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コラムニスト・中村孝則さんが案内する フォーシーズンズホテル丸の内 東京 「MOTIF RESTAURANT & BAR」vol.3 「最高のおもてなし」編  | 料理通信



レポート

 コラムニスト・中村孝則さんが案内する

フォーシーズンズホテル丸の内 東京
「MOTIF RESTAURANT & BAR」vol.3

「最高のおもてなし」編

photographs by Masahiro Goda
text by Kei Sasaki

フォーシーズンズホテル丸の内 東京の客室数は、たった57室。東京でも稀有なブティックホテルです。カリナリーアドバイザーを務める札幌の三ツ星レストラン「モリエール」の中道博シェフいわく「ここは大きな家であり、ゲストは我が家を訪れたお客様なんですね。だから、スタッフはみな、お客様に『家にいるようにくつろいでほしい』と心を砕く。東京駅まで迎えに行ったりもするんですよ」。7階にある「モティーフ レストラン アンド バー」は「さしずめ“家族のダイニング”」と中道シェフ。
世界のホテル事情に詳しい中村孝則さんの「MOTIF」潜入取材第3弾では、そんなサービスにフォーカス。中村さんが心地良い時間の秘密を紐解きます。

中村孝則(なかむら・たかのり)
1964年生まれ。神奈川県葉山町出身。ファッションからカルチャー、旅、ホテル、ガストロノミーからワイン、シガーまで、ラグジュアリーライフをテーマに、執筆活動を行なう。テレビ番組の企画や出演、トークイベントも積極的に展開。The World’s 50 Best Restaurantsの日本におけるチェアマンを務めている。


小さなホテル、大きな家

「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」は、東京を代表するビジネス街、丸の内の中心部という好ロケーションに位置しています。東京駅から徒歩1分!
地上32階建ての高層ビル内にあるホテルですが、ビルのエントランスへは外堀通りからダイレクトにアクセス可能。中村孝則さんのお気に入りのひとつは「1階に支配人やスタッフが常駐していて、7階のレセプションまで案内してくれること。車で乗り付けても、ちゃんと目が届いている。都心にある高層ホテルではあまり例を見ないストレスフリーなアプローチに加え、到着した瞬間から家族を出迎えるようなもてなしに包まれるんですよ」。
わずか57室しかないこのホテルを、スタッフは“大きな家”と捉え、スタッフ同士を“家族”と考えています。立場や持ち場を超えて極力顔を合わせ、声をかけ合いながらゲストをもてなす様子は、なるほど大きな家族のよう。「マニュアルに縛られないサービスがいいですね」と中村さん。

ビルの1階に到着したゲストをお出迎えし、7階のレセプションまでご案内するのが「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」のおもてなし。「高級感よりも安心感」を伝える大切な仕事は、ホテルマネージャー岸琢也さんをはじめとするスタッフが行う。

メインダイニングのほかに、高層ビル街を目の前に望むバーカウンターやラグジュアリーなプライベートルーム、大きなテーブルを囲むバーラウンジ、シェフとのコミュニケーションが楽しめるライブキッチンテーブルなど多彩な空間で構成される。オフモードでくつろぎたい日に、あるいは大切な人をもてなしたい日に、ふさわしい空間が選べる。

おもてなしの陰にチームあり

そのホスピタリティのスピリッツは、「モティーフ レストラン アンド バー」の中にもしっかりと生きています。カリナリーアドバイザーである中道博シェフのモットーは「あなたのために作る」。常にお客様に寄り添うように、お客様のタイミングに合わせて料理をサーブする体制が徹底されているのです。


ゲストとして料理とワインを楽しむ中村孝則さんと、レストランのもてなしについて語る中道博シェフ。

中村

先週、食事にお邪魔したのですが、いい意味で「ホテルっぽくないな」と思いました。すごく厨房を近くに感じるんですよね。

中道

そうですか。うれしいですね。

中村

厨房が見えない僕らにとって、それはサービスによるところも大きいと思うのですが、中道さんにとってのサービスの理想とは?

中道

私はサービスの話をする時に、よく雪かきを例に挙げるんです。

中村

雪かき、ですか?

中道

中村さんは「雪かき」と聞いて、どんな景色を思い浮かべますか? 

