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RECIPE

【DIYレシピ12】フライパンで焼く英国パン「イングリッシュマフィン」

東京・東中野「ビスポーク」野々下レイシェフ

2022.10.03

photographs by Sai Santo

連載:DIYレシピ

塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。

教わるテクニック:発酵
教えてくれた人:東京・東中野「ビスポーク」野々下レイシェフ

英国スタイルのガストロパブ「ビスポーク」のオーナーシェフ。大学卒業後、音楽を志して留学したロンドンで「イギリス料理」に魅せられ、料理の世界へ。帰国後、フランス料理店、カフェ、大使館などで修業し、2012年現店オープン。料理はもちろんのこと、気さくで飾らない人柄と、キレのよいトークに魅了されて通いつめるファンも多数。雑誌『料理通信』の「自家製」特集では、4号連続で表紙の料理を担当。パン、調味料やソーセージ、燻製まですべて手作りし、著作『全部、自家製』(講談社)でレシピを惜しみなく紹介している。


家で作れる英国の伝統パン

なんでも自家製する野々下さんに教わるのは、イングリッシュマフィン。19世紀頃に英国で生まれ、当時、街角でマフィンを売り歩いた「マフィン・マン」がマザーグースの歌にも登場する伝統のあるパンだが、買おうとすると日本では「選択肢が少ない」ので、野々下さんはこのパンも手作りし、週末のブランチなどで提供している。

焼く道具はフライパンがメイン。ほどよい厚みがありながら、表面は平ら。平らな部分に焼き色をつけるが、脇にかけてはほぼ白。オーブンに入れて焼くと、こうはいかない。だからフライパンなのである。

最初はセルクルを使ったり、オーブンだけで焼いていたがうまくいかず、いろいろと調べた結果、フライパンで焼く方法を見つける。こうして理想通りのイングリッシュマフィンが完成した。

焼く時はずっと弱火。焦げないよう、約10分間は付きっきりで面倒をみなければならない。一人で切り盛りする店なので、そこはちょっと悩みだが、その分、捏ねる作業はフードプロセッサーで時間を短縮している。

「材料は全部、近くのスーパーで買えるもの。中に完全に火を通すために、最後にオーブンに入れますが、なければオーブントースターでOK。焦げないよう、アルミ箔で覆って、焼いてみてください」

しっかり冷ました後、横から水平にカットしてみる。「断面に大小の穴がしっかりできていれば成功です」


【材 料】(6個分)

強力粉(国産/はるゆたか)・・・200g
ドライイースト・・・4g
塩・・・4g
ハチミツ・・・大さじ1
ぬるま湯(30℃)・・・150ml
オリーブ油・・・大さじ1
コーングリッツ(粗挽き)・・・適量

【 作り方 】
[1]生地を作る:フードプロセッサーで混ぜる

フードプロセッサーに強力粉、ドライイースト、塩、ハチミツ、ぬるま湯を入れて回す。

[2]生地を丸める


生地がひとまとまりになったら止める。手で生地を丸める。

[3] 1次発酵:常温で1時間発酵させる

生地がくっつかないようボウルにオリーブ油を入れ、生地の表面にも絡める。ラップで覆って常温で1時間発酵させる。

 [4] ガス抜きをする

倍以上に膨らんだ生地。打ち粉を付けた指を突きさしてガス抜きをする。

[5]6等分に切る

太めの棒状に伸ばし、6等分に切る。

[6]丸める


生地を片手で包み、台の上で回して丸める。

[7] コーングリッツをまぶす

コーングリッツを入れたボウルに丸めた生地を入れ、上から軽く押さえて表面にまぶす。

[8] 2次発酵:常温で2次発酵させる

オーブンシートを敷いた天板に間隔を空けて並べ、ラップをかける。30~40分、常温で2次発酵させる。

[9] 発酵具合を確認する

指で押して、生地がすぐ戻るようなら、もうしばらく発酵時間を伸ばす。写真のように押した跡が残り、生地の弾力がなくなればよい。

[10] 2次発酵完了

2次発酵が終わった状態。直径8cmほどになった。

[11]フライパンで焼く

フライパンを弱火にかけ、マフィン生地を焼く。火は常に弱火で、片面4分ずつが目安。

[12] 焼き色を確認する

途中からマメにマフィンを持ち上げて焼き色を確認する。

[13]裏面も焼く

うっすらと焼き色が付いたら返す。軽く上から押さえ、平らにする。

[14] オーブンで火を通す

裏面にも焼き色が程よくついたら170℃のオーブン、またはトースターに3分入れ、中に完全に火を通す。
POINT:脇面にしわが寄っているのは完全に焼けていない状態。


店では、ピタパン、バゲット、カンパーニュ、クランペットなど様々なパンを手作りするが、イングリッシュマフィンは作っている最中から、他のパンに比べてどこか「めんこい」のだとか。

焼き上がったマフィンは一度完全に冷ます。生地を水平に切ったとき、断面に大きな気泡と小さな気泡が両方あるのがベスト。

【道具のポイント】

主役の道具!フライパン(クレープパン)
野々下さんは浅くて面の広いクレープパンを愛用。ふつうのフライパンでももちろんOKだが、付きっきりになるので、一度にたくさん焼ける大きさが便利。

【展開例1】イングリッシュマフィンのバタートースト

横半分に切ってトースターで表面を焼く。バターをのせるだけでも美味。

【展開例2】スクランブルエッグと

トーストしたイングリッシュマフィンの上に、スクランブルエッグをトッピング。朝食はもちろん、お酒と一緒に夜食でも。



◎ビスポーク
東京都中野区東中野1-55-5
☎03-5386-0172
17:30~22:00(火、水、金曜)
9:00~15:00(日曜※ブランチメニュー)
月、木、土曜休
JR、都営線東中野駅より徒歩1分
Instagram:@bespoque

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

photograph by Hide Urabe

(雑誌『料理通信』2015年7月号掲載)

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