パン愛好家のための新ブランド「BRENC」を、高橋雅子さんが使ってみました。
2022.07.25
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【PROMOTION】
text by Sawako Kimijima / photographs by Hide Urabe
職人気質のモノづくりで知られる「エムケー精工」が立ち上げた「BRENC(ブレンク)」は、自分好みのパン作りを探求するための新しいブランドです。ホームベーカリーでは飽き足らない、ちょっぴりマニアックなパン愛好家がターゲット。開発担当者いわく「五感全開で生地と向き合うパン作りを“日常の中の冒険”と捉えました」。BRENCは“冒険を共にするパートナー”というわけです。
第一弾として今夏発売されるニーダーと発酵器を、お披露目に先駆けて、家庭製パンの第一人者・高橋雅子さんに使っていただきました。
BRENC最初の冒険やいかに!? 高橋さんと開発担当者が語り合います!
目次
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高橋雅子さん(中央)のアトリエで。ニーダー全体の設計を担当したエムケー精工 BRENC開発チーム 有井真吾さん(左)とニーダーの容器と羽根の設計を担当したエムケー精工 BRENC開発チーム 石澤咲希さん(右)。
特徴1 “徹底的に捏ねる”と“できるだけ捏ねない”
高橋 おいしいパンの作り方って、極端な言い方をすると、“徹底的に捏ねるか”“できるだけ捏ねないか”、どちらかなんですね。今日はBRENCのニーダーを使って、「ゆめちからでパン・ド・ミ」(食パン)と「高加水のフィグ&ノワ」を作りますが、前者は徹底的に捏ねるタイプのソフト系、後者は捏ねないタイプのハード系。真逆の生地です。この両極をBRENCのニーダーではどちらも作れる。これは画期的です。
有井 「パン教室で教わったパンが家では作れない」という声を聞くことがあって、従来のニーダーの限界を超えたい、“使う人が使いたいように使える道具”を形にしたいとの思いがありました。
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右のスピードダイヤルで回転速度を、左のタイマーダイヤルで時間を設定。手前の羽根を容器内の回転部分に装着して使用する。(注:写真はテスト機。パネルの色は黒に変更になります)
特徴2 限界を超える“強い捏ね”
有井 ニーダーをお届けした際、機能の説明をしていたら、高橋さんが「ゆめちからのパンが作れるかも!」とおっしゃったのが印象的でした。
高橋 「ゆめちから」の生地を捏ねられるニーダーを探していたんですね。知り合いのパン職人が焼いたゆめちからのパンがおいしくて、自分でも焼いてみようと。ご存じのように、ゆめちからは国産の最強力小麦です。もっちり弾力のあるおいしいパンになる反面、捏ねる力が強くないと、そのポテンシャルは引き出せない。家庭用のニーダーではむずかしいとされてきました。パン職人からも「家では粉を変えないと無理だよ」と言われて。でも、先日の説明で「このニーダーならできるんじゃないか!?」ってひらめいた。
有井 はい、BRENCのニーダーの最大の特徴は“強い捏ね”にあります。従来の家庭用ニーダーでは使われてこなかったモーターを搭載し、小さなボディながらこれまでにない“強い捏ね”を実現しました。
高橋 実際、作ってみたら、予想以上の出来栄えでした。
石澤 モーター以外にも“強い捏ね”のための様々な工夫を施しています。容器の下半分の形状が七角形になっているのですが、これは生地が内壁に叩きつけられる効果を高めるため。何角形が最も効果的か、六角形、七角形、八角形と試作してデータを取り、最も良い結果が得られた七角形を採用、しかもひねりを加えるとなお良いことがわかったので、面の角度にひねりを加えています。
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容器の下半分は七角形で、面の角度にひねりが加わっている。生地が壁面に叩きつけられてグルテン形成効果が高まる。
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ふたが生地の乾燥を防ぐ。ふたの穴から後入れの材料を加えられるので、回転中に追加しても粉や液体が飛び散らない。
石澤 “強い捏ね”を実現している要因は羽根にもあります。
高橋 羽根が2種類、小さいのと大きいのがありますね。
石澤 はい、小さい羽根は粉量200~300gの場合と加水が少ない生地用、大きい羽根は粉量300~600gの場合と加水が多い生地用です。生地量が多くても少なくても“強い捏ね”が可能になる。
有井 羽根の形状がほんの数ミリ違っただけで、捏ねも振動も変わるんです。生地がよく絡む形状を見つけ出すまで試行錯誤を重ねました。
高橋 どのくらい試作されたんですか?
