プラントベースの始め方10
キャベツが一転、ビロードのような食感に。春キャベツのベルッタータ
「ヴェンティノーベ イン ボッティーリア」竹内悠介シェフ
2022.03.28
photographs by Hide Urabe
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれた人
群馬「29 in bottiglia(ヴェンティノーベ イン ボッティーリア)」竹内悠介シェフ
焦がさず、キャベツに汗をかかせる
「べルッタータ」はビロードのように滑らかな口当たりに仕立てたピュレ状のスープです。初めて食べたお客様は、「これがキャベツ!? 」とびっくりされます。バターも生クリームも入っていないとお伝えすると、さらに目を丸くして、2度驚かれますね。
材料はキャベツと塩とオリーブ油の3つ。作り方も蒸し煮にしてから、ハンドブレンダーで撹拌するだけのシンプルさです。
ベルッタータの味づくりで大切なのは、とにかく「焦がさないこと」。そのためには弱火でキャベツに汗をたくさんかいてもらいながら、その水分を無駄なく活用して蒸し煮にしていきます。火の当たりをまんべんなくするため、時々蓋を開けて混ぜますが、裏蓋についた水分を鍋に戻すことも大切。また開けたら、なるべく短い時間で混ぜ、焦げがないか確認して、すぐに蓋をするのも水分維持の小さなコツです。ちょっとでも焦げを見つけたら、すぐに取り除いてください。炒めた香りにしないためです。
後半はゆっくりやさしい甘味を引き出しつつ、その甘味を焦がさないように気を付けます。芯が指で簡単に潰せるくらいまで柔らかくなったら、ハンドブレンダー専用の細長い容器に移します。この時、キャベツを取り出した後の鍋底が茶色くなく、洗ったようにピカピカしていたら成功です。
ハンドブレンダーでキャベツの繊維を徹底的に消し、ビロードのような口当たりに仕上げると、イモにも似た膨らみのある味わいが出てきます。生のせん切りやロールキャベツでは感じたことのない、キャベツの全く違う一面が体験できます。
器に盛ってから、たっぷりの上質なオリーブ油をかけますが、調理の工程で使うオリーブ油の量はキャベツ半個に対して大さじ2のみ。満足感も高く、ヘルシーな一皿です。温かくても美味ですが、暑い時は冷たくしてもおいしいですよ。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 水分が多い春キャベツがベスト。
2 厚手の鍋と密閉性の高い蓋で、水分を逃さない。
3 絶対に焦がさない。少しでも焦げが見えたら除く。
「春キャベツのベルッタータ」の作り方
[材 料](3人分)
キャベツ(春キャベツではない時は、水を少量補って蒸し煮にする)・・・1/2個
E.V.オリーブ油・・・大さじ2
塩・・・適量
仕上げ
E.V.オリーブ油、黒コショウ・・・各適量
ルーコラの葉はお好みで。
(動物性食材を加える場合は、パルミジャーノのチップスを加えてもよい)
[道具のポイント]
ハンドブレンダー。鍋の中にそのままハンドブレンダーを入れても、キャベツが逃げて撹拌がしっかりできないため、付属の細い容器に移して行う。竹内シェフのブレンダーだと、3分半ほどでビロードのような食感に。メーカーによってパワーの差があるので、最終的な仕上がりは自身の舌で確認すること。
[1]キャベツを切る
キャベツは半分に切って芯を落とし、葉は1cm幅に、芯は8mm幅に切る。
[2]キャベツを投入してから着火
鍋にオリーブ油を入れて全体に広げる。キャベツを山盛りに入れ、塩をふたつまみふってから弱火にかける。
[3]キャベツに汗をかかせる
キャベツがしんなりするまでは、側面からヘラを入れて返し、熱がまんべんなく行き渡るようにする。
POINT:絶対に焦がさない。香りだけでなく、色も茶色っぽくなるので、焦げが見えたらすぐに除去。鍋底が常にピカピカな状態を維持する。
[4]細火で蒸し煮状態に
かさが2/3ほどになったら、蓋をする。細火に落として、全体に汗をかかせるように蒸し煮にする。
POINT:薄手の鍋は焦げやすいので、厚手の鍋を使用する。キャベツの水分だけで蒸し煮にするために密閉性の高い蓋を使い、水分を逃さない。
[5]焦げないよう、時々混ぜる
時々蓋を開けて、裏蓋の水滴をキャベツに戻して混ぜる。焦げたところがないか、匂いと目視で確認する。
[6]火を止める合図
芯を指で押してみて、すぐにムニッと潰れるくらいの柔らかさになったら、蒸し煮終了の合図。
[7]蒸し煮を終えた状態
最終的に、かさは半分ほどに減る。焦げたところがなく、全体にグリーンの状態で蒸し煮を終える。
[8]ハンドブレンダーで撹拌
細い容器にキャベツを移し、ハンドブレンダーを容器の中で上下させながら撹拌する。
[9]あとひと押しでビロードの食感に
2分程で繊維は消えたように見えるが、さらに撹拌し、ビロードのような食感になるまで続ける。
(雑誌『料理通信』2018年5月号掲載)
◎29 in bottiglia
Instagram: @trattoria29
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