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日本 [和歌山]


「サンペレグリノ ヤングシェフ」優勝者、和歌山へ。
和食の守り手たちと出会う旅 vol.2

Journal / JapanOct. 29, 2018

text by Saori Bada / photographs by Bungo Kimura


手造り主義を徹底。熊野の自然に育まれた天然醸造酢。

那智勝浦町にある「丸正酢醸造元」は、今年創業139年になる酢の老舗。創業時から変えたことがほぼないと言えるぐらい、造りは手仕事・手作業で、道具も蔵の環境も自然にこだわってきた。

自ずと生産できる量は限られる。逆に言えば、昔ながらの苦労の多い方法をあえて守っているため、できる分しか造らない。品質が最優先。だから、独特の旨味や香りのある豊かな酢が生まれる。誠実な酢の味は和食の広がりと共に世界の料理人を惹き付け、今ではフランス、イタリア、イギリス、アメリカなど約15か国へ輸出されている。基本の米酢以外にも、地域特産の柑橘果汁を加えた酢やかつおだしを加えた土佐酢など新しい商品も開発されていて、全21種のラインナップがある。伝統を守りつつ、攻めの姿勢も忘れていない。それらを眺めていたら、マークが既にアイルランドのレストランで使っているものがあって大喜び。蔵の見学もますます盛り上がった。


神と自然に感謝する蔵人の姿勢。

「丸正酢醸造元」の宝である井戸は、大切に祀られている。

「丸正酢醸造元」の背後に広がる熊野三山は、古来から修験道の聖地で神が鎮座すると崇められてきた神聖な場所だ。この山の一つである那智山からもたらされる伏流水が、酢造りを支えてきた。




仕込み場の中庭にある深さ10mの井戸から引きこまれる那智滝の湧き水は、水温16℃、硬度22度の超軟水で、口当たりが大変まろやか。人の手では決して生み出せない自然からの恵みだ。



「蔵で働く人たちにとって神様のような存在」と、三代目の小坂晴次さん(手前)は91歳になった今も、醸造蔵に入る前に熊野三山の神前に礼拝し、修験者に教わったホラ貝を吹いて精神統一を図る。



熊野杉桶と人の手仕事で醸す、変わらぬ味。


醸造調味料である酢は、どこでどのように醸すかが味を左右する。その醸しが行われるのは、昔ながらの木造、土壁、土間の蔵だ。創業当時から拡張したりせず、蔵に昔から棲む菌が暮らしやすいよう、環境を維持してきた。温度や湿度管理もすべて人間の経験値でコントロールするわけで、とにかく手間がかかる。でも、この環境があるからこその味だ。

「丸正酢醸造元」の酢は、契約農家など和歌山県で栽培した米やもち米の玄米を蒸し、これに麹室で丸3日間かけて仕込んだ手造りの麹と合わせ、那智御瀧の伏流水を加え、熊野杉の大桶で発酵させる。この醪(もろみ)に酢酸菌を加えた「酢もと」を窓明かりだけの蔵の中で、こもをかぶせて温度を40℃ほどに保ちつつ、90日(こめ酢)から、長いものでは500日以上(玄米もち米酢)かけてゆっくり熟成させる。蔵に並ぶ大きな杉桶は、ステンレスやホーローなどと違い、それ自体が呼吸している。だから、「酢もと」を発酵させる菌が木の目を通して呼吸し、活性化する。それが酢の個性となる味や香りを生むのだ。さらに、発酵を終えた「酢もと」を搾り、火を入れて、丸正酢醸造元の酢は完成する。

醸しに欠かせない木桶は、以前は小坂さん自身が桶の下にもぐって修理していたそうだ。最近では木桶を修理できる職人が日本にもほとんどいなくなったため、蔵人が自分で修理できるようにと、木桶の構造について若手に学ばせているという。
蔵の見学を終えてミッチとマークが小坂さんに挨拶をすると、奥で働いていた蔵人達も手を休め、入口に集まって丁寧に礼をして見送ってくれた。真摯な蔵人の姿勢は、彼らの作る酢の味や蔵の在り方、歴史そのものを表しているようにも感じられた。


◎ 合名会社 丸正酢醸造元
https://www.marusho-vinegar.jp/
649-5331 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町天満271
tel0735-52-0038
fax0735-52-6551