中村

道に積もった雪を取り除いて、歩けるようにすることですよね。

中道

その通り。でも、レストランの雪かきは違うんです。雪深い北海道では、雪かきもレストランスタッフの大切な仕事なのですが、汚い雪は見えない場所に移し、そして、きれいな雪だけ残して表面を平らにならしておくんですね。すると、歩けるようになるのはもちろん、あたかも降りたての雪がほどよく積もったかのように美しくなるんです。そのためには、雪かきする人とかき出した雪を見えない場所に運ぶ人がいる。つまり通常の雪かきの人の後ろに、もう一人、裏方がいるんですよね。

中村

ははあ。考えたこともなかったです。

中道

レストランは皿の中や目に見えるサービスがすべてではない。お客様が喜ばれることを全員でできるチーム力が大切だ、ということです。





世界中の一流ホテルを知るからこそ、中村さんは、サービスの本質とは心地良さや安心感にあることを痛感している。

中村さん、中道シェフ、2人ともに、世界のガストロノミーの最前線に立つ海外のレストランを数多く体験。その経験も踏まえながら、よりよきサービスとは何かを語り合う。

1の仕事を1.5にしないために

中村

チーム力をつけるための中道メソッドのようなものはあるのですか?

中道

メソッドというより、訓練ですね。肉を焼く人、野菜係、ソース係、皿を出す人、運ぶ人、全員がきちんと連携する。そのためにサービスの役割はとても重要です。
第1回でもお話ししましたが、「モティーフ」の厨房では、魚や肉の火入れのスタートは、サービススタッフがします。お客様の食事の進行状況を把握しているのはサービススタッフだからですね。お客様が今の料理をあと何分で料理を食べ終わるな、と思ったら、そこから逆算して、次の皿の火入れの指示を出す。指示を出した後に状況が変わったら、再度必ず伝える。厨房ではそれをみんなが共有する。全感覚を研ぎ澄まして、秒単位の誤差を限りなくゼロに近づけなければいけない。

中村

なるほど訓練ですね。でもそういってしまうと、慣れるしかないという気もしますが。

中道

慣れるしかないですが、うまくやる方法がある。それは1人1人が持ち場の仕事の精度を上げることです。

中村

精度……ですか?

中道

たとえば、トーションも鍋も塩も、必ず同じ場所にあること。コールドテーブルやデシャップは常に清潔かつ整頓されていること。精神論のように聞こえるかもしれないけれど、ここができていないと1の仕事が1.5になってしまう。そのタイミングでしなくていい作業をすることになって、時間がかかるし、精度も落ちる。

中村

確かに。

中道

年齢もキャリアもバラバラの人間が一緒に働くレストランで、先輩後輩間の礼儀は当然大切ですが、業務を執り行うのに支障をきたす上下関係はあってはならないとも伝えています。先輩に気兼ねしてちょっと手を出すのが遅くなるとか、一歩出遅れる、とか。

中村

よくあることだと思います。

中道

それがないようにしないとダメなんですよ、本当は。オペレーションのマニュアルより、今日はお客様に何をどんなふうに食べていただいて、どんな気持ちで帰っていただくか。これを料理人からサービスまでが共有していないとダメなんです。

中村

だから「家族の気持ちで」なんですね。





つい話し込んで、身を乗り出す中道シェフ。

ワインのオーダーが増えているという。「ペアリングのご要望も多いのですが、コース料理に合うワインを並べただけのいわゆるワインペアリングコースではなく、臨機応変なご提案ができるよう心掛けています」と、ヘッドソムリエの宮嶋信文さん。

チームを支えるメンバーたち

中道シェフのフィロソフィはスタッフ一人ひとりに浸透しています。レストランマネージャーの信田豊さんは「モティーフ」のサービスを次のように語ります。
「ホテルやフランス料理からイメージされる堅いサービスではなく、フォーマルながらもフレンドリーな、お客様との距離が近いサービスを心掛けています。食材にフォーカスした料理なので、温度や香りを含めて“できたて”のシズル感をテーブルまでお届けできるよう、ゆったりとした雰囲気づくりとスピーディーな対応を心がけています」。

また、ヘッドソムリエの宮嶋信文さんは、ワインという側面から「モティーフ」を支えます。
「ガストロノミックなフレンチとはいえ、シンプルで研ぎ澄まされた、ある種和食のような側面もある料理がモティーフの顔になりつつあります。だからワインもより繊細なタイプを揃えるようにしているんですよ。日本の食材が使われることも多いので、今後は日本ワインも積極的に扱っていきたいですね」。

「モティーフ」のスタッフは料理人とサービスマンだけではありません。飲食コーディネーターの一柳春奈さんは、スタッフ間でのコミュニケーションを円滑にするために日々奔走しています。
「飲食コーディネーターの仕事は、メニューのアレンジや業者との連携など広範囲に及びますが、一番大事にしていることはシェフとコミュニケーションをしっかりとり、料理に関する情報をマネージャーに伝え、スタッフ全員のものとして共有させることですね。私自身、中道シェフの料理に出会ってとても感動したんです、素材自体を楽しむワクワク感があって。それがお客様にちゃんと伝わるか否かは、サービスにかかっている。そう思っています」。

