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JOURNAL / 世界の食トレンド

使い捨てより、繰り返し使えるプラスチック容器をレンタル。テイクアウトの常識が変わる!

Norway [Oslo]

2024.10.03

使い捨てより、繰り返し使えるプラスチック容器をレンタル。テイクアウトの常識が変わる!Norway [Oslo]

text by Asaki Abumi / photographs by Mona-Lisa Hyggen
(写真)紙製のテイクアウト容器は効果的にリサイクルすることが難しい。そこでフードコート「マートハーレン・オスロ」では“プラスチック容器をレンタル”というシンプルな方法を選択した。

多くの飲食店が集い、付近の公園など料理をテイクアウトして楽しめる場所では、食後の使い捨て容器でゴミ箱が溢れそうになるという現象が起こりがちだ。そこで、屋内型フードホール「マートハーレン・オスロ(Mathallen Oslo)」では2024年6月から、繰り返し使える持ち帰り用容器の試験プロジェクトを開始した。
料理をテイクアウトする際に容器をレンタルし、7日以内であれば、館内にある専用ボックスに返却できるという仕組みだ。返却が遅れたり、返却しない場合は、自動的にカードから40ノルウェークローネが引き落とされ、容器は客のものとなる。

従来はボール紙のような材質のテイクアウト容器が使用されていたが、効果的にリサイクルすることが難しく、廃棄物となっていた。繰り返し使えるプラスチック容器では、焼却によって温室効果ガス排出量が増加することを避けられる。

(写真)大規模な循環型プラスチック・ソリューションをワンストップで提供することで、持続可能なプラスチックへのシフトを提供するアイオン(AION)社が、プラスチック容器を提供。
(写真)大規模な循環型プラスチック・ソリューションをワンストップで提供することで、持続可能なプラスチックへのシフトを提供するアイオン(AION)社が、プラスチック容器を提供。

「このアイデアが生まれたのは1年以上前です。店と利用者の双方にとってシンプルなソリューションを作るために、パートナー探しに取り組みました。最終的に、容器の返却ボックスを開発したグラン(GRIN)社と決済処理システムを開発したクレーン・ハブ(kleen hub)社と協力し実現しました。さらに多くの飲食店でも導入されるだろうと考えています」と話すのは、プロジェクト担当リーセ・ソーランド氏。

(写真)左:プラスチック容器の循環利用を可能にするスマートな回収システムを作る「グラン」の返却ボックス。右:「クレーン・ハブ」の決済機能との連携により、レンタルした容器は簡単に返却できる。
(写真)左:プラスチック容器の循環利用を可能にするスマートな回収システムを作る「グラン」の返却ボックス。右:「クレーン・ハブ」の決済機能との連携により、レンタルした容器は簡単に返却できる。

実践してみて、飲食店側やユーザーは利用法のシンプルさに驚き、環境に配慮した容器への移行にも好意的だという。
面白いのは、このシステムの利用者が増えている要因は、「アプリを導入しない」ことだという。

「アプリを使わないことはとても重要でした。現在、オスロでテイクアウト容器のリユースを採用している場所は、皆、“容器をレンタルするため”にアプリを使用しています。毎日同じ客が来るわけではないので、マートハーレンでは使えないと気づきました。アプリは大きな障壁になるし、導入に時間もかかる。そこで、デビットカードもしくはスマートフォンを使用し、Apple Payなどのデジタルカードをタッチするだけで容器をレンタルできる、クレーン・ハブのソリューションを採用しました」

デジタル化が進む北欧社会で、使いやすさのために「むしろアプリを導入しない」という発想は、目からうろことも言えるだろう。今後どれほどの規模で似たような解決策がテイクアウト市場で進んでいくのかが注目される。


Mathallen Oslo
Vulkan 5, 0178 Oslo Norway

館全体の営業時間(一部店舗の営業時間はそれぞれ異なる)
火~土曜 10:00~20:00、日曜11:00~18:00
月曜休(その他、夏季休暇有)

このプロジェクトに関する詳細(ノルウェー語)
https://mathallenoslo.no/gjenbrukbar-takeaway/

*1ノルウェークローネ=13.6円(2024年9月時点)

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