「ごはん食べた?」 があいさつ
真鍋太一さん連載「“小さな食料政策” 進行中」第7回
2020.05.12
PEOPLE / LIFE INNOVATOR
連載:真鍋太一さん連載
「ごはん食べた?」があいさつの国があるそうだ。
日本でも、ご飯どきにその言葉を交わすことはあるが、
普段だと「元気?」という感じだろうか。
昔、婆ちゃんの家にいくと「ご飯食べたんか?」と聞かれていたのを思い出す。
それは、あさ、ひる、ばん、関係なくかけられる言葉だった。
まちがっても「食べてない」と言わないほうがよかったが、
「食べた」と答えると婆ちゃんは少し寂しそうな顔をしていた。
ひととの接触や移動を大きく減らす中で、
何気なく毎日交わしていた「あいさつ」のことを考えた。
「おはよう」と毎日くり返しあいさつを交わしていると
答ひとつで、身体や仕事の調子がわかるときがある。
今更ながら「あいさつ」とは、相手を"思いやる"ことだと気づいたのだが、
そのあいさつが「ごはん食べた?」だとどうだろう。
神山に滞在していたNYの料理人 デイブが、彼にとって料理をつくることは、
"Taking Care of People”(ひとを大切にすること)だと言っていたが、
「ごはん食べた?」という、あいさつから始まる何気ない会話を思い浮かべるだけで、お腹の真ん中(胃袋)あたりが暖かく感じられ、どことなく安心感をおぼえるのはわたしだけだろうか。
輝いている食の業界は、見渡すといつのまにか“Taking Care of People”から、つくる人と食べる人のあくなき欲求を満たすための手段になっていなかっただろうか。
この分断がさらなる分断を生む感じは、しばらく続きそうだ。
あいさつは、誰かを大切に思うことであり、誰かに大切にされていると安心を与えることとも言えないだろうか。次、だれかに会う時は「ごはん食べた?」というあいさつからはじまる何気ない会話から、人が人とともに在ること、人が自然ともに在ることを、より一層深く感じられるといいなと思う。
真鍋 太一(まなべ・たいち)
1977年生まれ。愛媛県出身。アメリカの大学でデザインを学び、日本の広告業界で8年働く。空間デザイン&イベント会社JTQを経て、WEB制作の株式会社モノサスに籍を置きつつ、グーグルやウェルカムのマーケティングに関わる。2014年、徳島県神山町に移住。モノサスのデザイン係とフードハブ・プロジェクトの支配人、神田のレストラン the Blind Donkey の支配人を兼務。
http://foodhub.co.jp/