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RECIPE

気配を感じさせない、巧みなスパイス使い「モロッコサラダ」

プラントベースの始め方22

2022.09.22

photographs by Hide Urabe

連載:プラントベースの始め方

健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。

教えてくれたシェフ
東京・東北沢「エンリケ・マルエコス」小川歩美さん

5年間モロッコの一般家庭やレストランで料理を学んだほか、現地の料理家に師事し、モダンなモロッコ料理を習得。2009年現店オープン。『ミシュランガイド東京』でモロッコ料理初のビブグルマンを獲得。2022年からは月替わりのおまかせコース料理(全8品・パンと食後のお茶/税込¥8800)のみの提供。


包丁の切れ味が、味を決める

モロッコ人は食卓にサラダを欠かしません。トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、サツマイモなど、季節の野菜を組み合わせたサラダを一年中食べるんです。その中でも、これはモロッコで一番スタンダードなサラダ。刻んだ野菜を、オリーブ油とレモン汁、塩、コショウと少しのクミンで和えただけのシンプルな構成ですが、食材それぞれの食感のコントラストや味わいの変化に富んでいて、食べ飽きないおいしさです。

モロッコサラダにおいて最も重要なのは、野菜から水が出ないようにすること。そのためには、とてもよく切れる包丁が必要です。切れ味の悪い包丁で無理に切ろうとすると、野菜の繊維が潰れて水分が出やすくなるし、食感も悪くなります。とにかくよく研いだ刃の薄い包丁で、無駄な力をかけず、一発で細かく切る。それだけで仕上がりが全く違いますよ。

全てを刻んだら、最初にオリーブ油で和えましょう。野菜の表面をコーティングすることで、塩やレモン汁の刺激から野菜を守り、水が出にくくなります。

モロッコでは、ひとつのスパイスが効きすぎた味は田舎っぽい、料理下手だと思われます。「何が入っているのかわからないけど、なんだかおいしい」と感じさせるくらいのさじ加減でスパイスを使いこなせるのが、料理上手の証です。このサラダの香り付けはほとんどクミンだけですが、それでもクミンが入っているとはわからないくらいの加減を意識してみてください。黒コショウを入れると味が引き締まりますが、これも隠し味程度にほんの少量だけ加えます。

材料も少なく、刻んで和えるだけですから、ご家庭でも簡単に作れますよ。でもその前に、まずは包丁を研ぐところから始めてくださいね。


<植物性食材だけでおいしくなるコツ>


1 よく切れる包丁を使い、野菜の繊維を潰さない
2 水分が出ないようオイルで野菜をコーティング
3 スパイスは控えめに、ひとつの味を立たせすぎない

「モロッコサラダ」の作り方

[材 料(2皿分)]
キュウリ・・・1本
フルーツトマト・・・2個
赤タマネギ・・・1/3個(大さじ2)
香菜・・・1株(大さじ1)
E.V.オリーブ油・・・大さじ3
塩・・・2つまみ
レモン汁・・・1/4個分(小さじ1)
クミンパウダー・・・小さじ1/4
黒コショウ・・・ひとつまみ

[材料のポイント]

少量のクミンでバランスを取る
モロッコらしい味わいは、フレッシュな香菜にクミン少量、E.V.オリーブ油で作る。クミンは、全体がクミン味に染まらないよう少なめのさじ加減でバランスを取るのがモロッコの料理上手の条件。小川さんは現地の味に近い、味の濃いギリシャ産のオリーブ油を選ぶ。

[道具のポイント]

よく切れる包丁でしか作れない
20年近く愛用している「有次」の合金鋼包丁。研ぎ続けて、小回りの利くサイズになった。「同じ型のステンレス製を使ったこともありましたが、やはり鋼の方が切れ味がいいので、2本持ちで毎日使っています。トマトが切りにくくなってきたら研ぎ時」

[1]キュウリの種を取る

キュウリは縦半分に切り、中央にV字に切り込みを入れて水分の多い種の部分を取り除く。
POINT:このひと手間で食感がアップ

[2]5㎜角に刻む


5㎜角になるよう、正確に切り揃える。

[3]赤タマネギは一発で細かく刻む

赤タマネギは繊維に沿って厚さ1㎜程度にスライスし、端から細かく切る。

[4]フルーツトマトは丸ごと使う


フルーツトマトは半割りにし、縦横5㎜幅にカットする。普通のトマトの場合は種を除き、果肉だけを使う。
POINT:トマトを潰さないように注意

[5]香菜を刻む

香菜の茎と葉を細かく刻む。香菜は水分が出にくいので、写真のように何度も包丁を動かし刻んでOK。

[6]まずはオリーブ油から

刻んだ野菜を全てボウルに入れ、野菜の水分が出ないように先にE.V.オリーブ油を加える。

[7]しっかり和えてコーティング

底から返すように混ぜ、オイルを全体に絡ませる。

[8]味を付ける

塩、レモン汁、クミン、黒コショウを加えて全体を混ぜる。黒コショウは少量加えるだけで味が引き締まる。

[9]すぐ食べても、寝かせても

フレッシュなうちにすぐ食べても、たくさん作って冷蔵庫で味を馴染ませ、水分を切ってから食べてもよい。

均一に刻まれたキュウリとトマト、赤タマネギのザクザク食感が小気味よい。香菜の爽やかさと酸味の中に、クミンの余韻がほんのり残る。



◎エンリケ・マルエコス
東京都世田谷区北沢3-1-15
☎03-3467-1106
18:00~22:00LO
(土曜、日曜、祝日17:00~21:30LO)
月曜、火曜休
小田急線東北沢駅より徒歩1分
https://cuisinedumaroc.jp/

※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。

(雑誌『料理通信』2019年10月号掲載)

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