日本一のみかん産地で、みかんの奥深さを知る。

オレンジとはまた違う魅力を持つ日本のみかん。和歌山県田辺市は、冬でも温暖な気候で9月からの極早生みかん~7月のバレンシアオレンジまで1年を通じて多品種の柑橘栽培が盛んな地域。ミッチとマークが最後に訪ねたのは、その田辺市でみかん農園を運営している「十秋園」園主の野久保太一郎さん(左)、「(丸にのの字)農園」野久保光祐さん(右から2番目)、山本ともやさん(右)。それぞれ、年間30種近い柑橘類を栽培している人達だ。ちょうどみかんの収穫が始まったばかりの時期だったので、極早生、日南、温州など出始めの品種を味わった。



収穫したばかりのみかんは香りが抜群に良く、ジューシー。酸味は穏やかで果肉も柔らかい。果肉はもちろんだが、葉も軽く揉むと非常に良い香りがする。「果肉はソースにして鴨料理に合わせたり、香りの良い葉はテーブルにあしらって演出しても楽しそう」と、ミッチとマークはいろいろな種類のみかんを頬張りながら、料理のアイデアを出し合っていた。また、野久保さん達は2人に、産地ならではのみかんのむき方(“和歌山むき”と呼ぶ人もいる)を教えてくれた。



まず皮ごとざっくり身を4等分し、その後、それぞれに皮をむき、3~4粒の果肉を一度に頬張る。いちいち一粒ずつにばらさないのだ。みかんの収穫量日本一を誇る地域ならではの贅沢な食べ方に、地元の人達が普段からいかにみかんをたくさん消費しているのか、垣間見た気がした。

◎ 秋津野直売所「きてら」
tel 0739-35-1177
fax 0739-20-5254
https://www.kiteraga.com/index.html
旬のみかんや農産物について、お気軽にお問い合わせください。



紀州漆器で蒔絵を体験。


紀州木地師の素朴な椀と、高度な技術をもつ根来塗が一体となって紀州漆器が生まれた。朱の上塗りの一部を研ぎ出して下塗りの黒地を出す手法が根来塗。紀州漆器産地の代表的な塗り手法である。紀州漆器協同組合 専務理事 田村彰男さんの案内で見学後、ミッチとマークは蒔絵を体験。日本の伝統工芸に触れた。


黒い盆への桜の蒔絵に挑戦するミッチ。

赤い弁当箱の桜の蒔絵に挑戦するマーク。

◎ 紀州漆器伝統産業会館 うるわし館
http://www.chuokai-wakayama.or.jp/sikki-k/03_kaikan.html
◎ 紀州漆器協同組合 問い合わせ
sikki@flute.ocn.ne.jp




食べられる芸術品。小さな造り手が守る、世界を魅了する味。

日本食文化の源流とも言える、伝統ある食材の造り手たちを訪ねる旅は、短いけれど2人のヤングシェフを大いに刺激した様子。


もともと和食が好きで、日本の食材に詳しかったミッチは「本物の味を守る現場を訪ね、造り手の想いを直接知ることができて、本当に嬉しかった。自分が料理に向かう時は、きっと彼らのことを思うだろうし、今後もまた、日本の食文化を知るために、未知の造り手に会いに来たいと思う」と、ますます和食への興味が募ったよう。


またマークは「今回出会ったどの造り手も、家族やごく近い人が力を合わせて、小さいけれど重みのある仕事を継いでいることを知り、感動した。ビジネスである前に情熱を持ったアーティストのようで、歴史を守る姿勢もかっこいい。日本はちょっと遠いけど、またぜひ訪ねたいと思う」と、笑顔で話してくれた。

和食が世界無形文化遺産に登録されて早5年。海外に魅力を紹介すると同時に、日本人も今一度、日本古来の食文化を学び直す必要があるのかもしれない。起源や歴史、食材の造り手の情熱や努力を知ることで、私たち自身も和食への誇りや愛情がさらに深まるのではないだろうか。




※国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ」とは
世界中の美食家に愛されるファインダイニングウォーター「サンペレグリノ」を世界150 カ国で販売しているサンペレグリノ社(ネスレグループ)が主催する、30 歳以下の若手料理人の世界一を決める国際料理コンクール。2015年から始まり、3回目となった今年は、シグネチャーディッシュ「Across the Sea」を創作した日本地区代表 藤尾康浩氏(ラシーム/大阪)が優勝した。ジャンルを問わず、料理の味わいはもちろん、素材選びの目や技術、プレゼンテーション力や美しさ、メッセージ性までが評価の対象になる。著名な料理人が審査員や指南役を務め、世界各国の次代を担う才能の発掘を業界全体で盛り上げていこうという試み。未来ある若い世代に開こうという試みは、今後ますます注目を集めるだろう。
https://www.nestle.co.jp/asset-library/documents/media/sanpellegrino-young-cheff.pdf











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