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JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】古い道具と手仕事が生む味

静岡・掛川「栄醤油醸造」

Dec 26, 2022

text by Kyoko Kita / photographs by Hide Urabe

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。今回は、100年以上使う木桶、厳選した原料で、天然醸造による醤油造りを続ける静岡「栄醤油醸造」を案内します。

一晩水に浸けた大豆を釜で蒸す。

小麦を炒るのはレンガ造りの焙煎機。小麦を熱した砂の中をくぐらせて加熱する。小麦の流量を調整しながらムラのないように炒り上げる。


炒った小麦は、歯車がついた機械で細かく砕く。

蒸した大豆を広げて冷ましたら、炒って砕いた小麦を混ぜ、麹菌を撒き、スコップを使って混ぜ合わせる。

麹は約30℃、湿度80%以上の室で3日かけて作られる。

大豆と小麦がふかふかして緑色に変わると麹の完成。


杉桶に仕込み、櫂入れしながら1年半かけて熟成させる。

何百枚もの袋にもろみを入れ、上から圧をかけて搾る。

手触りや香りで麹の生育具合を確かめる

城下町の趣を残す遠州横須賀で1795年から醤油造りを続ける「栄醤油」。この蔵には、時を越えて古い柱や土壁に棲みつく菌や酵母、そして年代ものの機械と共に、今も職人の手仕事が息づいている。

蒸した大豆を広げて冷ましたら、炒って砕いた小麦を混ぜ、麹菌を撒いていく。その姿はまるで花咲か爺さんのようだ。その麹をレンガ造りの室で3日かけて育て上げる。温度変化に気を配りながら、手触りや香りで麹の生育具合を確かめる。「秋から春にかけての仕込み期間中も気温はゆるやかに変化します。同じ作業の繰り返しでも、一日一日が大切です」と職人の古川真輔さん。

出来上がった麹は塩水と共に杉桶に仕込む。1年半の間、櫂入れをしながら寝かせたもろみは、袋に入れて舟搾り。非常に手間がかかるため醤油蔵では珍しい光景となったが、澱の少ない醤油に仕上がるという。

この蔵にあるのは、すべて60年以上使い続ける道具ばかり。古い道具は、使う人のちょっとした力加減や、状態を見極める判断力が出来を左右する。だからこそ、他にない味わいを生み出すのかもしれない。

ただ、「持続していくには設備投資も必要」と8代目の深谷允さん。造ることに専念してきた蔵を開き、実直な手仕事の価値を発信することに、その活路を見出している。

左から「うすくち醤油」¥1220/900ml、定番で濃口の「栄醤油」¥1134/900ml、自然農法の原料と自家採取した麹菌で造った「天」¥690/200ml。



◎栄醤油醸造
静岡県掛川市横須賀38
☎0537-48-2114
http://www12.plala.or.jp/sakae-s/index.html

(雑誌『料理通信』2018年7月号掲載)

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