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RECIPE

【DIYレシピ18】名酒場「高太郎」に教わる、手打ちさぬきうどんの作り方

東京・渋谷「高太郎」林高太郎さん

2023.04.03

【DIYレシピ18】名酒場「高太郎」に教わる、手打ちさぬきうどんの作り方

photographs by Sai Santo

連載:DIYレシピ

塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。

教えてくれた人:東京・渋谷「高太郎」林高太郎さん

東京・渋谷「高太郎」林高太郎さん

東京・渋谷の和食店「高太郎」店主。香川県丸亀市出身。池尻大橋「KAN」の料理長等を経て、2011年に現店開業。野球ボールサイズのボリューミーなメンチカツ、くん玉ポテトサラダ、手打ちうどんなど、アレンジを加えた料理を厳選された日本酒と楽しめる、予約困難な人気店。著書に『うまい!にはワケがある 「高太郎」のご馳走つまみ』(家の光協会)など。帰郷すると1日10軒以上うどん屋をはしごするなど、今も研究は怠らない。

踏みながら、押し固め、層を作って、コシを出す

林高太郎さんが開店にあたり、自らに課したことは2つ。1つは仕事でいくら疲れていても、「朝8時には泳ぐ」こと。2つ目は「毎日うどんを打つ」こと。

出身は香川県丸亀市。同学年に1人はうどん屋の親父を持つ町で育った。授業でも「君たちが住んでいる土地は、小麦の生産が盛んで、瀬戸内のいりこがたくさん採れて、塩田があって。だから然るべくしてうどんを食べているのだ」と教わった。

体に染みついた「さぬきうどん」という麺を、林さんは東京で調理の仕事を始めてから独学で学ぶ。帰郷の際は1日10軒以上巡り、「ここはかけ、ここはぶっかけ」など事前にリサーチしてレンタカーで回った。修業先の店では、合間を見つけてはうどんを打ち、独立時には独自のレシピが完成していた。

酒場でありながら毎日愚直に続けた麺打ちは、今では「生地の声が聞こえる」という程、水分の微調整、状態の確認を安定して行える。基本工程は水分の少ない生地を、踏んで重ねて「ミルフィーユ状の層」を作り、コシを出すこと。水分が少ない分、寝かせる際のラップはぴっちり、麺打ち作業は15分以内にとどめる。伸ばしや麺切り作業は「均一に」が合言葉だ。

作業中のピンと伸びた背中を見て思う。林さんが打つさぬきは、林さん自身に、似ている。

ぶっかけうどん

料理の展開例:ぶっかけうどん・・・つるっと滑らか、ほどよいコシと軽やかで歯切れのよい麺。かつおと昆布のだし醤油、大根おろし、天かすなどのトッピングの旨味と香りをまといつつ、1本1本が口の中で踊る確かな存在感が。レモンの酸味が爽やかな余韻を残す。


さぬきうどんの極意


1 ミルフィーユ状の層でコシを出す
2 熟成させてなめらかな生地に
3 生地の厚さ、麺の太さは均一に
4 麺の角が立つよう、真四角に切る

[材料](80g×12~13玉分)

さぬきうどんの材料

中力粉(日清製粉豪産ASW入りオリジナルブレンド)・・・1kg
塩水
 水・・・450ml
 塩(ゲランド)・・・55g
打ち粉(コーンスターチ)・・・適量

[作り方]
[1] 粉に塩水を加える

粉に塩水を加える

粉を入れたボウルに、塩水をまんべんなく回しかけ、表面だけをなでるように片手で軽く混ぜ合わせる。全体がそぼろ状になる程度でOK。

[2] 生地を押し固める

生地を押し固める

全体に水が回ったら、両手で、体重をかけて生地を一つに押し固めていく。

[3] 一つにまとめる

一つにまとめる

まとまった状態。この段階の生地は、表面はまだぽろぽろしている。

[4] 足で踏む

足で踏む

生地にビニールシートを被せて、両足で踏む。両足交互にかかとからゆっくりと体重をかけて、全体を踏んでゆく。約6、7歩。
POINT: 感覚を鋭くするため、本来は裸足で行う

