HOME 〉

FEATURE

〉

FEATURE / MOVEMENT





ARITAが見据えるこれからの400年

料理人が紐解くARITAの可能性
「一凛」 橋本幹造料理長 編  

text by Kei Sasaki / photographs by Hide Urabe

器と共に歩んできた日本料理




2007年、原宿の繁華街からやや奥まった場所にある閑静な一角に店を開いた橋本幹造さん。カウンターを中心に、白、茶、黒を基調とした店内は、9年経った今も新しい店のような清々しさ。キャリアを重ねてなお、日々、新鮮な気持ちで厨房に立ち続ける料理人の心を映し出すような空間です。18歳で料理の道に入って以来、日本料理ひと筋。京都の老舗料亭で脈々と受け継がれてきた伝統に触れ、東京では日本全国、ときに世界から集まる食材に学びました。日本料理の伝統に根ざしながら、どこか新しさを感じる料理は瞬く間に評判を得て、店は昼夜予約でいっぱいという盛況ぶり。「食材の産地やつくり手のストーリーも伝えていきたい」と、数年前から予約を基本的にはカウンターに絞り、接客も自らが中心に。快活な語りで笑いを巻き起こしながら、日本の心を料理で伝える“橋本劇場”で日々、多くの食べ手を魅了しています。

橋本さんは料理番組への出演や、土鍋など調理道具の開発にも関わるなど、多方面で活躍しています。



「日本料理は引き算の料理。調味をぎりぎりまでそぎ落とした中で、素材本来の味わいを伝えたい」橋本さんは、そう話します。その言葉を象徴するのが、この時期に登場する茄子の一品。京都の生産者に朝3時の収穫を依頼、すぐに送ってもらった茄子だけを使います。

「関西方面の野菜が東京に届くまで、通常だと中2~3日かかりますが、この方法だと翌日に届く。茄子は冷蔵すると一気にダメになるので、絶対に冷蔵はしないで、ほかの野菜とは別に送ってもらいます」鮑や鮪といった高級食材ではなく、茄子への想いを語る。ここに料理人の矜持が表れます。見えないところから素材にアプローチし、はかなくもやさしい余韻を生む美味をつくりだす。伝えたいのは、季節をいとおしむ日本人の心。その気持ちは、看板料理の豆皿八寸にも表れています。豆皿に盛り付けた12~13もの品を、日々少しずつ変えていくことで、移ろう季節の中の“今”を表現。同時に、橋本さんの器への強い想いも垣間見えます。

「食べる量は同じでも器の数が多いと気持ちが豊かになる」と橋本さん。

「現代は家庭でも大皿料理が多すぎる。私は家でも“たくさんの皿を使いなさい”と常に言っています。我が家で大皿料理が出てきたら、ちゃぶ台がひっくり返りますよ(笑)」。めいめいが好きなものしか手を伸ばさない大皿料理は、好き嫌いにつながり、嫌いなものは誰かが食べるだろうという気持ちは、「誰かがやってくれる」という人任せの気持ちにつながるというのが橋本さんの考え。また、修業時代のまかないを振り返り、「一生懸命働いて、自分だけの皿で飯が食えないなんて寂しい気持ちになった」とも。

食べる量は同じでも、皿の数が多いと気持ちが豊かになる。器からも旬を感じ、料理と器が織りなす美を目で楽しむのも日本料理。とり皿や醤油皿ではない、小さな器づかいを、プロの料理人として示しているのです。

料理や器は人を幸せにするもの




食材の生産者同様、器のつくり手にも多大なる敬意を抱く橋本さん。「毎日使っているからわかるけれど、豆皿は手がかかる。盛るのはもちろん、洗うのも拭いてしまうのも。器の作家さんもそうだと思います。焼成、絵付けと工程は大皿と変わらない。でも小さな器の中でひとつの世界観を表現している。これは素晴らしいことです」。

今回のUSEUM ARITAに向けて視察のために有田を訪れた橋本さんですが、旅の中で嬉しい邂逅がありました。訪ねた窯元の内の1軒「福珠窯」が、長年愛用している鯛を象った銀彩の豆皿をつくる窯元だったのです。