石澤 30種類以上は試作しています。3Dプリンターで羽根を作っては生地を捏ねてみる、また別の羽根を作っては生地を捏ねてみる、を繰り返して。
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こちらは粉量300~600gもしくは加水の多い生地用の大きい羽根。
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羽根に生地がしっかり絡みついている様子を見て、高橋さんが「でんぐり返りながら捏ね上げられていく!」
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「優れたパン職人の捏ね方を再現する羽根をつくって、匠モデルとしてオプションで販売してほしい(笑)」
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「ほら、腰高に焼き上がる。ふんわり感ともちもち感を併せ持つゆめちからの魅力が発揮されています」と高橋さん。
特徴3 高加水の生地を手捏ねの感覚で
高橋 「高加水のフィグ&ノワ」は、加水が粉量に対して100%のいわゆる捏ねないタイプのハード系ですが、従来、“高加水で捏ねない”生地は主に手捏ねでした。「捏ねない」というくらいですから、ニーダーを使うイメージがあまりない。でも、BRENCのニーダーはスピードダイヤルを0%から100%(100%時 約520回転/分)まで、5%刻みで変えられるから、ものすごく遅い回転からものすごく速い回転まで、あらゆるタイプの捏ね方ができる。“できるだけ捏ねない”捏ね方もできるんですね。
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スピードダイヤルを回して、回転速度を0%~100%まで、5%刻みで設定できる。
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5%の上に表示されているのが実際の回転数。回転速度5%だと約100回転/分、100%だと約520回転/分になる。
高橋 「ゆめちからでパン・ド・ミ」は最後にスピードダイヤルを100%に設定するくらい捏ねますが、「高加水のフィグ&ノワ」は、回転速度5%で1分回して、20分オートリーズ、5%で1分回す、バシナージュして、15%で1分、最後にナッツやドライフルーツを加えて、捏ね上がり。回転速度が遅いから、回している最中にヘラで内壁にはねた生地を払うこともできるし、バシナージュもできるし、ナッツを加えても砕けない。まさに手捏ねの感覚です。
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回転速度5%でミキシング中。手で軽く混ぜ合わせるのと変わらない混ざり方。ヘラを入れてもOK。
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ナッツやドライフルーツを加えても砕けない。
有井 元々の発端は湯だねなんです。地元のパン屋さん20軒ほどの食パンを食べ比べたところ、社員からの支持が圧倒的に高かったのが、湯だね製法の食パンだった。そこで、湯だねの生地が作れるニーダーを作ろうと。
高橋 湯だねはシェフたちの間でも流行っているように思います。65℃から70℃の低温の湯だねを作ったり、お鍋に水と小麦粉を入れて火にかけベシャメルソースを炊くように作ったりと、湯だねと言ってもいろいろあります。
有井 加水の多い湯だねの生地はやわらかくてベタつくから、手ではなかなか捏ねられない。加水の多いベタつく生地をどうやったら捏ね上げることができるのか、試行錯誤を重ねました。つまり僕たちは「高加水だから捏ねない」ではなく、「高加水でもしっかり捏ねられる」ニーダーを目指していたんですね。だから、高橋さんから「高加水で捏ねない」パンのご提示をいただいて、「あ、そういう使い方もできるのか!」。想定していなかった使い方を教えていただきました。
石澤 実は、回転速度30%以下の機能を持たせる必要はないんじゃないか、ニーダーなんだから「捏ねない」という機能は要らないんじゃないか、という意見もありました。
高橋 確かに、回転速度を遅くできるニーダーって、これまで見たことがないですね。
有井 結局“使う人が使いたいように使える道具”を目指すのであれば、低い回転速度も取り入れようということになった。ちなみに丸めやパンチもできるんですよ。
高橋 え、本当ですか?
有井 はい、スピードダイヤルを長押しすると、超低速でゆるっと回るんです。
高橋 高加水パンを手捏ねで作ると、捏ねもパンチも丸めも、生地が手に付いて、工程の度に洗わなければならないし、生地量が減ってしまうのがストレスだったのですが、それも解消されますね。
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スピードダイヤルを長押しすると、ゆるっと回転して、丸めやパンチの役割を果たす。
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「容器が透明だから、生地の状態がよく見える。デモンストレーションでも使いたい」
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石臼挽き小麦や全粒粉など奥行きのある味わいの粉を使った「高加水のフィグ&ノワ」。
特徴4 作り手の五感や創造力をサポート
高橋 回転速度を5%ずつ変えられるというのはクラフト感があっていいですね。
石澤 機械というより道具という感覚を大切にしたかったんですね。使う人それぞれにとっての使いやすさであったり、使用する粉の性質に合わせたニーダーの使い方ができたらいいな、と。ニーダーに人が合わせるのではなく、ニーダーが人に寄り添ったらいいな、と。
高橋 開発にどのくらいの期間を費やされたんですか?
