【粒あん応用レシピ】寒天で固めて作る「きんつば」
フェーズフリーな食材レシピ:小豆
2023.02.24
photographs by Masahiro Goda
乾物や漬物など、常温で長期保存でき、ビタミンやミネラルなど栄養価も高い食材は、備蓄食品にも向く優れもの。普段から食事に取り入れ、使い慣れることで、「いざという時に賞味期限が切れていた」「食べ慣れない味で食が進まない」という問題も避けられます。「いつも」と「もしも」をつなぐフェーズフリー*な食材を、おいしく活用するレシピ。今回は、神楽坂の鍋料理店「御料理 山さき」に粒あんの応用レシピ、「きんつば」の作り方を教わります。
常備したい食材:小豆、寒天
教えてくれたシェフ:東京・神楽坂「御料理 山さき」山﨑美香さん
鍋料理専門店「御料理 山さき」店主。神奈川県出身。会社員から料理業界へ転向し、老舗江戸料理店で8年修業後、2002年に現店を開店。「ねぎま鍋」をはじめ、季節に応じた鍋と江戸料理が楽しめる。修業時代に東京・富ヶ谷「岬屋」の主人、渡邊好樹氏のもとで菓子作りを習う。店では手作りのあんみつや桜餅、雪餅など季節の菓子をデザートとして提供する。20周年を迎えた昨年(2022年)、春夏秋冬の鍋料理、おかず、和菓子を家庭でおいしく作るコツを伝授する『神楽坂山さき 四季の鍋と江戸料理』(淡交社)を上梓。
少ない手間で、上品なあんに
季節の鍋料理を出す「御料理 山さき」。コース料理の終わりには、ひと口サイズの甘味が添えられる。春は桜餅。夏ならあんみつ。冬にはどら焼きをロール状にした「どら巻き」がころんとかわいらしい。これらは、全て店主である山﨑美香さんの手作りだ。
あんは、丁寧に作れば作るほど、上品な味に仕上がる。でも、慣れないうちは加減が難しいし、手間もかかる。料理の仕込みをしながらお菓子も作らなくてはならない山﨑さん。東京・富ヶ谷「岬屋」の渡邊好樹氏から学んだ炊き方をもとに、「駄菓子っぽくならない加減で」工夫してあんを炊いている。「忙しいので、基本は火にかけっぱなし。目を離しておける時間が長いので、仕込み中でも負担は少ないです。長く煮るので、段取りを計算して煮始めないといけないのが大変ですが」
あんを炊けば、展開も幅広い。衣をつけて焼けばきんつばに。どら巻きも、卵焼き器で生地を焼いてあんを巻くだけ。まとめて作れば、日持ちもする。寒天や黒蜜を用意すれば、いつでも好きなだけあんみつが食べられる・・・。「どれも簡単だし、作る工程も楽しいんです。おうちでも、あんのおやつを楽しんでくださいね!」
きんつば用「粒あん」材料と作り方
[材料](作りやすい分量)
小豆・・・300g
重曹・・・1.7g
水・・・適量
糸寒天*・・・5g
砂糖・・・300g
*糸寒天は手で粗く裂き、被るくらいの水に一晩浸けて戻す。
<おいしい粒あんのコツ>
1 びっくり水で一気に温度を下げる
2 砂糖を加える前に豆を完全にやわらかく煮ておく
3 煮詰める時は混ぜすぎに注意!
[作り方]
[1]強火で対流させる
小豆、重曹を鍋に入れ、水をたっぷり(約1.7L)注いで強火にかける。沸いてきても強火のまま、しっかり対流させてしばらく煮る。
POINT:鍋は琺瑯製がおすすめ。浸水は不要。
[2]湯が深緑になったら煮汁を捨てる
茹で汁が深い緑色になったら火を止め、ザルに空けて煮汁を捨てる。小豆を数回水で洗い、水気を切って鍋に戻す。
[3]再沸騰後びっくり水を差す
たっぷり(約1.7L)の水を注ぎ、中火にかける。沸いたら一呼吸おいてから1L程度の水を一気に注ぎ、温度を下げる。
[4]じっくり静かに煮る
弱火にしてじわじわと温度を上げ、湯気が立つが小豆が動かない程度の火加減で1~2時間煮る。水が減って小豆の表面が出そうになったら、沸かした湯を足す。
POINT:豆を踊らせない
[5]指で潰して確認
崩れていない硬そうな小豆を指で潰してみて、中のデンプン質が簡単に崩れて芋のような質感になったらOK。すべての豆がやわらかくなるまでしっかりと煮る。
POINT:芋のような質感に
[6]煮汁は捨てない
火を止めてザルにあけ、煮汁も捨てずにおく。
[7]小豆の沈殿物を取り出す
煮汁をしばらくおいて沈殿物が下に溜まったら上澄みをゆっくり捨て、沈殿物(小豆が煮溶けたもの)を取り分ける。
[8]寒天を溶かす
きんつばやどら巻きなどのお菓子に展開する場合は、寒天を入れて炊くと離水しにくくなる。別鍋に戻した寒天と水150mlを入れて中火にかけ、寒天が完全に溶けるまで煮る。
POINT:箸を通してみて、糸寒天が引っかからなくなればOK。
[9]砂糖を加える
8を茶漉しで漉し、砂糖を加えて中火で煮立てる。
[10]小豆と沈殿物を加える
砂糖が完全に溶けたら6の小豆と7の沈澱物を鍋に加える。
[11]練らずに煮詰める
ぐつぐつと煮立て、底が焦げないように時々ヘラで優しく混ぜる。ヘラで混ぜた時に底が見えるようになったら火を止める。
POINT:混ぜすぎない
◆寒天を入れずに炊く場合(あんみつ、おはぎ、あんころ餅用)
手順7の後、鍋に砂糖、小豆、7で取った小豆の沈澱物を入れて中火にかける。→手順11
<粒あんの展開例:きんつば>
きんつば・・・薄い衣から透けるあんの色が美しいきんつばも、実は簡単に作れる。ゴマ油で焼きつけると風味豊かに。「大きく切った方が焼くのが簡単です。大納言小豆で作ってもおいしいですよ!」
[材料](作りやすい分量)
寒天入り粒あん・・・全量
白玉粉・・・12g
水・・・80g
砂糖・・・10g
小麦粉・・・50g
ゴマ油・・・適量
[作り方]
[1]粒あんを固める
粒あんは流し缶に流し、表面にラップを貼りつけて常温に置いて固める。
[2]カットする
完全に固まったら、好みの大きさにカットする。
[3]衣を作る
白玉粉を少量の水でダマがなくなるまでよく練る。残りの水の半分強を少しずつ注いでよく混ぜる。砂糖と小麦粉を加えてよく練り、ダマがなくなったら残りの水を加えてのばす。
[4]衣をつける
衣の少量を器に移して2の一面を浸し、器の縁で余分な衣を拭う。
[5]フライパンで焼く
ゴマ油を熱したフライパンで、弱火で焼く。
POINT:衣が多いとはみ出して不格好になるので、薄付きに。
[6]全面を焼く
焼いた衣が乾いたら4を繰り返し、残り全ての面に衣をつけて焼く。
POINT:焼き色を付けないように注意。
◎御料理 山さき
東京都新宿区神楽坂4-2
福井ビル2F
☎03-3267-2310
18:00~20:00LO(完全予約制)
日曜、祝日休
各線飯田橋駅より徒歩8分
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。
(雑誌『料理通信』2019年4月号掲載)
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