「福珠窯」は創業60年。有田では比較的新しい窯元です。有田焼創業400年事業「ARITA EPISODE2」に参画しています。

「福珠窯」は現在、二代目の福田雅夫さん、三代目の福田雄介さんが中心となって、作陶を行っています。昭和50年代、30歳で窯を継いだ雅夫さんは、当時の有田焼は伝統のうわべだけで仕事をしているように感じ、強い反発を覚えたそうです。そんな雅夫さんの気持ちを再び有田へと向けさせたのが、中国の景徳鎮で焼かれた古染付。明末から清初期に民窯で焼かれた古染付は、官窯時代にはなかった自由闊達さがあり、それは初期伊万里の自由で素朴な作風にも通じることに気付いたといいます。以降、古伊万里にも使われていた呉須や柞灰釉(いすばいゆう)による柔らかな染付が、窯の作風に。

三代目の福田雄介さんは、有田を次の400年へとつなぐ若き担い手の一人です。

この茶碗でごはんを食べて育ったのが三代目の雄介さん。美術系の大学を卒業後、建築やグラフィックの仕事も経験した雄介さんは、銀彩と染付を融合させたモダンな器、デザインと伝統技法からなるものづくりなどで、新しい有田のあり方を模索します。「料理や器は人を幸せにするもの」という考えから、小皿や豆皿、こどもの器など手に取りやすい製品を数多くつくり出しているのも「福珠窯」の特徴。10年前にはギャラリー&ショップとカフェレストランもオープン。日々の暮らしに生きる器づかいを幅広く伝えています。


住居や家族構成が変われば、求められる器も変わっていきます。「夫婦ふたりや単身の世帯も多く、都市部では集合住宅に暮らす人が増える中、季節ごとの器を持つことはとても難しい。小さな皿をひとつ加えることで、食卓に季節感を添える豆皿は、今という時代にとてもフィットする器だと思います」と、雄介さん。品質の高さを世界に誇る有田に、これまでの歴史で足りなかったものは「伝える努力」。これからその役割を、さまざまな形で担おうとする意気込みに燃えています。



東京の店とはひと味違う料理でもてなしたい




有田を中心とした佐賀県への視察の旅で、数多くの素晴らしい食材に出会ったと話す橋本さん。USEUM ARITAでは、自身の料理哲学と有田焼、佐賀の食材の魅力を融合させた「一凛」の料理とはひと味違う料理で来場される方々をもてなしたい、と意気込みを語ります。


例えば、お造り。淡い旨みを持った白身、脂の乗った青背の魚、きれいな酸味を持つ新鮮なメジマグロなどを、それぞれ塩、煮きり酒、有明海の海苔を使った海苔醤油で出すという具合。きゅうりと若い黒皮かぼちゃの繊細なツマにも、細かな包丁の仕事が見て取れ、食材の赤、青、白色が器の色合いと相乗します。


佐賀牛は、出汁と醤油、砂糖でさっと炊いて南蛮煮に。「佐賀牛はサシが細かく脂の旨みが豊かなので、ネギを合わせることを考えています」と橋本さん。佐賀牛に包まれたネギは、外側は軽く火が通っているけれど、中はしゃきしゃきの半生状態。このネギの風味が、脂のりのいい佐賀牛の1皿に、フレッシュで軽快な味わいをもたらします。モダンな仕立ての料理は、同じくモダンな器で。この器は有田焼創業400年事業「ARITA EPISODE2」で「まるぶん」が企画した器。昔ながらの図案を直線と曲線で表現されています。


また橋本さんは、視察の旅で最も印象に残った食材のひとつに、イカを挙げました。「“イカは透明でないと”“絶対透明やないとあかん”と、誰もが口を揃える(笑)。イカがどれほど地元の食生活に根付いた食材かよくわかりました。氷の上で締めて甘みを出す方法もありますが、透明のまま旨みを最大に引きだすため、佐賀 有明海の海苔を使った海苔醤油で軽いヅケにすることを考えています」。

ぷりぷりのイカは、オクラのとろみが加わることで、さらに甘みが際立ち、まろやかな酸味とやさしい甘みのある赤酢のしゃりとも、ふわっと寄り添う。海苔醤油をまとったイカと新鮮なオクラの青々とした色味を、陶器の茶碗が見事に引き立てます。


佐賀の素晴らしい食材と、土地での楽しまれ方に最大限の敬意を払った上で、「一凛」のエッセンス、橋本幹造の哲学をどこまで表現できるか。その料理を通じて、食べ手に佐賀の食材のポテンシャル、そして新旧、デザインも色合いもさまざまな佐賀の器の魅力をどこまで伝えられるか。イベント開催を目前に控えた今も、橋本さんは微調整に余念がありません。

「器あっての食」である日本料理の担い手として、日本が世界に誇る器文化・有田焼のこれまでになかった一面を引き出し、産地に、つくり手に、食べ手に、その素晴らしさを示したいと願っているからです。



究極の器で至福の佐賀の食!
9月18日(日)開催 USEUM ARITAイベント
「第1回シェフDAY  ゲストシェフ 一凛 橋本幹造料理長」
参加者募集を開始します!