「素材が持つ生命力や勢い、とれたて、できたて感を、どうすればゲストによりよく伝えられるかを常に考えています」と話すレストランマネージャーの信田豊さん。熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに。食材や料理のストーリーと共にゲストに届けるのが信田さんはじめ、サービススタッフの仕事だ。

忙しい浅野シェフをつかまえて、料理の情報を引き出し、フロアに伝える役割を担う一柳さん。メニューチェンジの頻度が増えたのに伴い、スタッフ間での試食会や勉強会などの機会を可能な限り多く作れるよう努めているという。

ディナー前のセッティング。全テーブル隅々まで入念に整えていく。レストランというよりラウンジと呼びたくなる内装は、気持ちをゆったり寛がせてくれる。

中道シェフが吹き込んだ力強くも温かい息吹

「モティーフ」の厨房では、折々に、次のシーズンのための試作が行われます。新しいメニュー作りはもちろん、定番の料理も素材を見直し、その素材がより引き立つ仕立てを考えることで、日々前進している。素材が持つ力にフォーカスした料理の数々は、どう提示すれば、もっと印象的にゲストに届くのか? 浅野裕之ヘッドシェフは、器を含めたプレゼンテーションを見直し続けています。
大自然を身近に感じながら料理人として生きる中道シェフが吹き込んだ力強くも温かい息吹は、「モティーフ」の魅力を確実に膨らませていっています。




上下ともにイノシシの赤ワイン煮込み。器を変えるとがらりと印象が変わる。上は竹炭と黒ニンニクのリゾットを合わせ、下は黒トリュフを合わせている。調理法はシンプルかつクラシックだが、色を統一することでモダンな表情に。有田焼窯元のプロユースプロジェクトチーム「ARITA PLUS」の器の導入を検討。

~メニュー~

季節のお肉料理 ― 猪
Wild Boar Stew with Truffles

世界遺産に登録された奈良県南部吉野で、葛を食べて育った5歳の牡イノシシを使用。濃厚な赤ワインソースに負けないしっかりとした旨味がある。芳しいトリュフは「濃厚な風味を引き立てる野菜の位置づけ」と中道シェフ。

菜の花 ホタルイカ マスタード
Grilled Canola Flower with Firefly Squid and Mustard

アサリのダシでブランシールして、頭の部分だけ炭火で炙ってわずかに焦げ目を付ける。茎のピュレに生クリームと牛乳、レモン果汁を加えて泡状にしたソースとグリーンピースを添えて。まるで野にあるような佇まいが、春の訪れを感じさせる。2016年3月頃からモティーフで味わえる予定。

アブラコ ブイヤベース フキノトウ
Roasted Greenling in Bouillabaisse with Butterbur Sprout

北海道では通年獲れ、脂の多さから「アブラコ」と呼ばれるアイナメ。少量の水と共にココットに入れて、低温で蒸し煮に。半透明に火を入れると、弾けるような食感が生まれる。ブイヤベースソースと炭で炙ったフキノトウを添えて。春を迎えるころ、モティーフのメニューに載る。










The Social Salon(メインダイニング)





SHOP DATA
◎フォーシーズンズホテル丸の内 東京 MOTIF RESTAURANT & BAR
東京都千代田区丸の内1-11-1
パシフィックセンチュリープレイス7階
☎ 03-5222-5810(直通)

■The Social Salon(メインダイニング)
・営業時間
朝食 6:30~11:00(10:30LO)
ランチ 11:30~14:00(13:30LO / コースの場合13:00LO)
アフタヌーンティー 14:30~17:00(16:30LO)
ディナー 17:30~23:00(22:00LO / コースの場合21:00LO)
・価格
ブレックファストブッフェ 4100円、和朝食 4100円
ランチコース 4500円、5500円、6500円
ディナーコース 9000円、12000円、15000円
アラカルトメニューあり

■The Living Room(バーラウンジ)
・営業時間
日・月・火・水・土 10:00~24:00(閉店30分前LO)
木・金 10:00~25:00(閉店30分前LO)
ランチコースならびにアペタイザー・デザートブッフェ 11:30~14:00(13:00LO)
・価格
ランチコース 4000円、4500円
アラカルトメニューあり

*消費税、サービス料15%別
*内容・価格等変更される場合があります。

MOTIF RESTAURANT & BAR
03-5222-5810(直通)





フォーシーズンズホテル丸の内 東京「MOTIF RESTAURANT & BAR」 ──────────────────────────

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