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RECIPE

米粉の衣でシュワっとふんわり軽い揚げ心地「イカのベーニエ」

フェーズフリーな食材レシピ

Jun 23, 2022

text by Mieko Sueyoshi / photographs by Tsunenori Yamashita

乾物や漬物など、常温で長期保存でき、ビタミンやミネラルなど栄養価も高い食材は、備蓄食品にも向く優れもの。普段から食事に取り入れ、使い慣れることで、「いざという時に賞味期限が切れていた」「食べ慣れない味で食が進まない」という問題も避けられます。「いつも」と「もしも」をつなぐフェーズフリー*な食材を、おいしく活用するレシピ。今回は、米粉や蕎麦粉を使い、ふわっと軽やかに揚げるベーニエを。小麦粉がなくてもOK、巧みな粉活用法をマスターしましょう。


常備したい食材:米粉、蕎麦粉、コーンスターチ
教えてくれたシェフ:東京・池尻大橋「ビストロ グルトン」小更耕司さん

カウンター8席のフレンチ「ビストロ グルトン」店主。茨城県出身。東京・乃木坂「Restaurant FEU」のサービス、調理を経て渡欧し、仏・ブルゴーニュ、ルクセンブルクで修業。恵比寿「タイユバン ロブション カフェフランセ(閉店)」「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」を経て、2014年現店オープン。厨房を1人で守るが「無駄を出したくない」と料理は常にオーダー後に調理する。

衣作りから〝ア・ラ・ミニッツ〞で

店名どおり、夜な夜な食いしん坊たちがカウンターに集結する「ビストロ グルトン」。実に40~50種類もメニューオンする小皿料理を、小更耕司シェフが1人でこなすこの店で、泡やワインのつまみにとひと際人気なのがベーニエやアジフライなどの揚げものだ。

1人でつまむのにちょうどよい小量が、常に揚げたてで供される。「短時間で均一に火が入る揚げものは、素材の味が活かしやすい調理法です。僕としては素材を味わってもらいたいので、フライもベーニエも衣は薄付きで。短時間で引き上げるので、アジやイカは鮮度の良い刺し身用を使っています」。そう小更シェフが語るように、素材の味や食感を損なうことなく、軽やかな衣をまとわせて美味を生み出すのがフレンチの揚げものだ。

オーダーごとに衣を作れて無駄も出ない

ベーニエといえば、ぽってりとした衣がボリューミーな印象を思い浮かべる人も多いだろう。小麦粉に、泡立てた卵白とビールを混ぜた衣を絡めて揚げたもの。油の中で衣が素材を包み込んだまま固まる様子は天ぷらにも似ている。だが小更シェフの作る「イカのベーニエ」はふんわりサクサクの衣が実に軽やか。噛めばすぐに伝わるイカの旨さについ、もう一つ!と、手が伸びる。

「ベーニエの衣は泡が消えないうちに使い切るのが鉄則ですが、卵白を使う本来の方法は、一度にたくさん揚げるのではない限り、無駄が出る。なので、僕の店ではオーダーごとに衣を使い切れる方法を採用しています」

その衣は米粉、コーンスターチ、ベーキングパウダーを合わせ、揚げる直前に40~50℃のぬるま湯で溶いたもの。小麦粉と違ってグルテンの出ない米粉は衣が重くならず、サクサクの食感になる。

衣の泡を潰さぬようスプーンで6分立てクリーム程のとろみを付けたらイカをくぐらせ、160℃の油に落とす。イカが浮かび、衣の周りがカリッとしたら出来上がりだ。衣作りから完成まで10分足らず。季節野菜も用意して、さっそく今宵のつまみに作ってみては。


イカのベーニエの極意


1 衣は揚げる直前に作る。
2 米粉3:コーンスターチ3:ベーキングパウダー1を配合の基本に。
3 ぬるま湯で溶く。
4 衣が泡立っているうちに絡める。

「ビストロ グルトン」のイカのベーニエ 材料と作り方

[材料](作りやすい分量)
イカ・・・適量
米粉、コーンスターチ・・・各同量
ベーキングパウダー・・・米粉の1/3量
キャノーラ油・・・適量

[作り方]

[1] イカの水気を拭き取る
スルメイカは皮をむき、2㎝幅ほどに輪切りにし、よく水気を拭き取る。下塩をふると水気が出て、油ハネの原因になるのでここではふらない。

[2] ぬるま湯で粉を溶く
ボウルに、米粉3:コーンスターチ3:ベーキングパウダー1の割合で(グルトンでは大さじ1:1:1/3 )入れ、混ぜ合わせてからぬるま湯(40~50℃)を注ぐ。

[3] 泡を潰さぬよう静かに混ぜる
写真のようにふんわり、ビールのような泡がもこもこと立ち上がるので、静かにスプーンでかき混ぜる。

[4] 6分立てクリーム程のとろみに
写真のような濃度になればOK。泡が消えてしまうので、かき混ぜすぎないこと。粉は完全に溶かし切らず、ダマが残っていてもよい。


[5] 手早く衣を絡める
イカを衣にくぐらせる。泡の持続性が高くないので、衣は作り置きせず、使う分だけその都度作ること。

[6] たっぷりの油で揚げる
大鍋にたっぷりの油を160℃に温める。衣を一滴落とすと、すぐに玉が浮いてくるのが温度の目安。イカを投入。

[7] リング状にふくらめば頃合い
勢い良く泡が出て、だんだんイカリングらしい円形になり、泡がおさまってきて浮かべばOK。3~4分を目安に引き上げる。

[8] 最後に塩をする
揚げ上がり後、すぐに塩をふり、下味を付けてから提供。

イカのベーニエ
サクサクの衣をまとったイカは歯切れよく、次の手が止まらない。付け合わせはオクラのフリット。外は軽やか、中はジューシー。


展開例:米粉を蕎麦粉に替える

穴子の蕎麦粉ベーニエ
穴子はイカより風味が強いので、衣も味のある素材で。コーンスターチ、ベーキングパウダーとの比率はそのままで、米粉を蕎麦粉に替える。蕎麦粉の香ばしい風味が付き、硬く、素朴な歯触りに。

[材料](作りやすい分量)
穴子・・・1尾
蕎麦粉、コーンスターチ・・・各同量
ベーキングパウダー・・・蕎麦粉の1/3量
カレー粉、塩、コショウ・・・各少量

[1] 穴子の下ごしらえ
50~60℃の湯に穴子をさっとくぐらせ、表面のぬめりを包丁の背でこそげとるように落とし、流水でよく洗い流す。

[2] 下塩をする
穴子の水気をよく拭き取り、下塩をする。臭み消しの目的も兼ねて、カレー粉と黒コショウをふる。

[3] 衣を作る
粉類をボウルで混ぜ合わせ、湯を注ぎかき混ぜる。米粉よりもとろみが強く粘度も出るので、写真のような7分立てクリーム位の粘度を目安にし、くぐらせる。

[4] 揚げる
すぐに、たっぷりの揚げ油に入れ、160℃で3~4分、ぽっかりと浮いて泡が静かになるまで揚げる。



◎ビストロ グルトン
東京都世田谷区池尻2-33-7
☎03-3410-5517
18:00~21:00LO
日曜、第3月曜休
東急線池尻大橋駅より徒歩5分
https://gekn500.gorp.jp/

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。

(雑誌『料理通信』2016年10月号掲載)

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