を行い、静寂の漂う空間に。



◎Txispa
San Juan Auzoa, 45, 48291 Atxondo, Bizkaia
コースのみ 250ユーロ(ドリンク、税込)
https://txispa.com/

*1ユーロ=157円(2023年6月時点)

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