[5] 2つ折りを2回

2つ折りを2回

生地が広がったら2つ折りを2回行い、再びの作業を行う。折り畳めなくなる位、生地が硬くなるまで4、5回繰り返す。

[6] 常温で休ませる

常温で休ませる

空気に触れないよう生地をぴっちりラップで覆い、常温で5時間寝かせる。
POINT: 急ぐ場合は、2時間以上ならばOK。

[7] 再び踏み、折り畳み、冷蔵熟成へ

再び踏み、折り畳み、冷蔵熟成へ

再びの作業を4~5回行い、ラップでぴっちり覆った後、冷蔵で12時間熟成させる。熟成後(写真)、生地の表面はつるりとなめらかに均一になっている。
POINT: 踏んで重ねる生地の層が、麺のコシを作る。

[8] 麺棒で伸ばす

麺棒で伸ばす

冷蔵庫から出して常温に戻し(2時間程度)、生地に触ると軽く跡がつく位にやわらかくなったら、台に打ち粉をふり、麺棒で中央から12時、2時の方向へ伸ばし、生地を回しながら、大きな円形へ伸ばしていく。
POINT: 乾燥するので、麺打ちの作業は15分以内に終わらせる。

[9] 厚さを揃える

厚さを揃える

生地を麺棒に巻き付け、中央と端の生地が、均等の厚みになるように中央の生地を外側へならしていく。

[10] ならし終わった状態

ならし終わった状態

生地の厚みが均等になった状態。

[11] 角を作る

角を作る

ロスが出ないように、生地を丸から四角へ整える。麺棒で生地を中央から四方へ押し伸ばし、角を作る。

[12] 蛇腹に折る

蛇腹に折る

打ち粉をふり、生地を20㎝幅の蛇腹折りにする。

[13] 5㎜幅に切る

5㎜幅に切る

包丁で5㎜幅に切る。

[14] 細さを均一にする

細さを均一にする

麺をまとめて片手に取り、片方の手でしごきながら粉を振り落とし、太さを均一に整える。太い部分がある場合は、その麺を取り出して、しごきながら細くする。

打ち立ての麺

打ち立ての麺。キメが細かく、麺の角はしっかり立ち、太さは均一。これが安定した食感と、心地よい歯切れと喉ごしを作る。「酒場の〆だから」と、スルっといけるよう、さぬきにしてはやや細め。茹で具合が均一になるよう、麺の断面は真四角が理想。


応用レシピ:「ぶっかけうどん」の材料と作り方

[材料](1人分)

ぶっかけうどんの材料

うどん・・・1玉(80g)
だし醤油(マルオ「うま味しょうゆ こいくち」)・・・適量
大根おろし・・・大さじ2
ショウガ、白ゴマ、ネギ(刻む)、天かす・・・各適量
レモン・・・1/8個

[作り方]
[1] たっぷりの湯で茹でる

たっぷりの湯で茹でる

強火で沸騰させた湯に麺をほぐしながら加え、約15分茹でる。

[2] 茹で具合を確認する

茹で具合を確認する

麺を1本取り出してちぎり、芯の部分を確認する。中央の白い部分が消え、透明になったらOK。

[3] 氷水で締める

氷水で締める

ザルに上げて流水で洗い、氷水で締める。

[4] トッピングをのせる

トッピングをのせる

麺を器に盛り、大根おろし、すりおろしたショウガをのせる。

[5] だし醤油をかける

だし醤油をかける

ネギ、白ゴマ、天かすを散らし、だし醤油を回しかけ、レモンをのせる。豪快に混ぜてから食べる。

ぶっかけうどん

喉ごしのよい麺をレモンの酸が、キリッと締める



高太郎

◎高太郎
東京都渋谷区桜丘町28-2
三笠ビル1F
☎03-5428-5705
月~金曜:16:00~22:00LO
土、日曜:14:00~21:00LO
月曜、第1、3火曜休
各線渋谷駅より徒歩5分

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2017年10月号掲載)

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