NHKあさイチ「夢の3シェフネオ」にも出演するなど活躍中の 東京・外苑前「一凛」橋本幹造料理長が、佐賀の食材を佐賀の究極の器に盛り付けたお料理をいただきつつ、料理と器の関係についてなどお話を伺うイベントです。お客様とのコミュニケーションに何よりの喜びを感じる橋本料理長とのひと時をお楽しみ下さい。

イベントは2部制。第1部は九州陶磁文化館特別企画展「人間国宝と三右衛門」を学芸員による展示解説を聞きながら巡ります。第2部は“使う”をテーマにしたUSEUM ARITA(ユージアムアリタ)シェフDAY。「一凛」橋本幹造料理長のお料理を究極の器で頂きます。

■開催日時
2016年9月18日(日)17:00開場
17:30~18:15 第1部  九州陶磁文化館特別企画展「人間国宝と三右衛門」鑑賞
(学芸員による展示解説あり)
18:30~20:30 第2部  「シェフDAY  一凛 橋本幹造料理長」

■募集定員
先着28名(お一人様のお申し込みにつき、2名様までお申し込み可)

■募集締切
2016年9月2日(金)16:30まで
※上記期日の途中でも、定員に達した場合募集は終了させて頂きます。

■料金
お一人様 10,000円(税/サ込)
フリードリンク(佐賀の地酒など)ご利用の場合、お一人様11,000円(税/サ込)

■募集方法/本日8/22(月)午前10時より電話受付、またはUSEUM ARITA会場にて受付
予約受付ダイヤル TEL 0952-27-7102  (受付時間:10時~16時30分)

お電話、またはUSEUM ARITA会場にて、仮申し込みを受け付け致します。①代表者氏名、②郵便番号、③ご住所、④電話番号、⑤参加人数(2名または1名)、⑥参加者のご年齢、⑦フリードリンク(佐賀の地酒など)のご利用の有無、⑧アレルゲンの食材内容(食物アレルギーをお持ちの方のみ)をお伝え下さい。仮申し込み後、参加料金を指定口座までお振込みください。ご入金の確認が出来次第、事務局より代表者様宛に、お電話にて受領のご連絡を差し上げます。指定期日までにご入金が確認できない場合は、キャンセル扱いとさせて頂きますので、ご了承ください。
※詳しくは、ご予約の際にお問い合わせください。

■開催場所  九州陶磁文化館内 USEUM ARITA  佐賀県西松浦郡有田町戸杓乙3100-1













FEATURE / MOVEMENT





JOURNAL / EUROPE





JOURNAL / AMERICA





PEOPLE / PIONEER





PEOPLE / CHEF





FEATURE / WORLD GASTRONOMY





PEOPLE / CREATOR





PEOPLE / LIFE INNOVATOR





JOURNAL / JAPAN





JOURNAL / AUSTRALIA





JOURNAL / ASIA





MEETUP / REPORT





ログイン

まだ会員になっていない方

現在登録しているメールアドレス

パスワード

パスワードを忘れた

パスワードを忘れた方へ

パスワードを忘れた方は以下のフォームに登録時のメールアドレスを入力し、送信して下さい。
ご登録されているメールアドレスに仮パスワードをお送りします。

まだ会員になっていない方はこちらから新規会員登録

パスワードを忘れた方へ

パスワードを忘れた方は以下のフォームに登録時のメールアドレスを入力し、送信して下さい。
ご登録されているメールアドレスに仮パスワードをお送りします。

ご注意:送信ボタンは一度だけ押してください。

まだ会員になっていない方はこちらから新規会員登録

パスワードを忘れた方へ

ご登録されているメールアドレスに
仮パスワードをお送りいたしました。

まだ会員になっていない方はこちらから新規会員登録