HOME 〉

JOURNAL / 世界の食トレンド

サステナビリティの唱導家シェフ、ダン・バーバー氏開発の新野菜

America [New York]

2023.11.27

サステナビリティの唱導家シェフ、ダン・バーバー氏開発の新野菜

text by Akiko Katayama
(写真)「ロー・セブンシード・カンパニー」が手掛けた、ニンニクとリーク(リーキ)を交配した「スイート・ガーリーク」。柔らかな繊維質も味わいを高める魅力。価格は「ホールフーズ・マーケット」で1束5.99ドル。

ダン・バーバー(Dan Barber)氏といえば、アリス・ウォータース(Alice Waters)氏を継承する、サステナビリティ推進者として知られる料理人。ニューヨーク州北部の非営利施設「ストーン・バーンズ 食と農業センター(Stone Barns Center For Food And Agriculture)」にあるミシュラン二ツ星のレストラン「ブルーヒル・アット・ストーン・バーンズ(Blue Hill at Stone Barns)」のオーナーシェフである。氏は敷地内の農園経営に深く関与しながら、大規模機械化農業に対置する、環境負荷が少なくおいしい食材生産の価値を一般に向けて広く提唱してきた。


(写真)ダン・バーバー氏のサステナビリティ推進への努力の評価は高く、著書『食の未来のためのフィールドノート』(日本語版:NTT出版刊)や『ニューヨーク・タイムズ』紙の他、主流のメディアを通じての活動はもちろん、オバマ政権下では健康・栄養に関する諮問委員も務めている。

(写真)ダン・バーバー氏のサステナビリティ推進への努力の評価は高く、著書『食の未来のためのフィールドノート』(日本語版:NTT出版刊)や『ニューヨーク・タイムズ』紙の他、主流のメディアを通じての活動はもちろん、オバマ政権下では健康・栄養に関する諮問委員も務めている。

そんな氏が2018年に創業したのが「ロー・セブンシード・カンパニー(Row 7Seed Company)」(以下Row7)。理念を共有する育種家と共に、最高においしくかつ農薬を要さぬ食材を、自然交配によって生み出し、一般に広く提供することを目指して生まれたビジネスである。育種家がどんなに頑張って良い食材を開発しても、市場に出なければ意味がない。そこで近年急速に影響力を高める料理人のマーケティング力を活かして、サステナブルな食材供給と消費を促していこう、というのがRow7の戦略だ。

米国各地の小規模有機農家をターゲットに、これまで豆、ビーツ、トウモロコシ、ピーマン、トマト、ポテトの他、多彩な品種の種を約20種開発し、実際作られた食材は、料理人の間で評価を確立してきた。

また一般消費者向けには、おいしさを高めたトマト、カボチャなども提供し、好評を得ている。2023年10月に発売されたのは「スイート・ガーリーク(SWEET GARLEEK)」。北米を中心に約500店舗を展開するオーガニック・スーパー「ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)」のニューヨーク近郊各店で販売し、常時売り切れ状態だ。

スイート・ガーリークは、ニンニクとリーク(リーキ)の交配。ニンニク独特の風味を保ちながら、ツンとした刺激の角がなく、リークの甘さを引き立てる。そこに双方の野菜の旨味が相乗し、異なる野菜の“いいとこ取り”の、絶妙なマリアージュだ。レシピの汎用性は高いが、シンプルに小口切りにしてオリーブ油でさっと炒め、繊細な味わいを楽しむのがおすすめ。

Row7は現在、50以上の育種家と提携し、150以上の料理人や生産者と共に、市場のニーズに即したサステナブルな食材開発・生産・流通を推進中。食の未来を支えるどんな商品が登場するか、今後ますます期待が高まる。



◎Row 7 Seed Company
https://www.row7seeds.com/

*1ドル=150円(2022年11月時点)

料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。