サバイバルレシピ01 高知【イタドリ】
繁殖力旺盛! 身近に自生する野草を おいしく食べる術
2021.06.07
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text and photographs by Ayuko Shibazaki
連載:サバイバルレシピ
⾷糧難、災害時をどう乗り越える?
人口爆発による食糧難や自然災害で、これまで当たり前にあった食物が手に入らなくなったとき、求められるのは限られた資源でサバイブする「生きる力」です。日本各地に残る保存食、発酵食、郷土食に、自然の恵みを無駄なく食べつなぐためのサバイバル・テクニックを探ります。
第1回目のテーマは、高知のソウルフードで春の山菜「イタドリ」。四国のライフスタイル誌「IKUNAS」スタッフで高知出身の柴﨑杏由子さんにサバイバルレシピを教わりましょう。
目次
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(写真左)土手で見つけたイタドリの若芽。50cmほどに伸びた茎をポキッと折って採取する。(写真右)道路沿いで見つけた、成長したイタドリの林。若芽の時期に出合えば収穫し放題?!
強い酸味を手なずけ食用する、高知県民のソウルフード
山野や土手、あぜ道など日当たりの良い場所に群生するタデ科の植物「イタドリ」。3〜4月には紅色の若芽を出してタケノコのようにグングン伸び、気付けば背丈を超える高さになっていることもあるほど繁殖力が高い。若葉をもみ、すり傷につけると痛みが取れるということからイタドリという名前になったとか(諸説あり)。地域によって、スカンポ、サシボ、ゴンパチなどとも呼ばれているようだ。
イタドリは日本全国に自生していて、実は珍しい植物ではないようだが、食用する地域とそうでない地域がある。私が現在住んでいる香川県の地元の人たちにイタドリについて話を聞くと、「小さい頃に採ってかじったことはあるけど、とっても酸っぱいやつだよね」と言われることが多く、調理して食べる習慣はなかったそうだ。中には「高知県から採取しに来ていた人に調理法を教えてもらった」、また、そういった話を聞いて “おかず”として食べるようになった人もいた。
私の出身、高知県では、イタドリは春の訪れを知らせてくれる山菜として珍重されている。山菜採りと意気込まずとも、身近にあるイタドリを採取し、その夜には食卓に並ぶ風景は、高知県民にとってはなじみ深いものである。
私自身がイタドリのおいしさに魅了されたのは、保育園児の頃。隣に住むおばちゃんが「イタドリ炊いたよ」と持ってきてくれたのが、一番古い記憶。それ以降、おばちゃんや家族でイタドリを採りに行くのが春の恒例行事になった。と言っても、土手や山沿いの道を散歩するだけで自然と目に入るほど、あちこちに生えているので、子どもの私でも簡単に採ることができた。
イタドリの調理法や保存方法を教えてくれたのも、隣のおばちゃんだった。イタドリは有機酸を多く含むため、おいしく食べるためにはアク抜きを始めとする下処理が必須。初めの頃は、下茹でする工程で、茹で過ぎたせいか、炒めるうちに溶けて、煮崩れしてしまうような失敗もあった。おばちゃんからいろいろとアドバイスをもらってコツを教わり、納得いく味に仕上がるように。香川に住んでいる今でも春になると無性に食べたくなり、作り続けている郷土の味だ。
採れたてのイタドリを下処理し、そのまま料理して食べることが多いが、春先にまとめて採取し、塩漬けや冷凍して保存しておけば、シャキシャキの食感や山菜の香りをいつでも楽しむことができる。イタドリは下ごしらえの方法を覚えておけば、誰でもおいしく食べることができる食材だ。
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採取したイタドリ。少量であれば下処理をして当日~翌日に食べるが、大量に収穫した場合は塩漬けや冷凍して保存する。
知っておきたいイタドリの下ごしらえ
イタドリの酸味を取り除くため、料理する前にアク抜きが必要。塩もみしたり、半日~一晩、水にさらしたり、湯通ししたり、いくつか方法がある。今回は比較的早くアク抜きでき、色よく仕上げる「湯通し」を紹介する。
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1.皮をむく
根元から皮をむく。熱い湯をかけるとむきやすい。
丁寧にむかないと、皮が厚くむけたり、筋が残ってしまうので気をつける。
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2.カットする
鍋や料理に合わせてカットする。シャキシャキした食感を生かすため、3〜4cm程度がおすすめ。
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3.下茹でする
ふつふつし始めた湯(70~75℃度程度)にイタドリを入れ、10〜30秒程度湯通しして氷水に取る。
POINT:下茹ですることで、アクを抜き、色鮮やかに仕上がる。加熱しすぎると、シャキシャキした食感を損なうので注意。
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4.水にさらす
水を張ったボウルに下茹でしたイタドリを入れる。何度か水を変えながら、半日~一晩、酸味が抜けるまで水にさらす。(お好みの酸味になるまで)
POINT:しっかりアクを抜くことがおいしく食べるためのコツ。
1年分を採取して食べつなぐ保存法
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<塩漬け保存> 保存期間:半年~1年程度
1.漬物樽など保存容器に、皮をむいて切ったイタドリを敷き詰め、全体を覆うように塩をふる。
2.中蓋を落とし、漬物石や水を入れたペットボトルで重しをする。
3.冷暗所で、3カ月程度寝かせる。
※酸が抜けたら食べごろ。使う時は水に浸け、時々水を替えて塩抜きして調理する。
<冷凍保存> 保存期間:1年程度
1. 皮をむいたイタドリに、重量の5〜10%の塩をふってしんなりさせる。
2. 密封容器や保存袋のサイズに合わせた長さにカットし、軽く絞る。
3. 容器や袋に入れて密封し、冷凍する。
※使う時は水に浸けて解凍し、時々水を替え、塩気とアクが抜けてから調理する。
イタドリの定番レシピ「油炒め」
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高知県でイタドリを使った料理の定番は「油炒め」。イタドリは油と相性がいい山菜なのだ。アク抜きしたイタドリ(300g程度)を大さじ1のごま油でさっと炒める。砂糖大さじ1、醤油大さじ2、かつお節をたっぷり加えてさらに炒めて味をなじませ、お好みで白ゴマをふる。下茹でしているので、手早く炒めるのがコツ。
畑の野菜にはないイタドリ特有の風味とシャキシャキの食感、ほんのり残った酸味にかつお節の旨味、ゴマの風味が合わさって、食欲をそそる。高知県民が春になると食べたくなるソウルフードだ。下処理をしたイタドリを甘酢に漬けた「かりかり漬け」もよく食べられ、保存食にもなる。
柴﨑杏由子(しばざき・あゆこ)
高知県出身、香川県在住の管理栄養士で、雑誌『IKUNAS』の食企画担当。食を生み出す1次産業に携わる人々、地域の食材とおいしい食べ方、地域の食文化、地産地消の良さなど、食にまつわる情報をトータルで発信・提案するプロジェクトに関わる。
◎IKUNAS-FLAVOR OF LIFE
香川県・高松市のデザイン制作会社が年2回 (3・9月下旬) 発行する四国のモノ・コト・ヒトを取り上げたライフタイル誌。香川県の伝統工芸品、産業をはじめとするものづくりや郷土食など毎日の生活にフレーバーを届ける内容を紹介。
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