食で街にイノベーションを! 「タイムアウトマーケット」は大阪の街をどう変える?
2022.08.29
text by Michiko Watanabe
ポルトガルで大成功を収め、世界各地にオープンしている大規模フードホール「Time Out Market(タイムアウトマーケット)」。編集者が厳選した地元の食とカルチャーが体験できる、地域密着型のコンセプトで話題を集める大人気スポットが、大阪・関西万博に先駆けて2025年、大阪の街に登場します。
編集者が街の面白さをぎゅっと凝縮
「Time Out Market(タイムアウトマーケット)が大阪にアジア初進出!」というビッグニュースに心躍った人も多いのではないでしょうか。海外で一度でもその楽しさを体験した人なら、なおさらです。初耳の人は、「タイムアウトマーケットって何? 何が魅力なの? なぜ大阪?」と思いますよね。順々にひもといていきますよ。
知らない街を訪ねる時、どこに行けばいいの? 何を食べればいいの? どんな文化に触れればいいの?・・・と迷った時の心強い味方が、世界59カ国333都市で展開している地域密着型シティガイド『Time Out(タイムアウト)』。
1968年の創刊以来、積み上げてきた膨大な情報をもとに、編集者が選りすぐった、その街のトップシェフやピカイチのレストラン、バーなどを集め、食を楽しみ、人と触れ合い、地元アーティストによるライブパフォーマンスなど、“街”の文化まで体感できるスペースが「タイムアウトマーケット」です。
そのタイムアウトマーケットの共同最高経営責任者(Co-CEO)、ディディエ・ソイヤットさんに話を聞きました。
「世界初のタイムアウトマーケットが誕生したのは、ポルトガルのリスボンでした。2014年、歴史的建造物の市場跡にオープンするや、たちまち年間420万人が訪れる大人気スポットに。土曜日など1万3000人も来場者があります。
長いテーブルに、ツーリストや地元の人たちが共に座り、その街一番のおいしいものを食べながら、いつの間にか話が弾んでいる。ツーリストにとっては、街の探検に出かける前に“生きた”情報がゲットできる場所ですし、地元の人にとっては、我が街の魅力再発見の場ともなる。一つ屋根の下に街のおもしろさがギュッと凝縮しているような、そんな素敵な場所になっています。
リスボンの大成功を受け、フォーマットにさらなる磨きをかけて、5年後、米国・マイアミ、ニューヨーク、カナダ・モントリオールなど、5カ所に一気にオープン。2021年はドバイにもオープンさせました」
食×メディアが街にもたらすwin-winの循環
では、なぜ大阪だったのでしょう? 選考基準みたいなものはあるのでしょうか。
「まず、食に精通している街であること。大阪は“食い倒れの街”ですよね。2つ目は、長〜いテーブルを置くので、大きな空間があること。大阪では3,000㎡のスペースが用意されています。そして3つ目。これがとても重要ですが、いいクライアント、いいパートナーがいること。今回、阪急阪神不動産という、願ってもないパートナーとの出会いがありました。2025年には大阪・関西万博が開かれます。大阪に世界の注目が集まる、またとないチャンスだと思います」
メディアがフードホールを手がける意味はどんなところにあるのでしょうか。
「初めてのタイムアウトマーケットをつくる際、我々にはすでに、何十年もメディアとして発信を続けてきたノウハウと、それまで関わってきた幅広い人脈がありました。当時、リスボンで空間を提供されるというチャンスに恵まれたとき、我々のノウハウと各方面に精通している人々の人脈とを組み合わせて、強いチームワークで推進することができました。
メディア事業単体で生業を立てていくのは難しい時代にありますが、タイムアウトマーケットによって収入アップが図れ、それによって、メディア事業も維持し、成長もできる。そして、マーケットを通し、様々な情報も入ってくる。
お客様は、タイムアウトのブランド力のおかげで、間違いなくおいしいもの、楽しいものにありつけるという安心感がある。そこで触れたものについてもっと知りたくなれば、検索して、実際の店や場所に足を運ぶ。切磋琢磨されて、料理人のスキルアップにもつながるでしょう。その街にとっては、大きな宣伝となって、人が集まる街になる。ビジネスとしても成長できる。すべてがよき方向に循環するシステムが自然と生まれてくるわけです」
“食い倒れの街・大阪”を世界に発信する好機
「タイムアウトマーケット大阪」が上陸するのは、オフィス、ホテル、商業施設、公園、住宅などが一体となった大阪駅前の「うめきた2期地区開発プロジェクト」内の商業エリア。同地区では、関西国際空港からの直通特急が停車するJR新駅が2023年に開業し、大阪・関西万博では世界の玄関口となる。都心一等地最後の大規模開発と言われるプロジェクトです。
タイムアウトマーケット誘致を手掛ける「阪急阪神不動産」の奥土恵(おくつちけい)さんに話を聞きます。
「国際観光拠点として世界の方々に、もちろん日本の方々にも、ここでしか体験できないこと、わざわざ来る価値のあるものを提供したいと模索する中で、タイムアウトマーケットのコンセプト”The best of the city under one roof(その都市のベストをひとつ屋根の下に集める)”に出会ったわけです。
食は、食い倒れの街・大阪の誇るべき重要コンテンツのひとつでありますし、街づくりの、また、街の活性化の重要なファクターともなるものです。タイムアウトマーケットをお迎えすることで、関西の美食を世界の方々に注目していただくいい機会になる、そして、その食を通して人々の交流が生まれ、イノベーション、新産業につながると考えています」
一般的に、大阪といえば、道頓堀の賑やかなネオンや、新世界の下町らしい商店街を思い浮かべる人が多いだろう。食でパッと思いつくのは、たこやきとかお好みやきといったB級グルメかもしれない。関西エリアには、洗練された美食も数多ある。この食の幅広さが、まさに食い倒れの街なのである。
「ネタはたくさんあるんです(笑)。大阪らしさ、関西らしさをどう表現するか、どう発信していくかがこれからの課題。世界333都市で展開する、タイムアウトというグローバル・ネットワークを持つメディアの発信力は他に代えがたい魅力で、大いに期待しています。
タイムアウトマーケットで飲んだお酒がおいしかった、料理がおいしかった、どんなところで作っているのか興味を持たれたお客様には、その酒蔵や本店をご案内して訪ねていただけたらと思います。
さらに、阪神阪急不動産では、食のクリエイターを支援・育成する『OSAKA FOOD LAB(大阪フードラボ)』を主催する取り組みも行っていますが、例えば、大阪フードラボ出身者の料理人がタイムアウトマーケットへの出店をチャレンジするような、発展的なつながりも築いていきたい。そんなふうにすることで、関西の食の発展と、街の活性化に貢献できたらと思っています」
タイムアウトマーケット大阪は地下フロアとなるが、サンクンガーデン(中庭)が設けられ、自然光が入り、そこから公園にも出られる。天気のいい日は公園に出て、そこで食事をとることもできる。
「私ども不動産業ではありますが、この先、100年にわたって繁栄するためには、街自体の発展が要です。タイムアウトマーケットなどの魅力的なコンテンツを誘致し、長期展望で街を育ててまいります」
楽しみ以外、ありませんね。大阪にとって、2025年は素晴らしいスタートの年になりそうです。
◎Time Out Market
https://www.timeoutmarket.com/
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