有井 話が持ち上がったのが2年前です。コロナ禍の中で「ストレス・ベイキング」、すなわちパン作りやお菓子作りにはセラピー効果があるという記事を読んだのがきっかけでした。計量したり、混ぜたり、丸めたりといった作業に集中することで、マインドフルネスが実践されるというんですね。弊社はホームベーカリーを30年以上も製造してきたけれど、ホームベーカリーは全自動だからセラピー効果が発揮されにくい。全自動の中に喜びや楽しさがあったんだって気付いて、そこからパン作りを冒険と捉えるBRENCを立ち上げたのでした。
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休日には家でニーダーを使わずにパン作りを何度も試みたという有井さん。「手で捏ねるのは大変な作業だなと痛感した」
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石澤さんは「高橋さんのニーダー使いを見ていると、もっともっと可能性が広がるのを感じます」とうれしそう。
高橋 機能だけじゃなくてフォルムも背が高くてスタイリッシュ。
石澤 デザインもこだわりました。A4サイズの面積にすべて収まるようにしながら、カッコよく見せようと背を高くすると、重心が上がって安定しない。試作時には、どこかへ飛んで行ってしまうんじゃないかってくらい暴れまくって、大変だったんです(笑)。安定させるために、脚を工夫しています。手前側の2つは強力だけど取り外しやすい吸盤、奥側の2つは振動を吸収するダンパー機能を設けた脚を付けました。
高橋 容器のまま、発酵器に入れられるんですね。成形までずっとニーダーの容器のまま進められる。生地に手を触れる回数が少なくて済むのはありがたいです。
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ニーダーと発酵器。いずれも洗練されたデザインでキッチンに違和感なく馴染む。
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ニーダーの容器のまま、発酵器に入れられる。発酵器には棚板を差し込んで天板ごと入れるのも可。
高橋 発酵器とは思えない、ワインセラーのようなデザインですね。オーバーナイトと呼ばれる冷蔵発酵が浸透したり、最近ではレスペクチュスパニス製法(16~18℃で長時間発酵させる古典的な製法)が注目を集めたり、従来の発酵温度や発酵時間がもはや一般的でなくなってきました。発酵の温度と時間をコントロールすることで、作業負荷を軽減しつつ、おいしいパンを作ろうという流れが顕著です。気候変動の影響で日々の気温や湿度の変化が激しいこともあり、一年を通してベストな状態でパンを焼くには発酵器の重要性が増していると感じます。
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焼きたての「ゆめちからでパン・ド・ミ」を食べた石澤さん、「ふわふわの質が違う! 耳も香ばしくておいしい!」
有井 最強力小麦の食パンも、ハード系の高加水パンも、そこまでは僕たちも想定していなかったプロならではのニーダー使いで、開発者としての喜びと刺激の両方をいただきました。
石澤 開発段階で「やりすぎているんじゃないか。そこまで求められていないんじゃないか」って、時々心配になったのですが、「ああ、これでよかったんだな」って、マルを付けていただいた気分です。
有井・石澤 高橋さんの冒険によって、ニーダー使いの地平がさらに切り拓かれました!
●ニーダーの主な仕様
・品番:BR-K006W
・電源:AC100V 50/60[Hz]
・サイズ:幅206×奥240×高359[mm]
・質量:約6.0kg
・捏ね:独自形状インペラと容器および制御により、力強い捏ねを実現(高加水生地にも対応可能)
・羽根形状:小麦粉量、生地の水分量に合わせた最適な羽根(標準品として2種類)
・窯方式:モーターの熱を生地に伝えない外窯方式
・シンプルな操作性:ON/OFF スイッチ付きスクロールダイヤル2個、時間設定ダイヤル、回転数設定ダイヤル
・カウントアップ機能:トータルの捏ね時間をカウント
・タイマー機能:最長99分まで設定可能
・容器容量:小麦粉量 200~600[g]
・回転数可変域:約100[回転/分]~約520[回転/分](5%刻みで設定可能)
・運転モード:マニュアル(手動運転)/オート(自動運転)最大7個までコースを登録可能
・価格:¥59,800(税込)
●発酵器の主な仕様
・品番:BR-H073S
・電源:AC100V 50/60[Hz]
・温度設定:20~45[℃]の範囲で設定可能(1℃刻み)
・湿度設定:70~90[%RH]の範囲で設定可能(5%RH刻み)。加湿なし運転も可能。
・時間設定:10分~24 時間の範囲で設定可能(10分刻み)。連続運転も可能。
・サイズ:幅435×奥535×高525[mm]
・庫内:幅390×奥430×高420[mm](家庭⽤のオーブンレンジのオーブン天板が入るサイズ)
・価格:¥49,800円(税込)
※2022年7月20日から「BRENC」ブランドサイトにて事前予約受付開始。ニーダーは8月下旬より、発酵器は9月上旬より順次発送予定です。
●「BRENC」ブランドサイト
https://brenc.jp/
◎高橋雅子(たかはし・まさこ)
「ル・コルドン・ブルー東京校」でフランスの製パン技術やワインを学び、日本ソムリエ協会・ワインアドバイザーの資格を取得。1999年にパン教室「わいんのある12ケ月」をスタート。2009年、代々木八幡にオープンしたベーグル専門店「テコナベーグルワークス」は行列必至の人気店。パン教室の先生とパン作りを楽しむ全ての人のためのWebサイト「ブレッド リパブリック」運営。ベーカリーやレストランのトップシェフたちと活発に交流して、プロの技を家庭製パンに落とし込んだレシピや、家庭用のキッチンツールを徹底的に研究したレシピブックなど、家庭でパン作りをする人にとってバイブル的存在。『ホームベーカリーで作るプレミアム食パンとハイブリッド食パン』『おうちでつくるプレミアム食パン』『「自家製酵母」のパン教室』『少しのイーストでゆっくり発酵パン』(いずれもPARCO出版刊)など、著書多数。