中国の粉もの。ふんわり、蒸したての「花巻」
【DIYレシピ】東京・学芸大学「ピセロ」麦野詩碧さん
2023.03.06
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photographs by Masahiro Goda
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。
教わるテクニック:発酵
教えてくれた人:東京・学芸大学「ピセロ」麦野詩碧さん
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シュウマイバー「ピセロ」店主。小麦粉料理を台湾の専門学校で学び、2005年に点心、饅頭の専門販売店「ピセロ」を開業。2010年にシュウマイ×ワインBARとしてイートインも開始。ランチ(現在休止中)のテイクアウト弁当や、オーダーメイドのケータリングも人気。
日々の食事の主食になる、ご飯のような存在
白くてしっとり、ふわふわの花巻(ホアジュアン)は、中国・北の方で親しまれる普段着の粉ものです。おかずに添えられる、白いご飯のような存在。蒸したてはほっこり、テンションが上がりますね。現地ではもう少し、ぱさっと淡白な仕上がりが多いのですが、店では口溶けよく、ほの甘い仕上がりが好まれるので、きめ細かい粉を選び、発酵を助ける砂糖も気持ち多めに加えて作っています。
専門店では老麺を継いで作ったりしますが、初心者でも扱いやすいよう、ドライイースト、ベーキングパウダーを組み合わせた配合にしました。
花巻は成形に時間がかかります。慣れないうちは、作業の途中でどんどん発酵が進んで膨らんでしまうので、ドライイーストを溶く水は指の温度より冷たくして、発酵速度を遅らせるとよいでしょう。ちなみに、打ち粉はしすぎないこと。生地が取り込んで配合が変わり、硬くなりがちです。
また、蒸し上がりに要注意。蒸籠は必ず鍋から外し、蓋をずらして、中の水蒸気を少し逃がしてから開けましょう。さもなくば蒸籠を開けた途端、蒸し器の中が真空状態となって、生地が萎み、硬くなってしまいます。
同じ生地で形を変えて作る割包(カーポー)は、焼豚や角煮などをサンドイッチのように挟んで食べたりします。基本の生地なので、ハムやネギをまぶしたり、ゴマペーストを練り込んだり、アレンジも自在に愉しんでください!
花巻の極意
1 作業に慣れないうちは、少量で作る
2 薄力粉と強力粉をブレンド
3 蒸気を抜いてから蓋を開ける
[材料](6~8個分)
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強力粉・・・50g
薄力粉・・・150g
砂糖・・・10g
サラダ油・・・5g
ベーキングパウダー・・・3g
ドライイースト・・・3g
(水100gで溶く)
ゴマ油又はサラダ油(成形用)・・・適量
<材料のポイント>
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薄力粉だけだとコシが弱く、強力粉が多いと、こね作業が大変。2種を薄力粉3:強力粉1の割合で混ぜて使うとよい。全粒粉や精製の粗い粉でもいいが少し硬い仕上がりになる。
<道具のポイント>
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生地は発酵前に比べ、仕上がりが2~2.5倍ほど大きくなるので、大きめの蒸籠を用意する。今回は直径24㎝の蒸籠を使用。
[作り方]
[1]材料を混ぜ合わせる
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ドライイーストと成形用の油以外のすべての材料をボウルに入れて混ぜ合わせる。
POINT:発酵を助けるため、砂糖の分量は多め。
[2]イーストを加える
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中央を窪ませて、水で溶いたドライイーストを少しずつ注ぎ、5本の指でかき混ぜるように粉に入れていく。
POINT:水の温度を低めにすると発酵速度を抑えられる
[3]光沢が出るまでこねる
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生地が1つにつながったら台に移し、手の腹で押すように光沢が出るまでこねる。
[4]一次発酵
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ラップをして常温で、2倍の大きさになるまで(約1時間)一次発酵させる。
[5]生地を伸ばす
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生地を台に出し、少量の打ち粉をして麺棒で3~4㎜の厚さに四角く伸ばす。刷毛で表面に油を薄く塗る。
POINT:配合が変わるので、打ち粉をし過ぎない。
[6]5㎜幅に切る
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両脇から3つに折りたたみ、折り目に垂直になるように、5㎜幅にカットする。
[7]成形する
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カットした6を7~8本束ねて軽くひねる。
[8]生地をねじる
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ひねった向きと同じ方向に、全体がとぐろを巻くようにさらにねじり、両端を裏で1つに留める。
[9]二次発酵
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蒸籠にペーパーを敷き、8を間隔を開けて並べ、常温で2倍になるまで(約30分)二次発酵させる。
POINT:必ず2倍の大きさになるまで発酵させる。
[10]蒸す
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写真のように膨らんだら、湯を沸騰させた鍋に蒸籠をのせて15分ほど蒸す。
[11]蒸気を抜く
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蓋は開けずに蒸篭を一旦鍋から外す。蓋を少しずらして蒸気をある程度逃がしてから開ける。
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おかずと一緒に。割包は焼豚や角煮を挟んでも美味。冷めたら蒸し直せば戻る。
<花巻 展開例>
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割包・・・花巻の手順4まで同様に作り、生地を棒状に伸ばす。直径3~4㎝の球状にちぎって丸めてから麺棒で楕円に伸ばす。刷毛で表面に油を塗り(写真右)、2つに折り畳む。間隔をあけて蒸篭に並べて15分ほど蒸す。
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刻みネギとハムの花巻・・・基本の生地にみじん切りにしたボイルハムと万能ねぎを混ぜて。ゴマペーストを練り込んだり、アレンジ自在。
◎ピセロ
東京都目黒区鷹番3-19-19
☎03-3760-8860
18:00~22:00LO
日曜休、不定休
東急線学芸大学駅より徒歩4分
https://pisero2017.wordpress.com/
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2018年12月号掲載)
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