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RECIPE

豆のだしで味に深みを。「チチェルキアと野菜のミネストローネ」

フェーズフリーな食材レシピ:乾燥豆

2023.02.09

豆のだしで味に深みを。「チチェルキアと野菜のミネストローネ」

text by Kaori Funai / photographs by Jun Kozai

連載:フェーズフリーな食材レシピ

乾物や漬物など、常温で長期保存でき、ビタミンやミネラルなど栄養価も高い食材は、備蓄食品にも向く優れもの。普段から食事に取り入れ、使い慣れることで、「いざという時に賞味期限が切れていた」「食べ慣れない味で食が進まない」という問題も避けられます。「いつも」と「もしも」をつなぐフェーズフリー*な食材を、おいしく活用するレシピ。今回は、乾燥豆使いのコツを学べる「ミネストローネ」の作り方を紹介します。

常備したい食材:乾燥豆
教えてくれたシェフ:大阪・肥後橋「オステリア ラ チチェルキア」連(むらじ)久美子さん

大阪・肥後橋「オステリア ラ チチェルキア」連(むらじ)久美子さん

イタリア・マルケ州のワインと家庭料理の店「オステリア ラ チチェルキア」オーナーシェフ。東京「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」で2年半働いた後、長野で農業を体験。イタリアスローフード協会の講習に参加し、マルケの食文化に魅せられ、現地のリストランテで1年半修業。帰国後、ソムリエの資格を取得し、12年5月現店をオープン。昨年10周年を迎えた。ミシュランガイドでビブグルマンに選ばれている。


クタクタ感と煮崩れの境目を見極めて

連久美子シェフが日々作るミネストローネは、実に素朴な風合い。ホクッとした食感のマルケ州特産の豆・チチェルキアが味の要となり、深い旨味が広がる毎日食べたくなる味だ。 

マルケでの修業時代、師匠や地元のマンマに教わったというこのメニューは、「煮豆の活用と、火の通し具合がポイント」とシェフ。豆は、チチェルキアが手に入らなければ、白インゲン豆やヒヨコ豆などで代用可能だ。「一晩水に浸けた豆を、弱火で煮るといいだしが取れるのです」。味わいに深みを出すには、この煮豆と煮汁が欠かせない。

「イタリア人が好むクタクタ感と、煮崩れとの境目は、ずばり火加減」。弱~中火で野菜を炒め、油を馴染ませると煮崩れしにくい。その後、弱火でクツクツと煮れば、豆はつぶれることなく、全体的にぽってり、クタッとした質感が実現する。できたスープは1時間~一晩寝かせると、より味がなじむそうだ。 

ミネストローネを撹拌し、トマトソースと合わせれば立派なパスタソースに。「ピュレ状にすることで、豆の風味と香りがより一層、際立ちますよ」

ミネストローネのアレンジ例:パスタ エ チチェルキア

ミネストローネのアレンジ例:パスタ エ チチェルキア・・・ピュレ状にしたミネストローネに、トマトの酸味を加えてパスタソースに。パスタは、味のなじみやすいショートパスタ、マルケ産「ディターリ」を使用。ちょこんと立っているローズマリーは、豆を使うパスタには定番の印だとか。


「チチェルキアと野菜のミネストローネ」材料と作り方

[材料](6~7人分)
チチェルキア(一晩水に浸けて戻す)・・・200g
 【A】
 水・・・2L
 ニンニク(皮付き)・・・1片
 ローズマリー・・・1枝
 ローリエ・・・1枚
 塩・・・2g
 【B】
 ニンジン(大)・・・1本
 タマネギ(大)・・・1個
 セロリ・・・1/2本

ジャガイモ(大)・・・2個
ズッキーニ(大)・・・1本
トマト(中)・・・1個
キャベツ・・・1/4個
カリフラワー・・・1/4個
水・・・1L
豆の煮汁・・・500ml
E.V.オリーブ油・・・適量
ニンニク油・・・少量
塩(焼き塩など)・・・適量
岩塩・・・小さじ2
黒コショウ・・・適量

[作り方]
[1] 豆を戻して煮る

豆を戻して煮る

鍋に豆とAを加えて強火にかけ、沸いたら弱火に落として豆がやわらかくなるまで30分~1時間煮る。
POINT:代用豆の場合は戻し汁を使う

[2] 野菜を1cm角に切る

野菜を1cm角に切る

トマトとズッキーニ は種を取り除く。すべての野菜を1cm角に切り揃える。

[3] 香味野菜を炒める

香味野菜を炒める

鍋にE.V.オリーブ油大さじ1とニンニク油を引き、中~弱火にかけ、Bと塩ひとつまみを加えて炒める。
POINT:野菜が透き通るまで!

[4] 野菜を加える

野菜を加える

にジャガイモを加えて油を絡ませ、約1分後にズッキーニを加えて炒める。さらにトマトを加える。
POINT:野菜に油をなじませると煮崩れしにくい。

[5] 水を加える

水を加える

キャベツとカリフラワー、水を加え、弱火でクツクツと煮る(完成まで約40分)。

[6] 野菜の旨味を引き出す

野菜の旨味を引き出す

キャベツがややしんなりしたら岩塩を加える。さらにクツクツと煮て各野菜の旨味を引き出す。

[7] 豆と煮汁を加える

豆と煮汁を加える

仕上がり15分前に、を煮汁ごと加えて弱火にかける。途中、アクが出てきたら取り除く。

[8] 味を調える

味を調える

煮汁にとろみがついたら味見をし、岩塩で味を調える。器に盛り、E.V.オリーブ油と黒コショウをふる。
POINT:1時間~一晩置いたくらいが食べ頃。

弱~中火でゆっくり煮込むことで生まれるクタクタになった豆と野菜の優しい甘味が広がる

弱~中火でゆっくり煮込むことで生まれるクタクタになった豆と野菜の優しい甘味が広がる。「豆の力はもちろん、存在感ある野菜も欠かせません」と連シェフ。キャベツやカリフラワーは芯も加えると甘味が増す。

<豆使いのツボ!>

乾燥豆

主役は乾燥豆
チチェルキアは、マルケ産の豆。白インゲン豆(クタッとさせたいとき)やヒヨコ豆(食感を残したいとき)でも代用できる。

アクをしっかり取る

アクをしっかり取る
豆を煮る際、出てきたアクはしっかりと取り除く。豆の旨味が凝縮したクリアな煮汁が、ミネストローネの味の要に。



◎オステリア ラ チチェルキア
大阪府大阪市西区京町堀2-3-4
Sun-Yamamoto Bld.303
☎06-6441-0731
18:00~24:00LO
14:00~23:00LO(日曜)
火曜休、月1回不定休あり
Instagram:@osteria.la.cicerchia

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。

(雑誌『料理通信』2016年12月号掲載)

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