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FEATURE / MOVEMENT

1杯のコーヒーが生産者、作り手、消費者の輪を育む。東京・中目黒「オニバスコーヒー」

コーヒーショップの可能性

2023.10.16

万人が幸せになる1杯。東京・中目黒「オニバスコーヒー」/コーヒーショップの可能性

photographs by Daisuke Nakajima

連載:コーヒーショップの可能性

日常であり、ミニマムだけれど、内包する世界はワールドワイド。コーヒーは、ソーシャルな飲みものです。そしてコーヒーショップも、商品提供以上のソーシャルな機能を持ち得る場。コーヒーショップで何ができる? 何をすべき? 何がしたい? 様々な在り方を紹介しながら、彼らが耕す未来を覗きます。

東京・中目黒「オニバスコーヒー」 坂尾篤史

東京・中目黒「オニバスコーヒー」坂尾篤史さん

ワーキングホリデーで訪れたオーストラリアでカフェ文化に刺激を受け、帰国。新宿「ポール・バセット」に勤務後独立。2012年奥沢に「ONIBUS COFFEE」1号店をオープン。現在都内に6店舗、22年に那須、23年にタイ、台湾に出店。アフリカや中米のコーヒー農園を積極的に訪れ、現地との持続的な取り引きを大切にし、トレーサビリティを明確にする活動を行う。


▶[開店]2016年1月
▶[活動形態]焙煎豆販売、ショップ、マルシェ、パブリックカッピング、ワークショップ、コーヒーマシン導入コンサルティング
▶坂尾さんにとっての「コーヒーショップ」とは? 
コーヒーの味や豊かさを、生産者、僕ら、飲み手皆でシェアできる場所。東京ならではの新しいコミュニティづくりに貢献できる場。


万人が幸せになる1杯

消費国=先進国では作り得ないコーヒー豆。主な産地は赤道付近の熱帯ベルト地帯の発展途上国。志ある焙煎士であれば原産国に目が行き、サステナブルな意識が高まるのも自然だろう。「オニバス」坂尾篤史さんもその1人。産地特性や生産者への理解を深めるために、定期的に農園に足を運ぶ。

コーヒーは土壌や日照等の生育条件の他、完熟を見極める人の手が品質を左右する。農園が労働者を大事にすれば、彼らも誇りを持って質の高い仕事で返す。そんな農園には生豆の輸入業者も、機械援助や加工の技術指導を惜しまない。そうして届いた生豆は持ち味を大切に焙煎され、抽出は繊細に・・・「オニバス」はポルトガル語で万人のためにと言う意。飲み手が幸せになる1杯のコーヒーは、地球の裏側の人の幸せが繋いできたものという坂尾さんの気持ちが込められる。

東京ならではのコミュニティを

誰かと繋がりたいと思うのは人として自然。だがいろいろな背景の人が集まる東京では、地域という区切りで既存の輪に入ったり、新たに輪を作ることは現実には難しい。「コーヒーショップが好きな音楽や趣味などを共通項に繋がる場として機能できたら」と坂尾さん。コーヒーを通すことで、そんな繋がりの風通しもよくなっていく。

カフェラテ(ダブル)

カフェラテ(シングル/税込638円)。ケニア、エチオピア、グアテマラのブレンド。フルーティーな味わいがミルクと意外な好相性。隣は公園で子どもたちの声が響き、日々の憩いに彩りを添える。「欧米のコーヒー屋は地域貢献が自然。僕たちもそんなふうになれたら」

マルシェやワークショップ

志を同じくするつくり手とは定期的にマルシェやワークショップを開く。自由が丘店は農家と消費者を繋ぐ取り組み「CSA LOOP」に参加し、東京・東久留米「奈良山園」の野菜の販売拠点に。「地域とはまた違う、新しいコミュニティがつくれれば」。コーヒーかすはコンポストにし、社員には「地球にやさしい」自転車通勤を推奨。



◎ONIBUS COFFEE Nakameguro
東京都目黒区上目黒2-14-1
☎ 03-6412-8683
9:00~18:00 
不定休
東急線、東京メトロ中目黒駅より徒歩1分
https://onibuscoffee.com/

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2016年12月号掲載)

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