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“食×SDGs” ウェビナー 開催レポート #3
「株式会社グッドテーブルズ」山本謙治さん × 「FARO(ファロ)」シェフパティシエ 加藤峰子さん

「プラントベース」で描くこれからの食
-植物と動物と人間の共存についての模索と提言-

Sdgs Apr. 1, 2021

text by Izumi Shibata / photographs by Hiyori Ikai(人物)

コロナ禍によって注目度が一気にアップした「プラントベース」。このセッションでは、農畜産物流通コンサルタントにして農と食のジャーナリストである山本謙治さんから世界におけるプラントベースをめぐる論点について、銀座「ファロ」シェフパティシエの加藤峰子さんは海外での経験やクリエイティビティという視点から、刺激的な話が展開されました。終盤、議論は国土の使い方や若い世代の意識へ。間近な未来を思い描く濃密な対談となったのでした。



「健康」「耐性菌」「環境負荷」がキーワード。

近年、世界で盛り上がりを見せている「プラントベース」。植物由来の食品を中心とした食事法を指します。
最もわかりやすい、そして代表的な例は「プラントベースドミート」つまり「植物性肉」でしょう。エンドウ豆や大豆などの高タンパク質の植物素材を主原料に、肉らしいテクスチャーやフレーバーに仕上げる植物性肉。将来的には肉代わりのタンパク源として存在感を示すようになると言われています。

「日本人にはまだ馴染みが薄いかもしれませんが、欧米ではプラントベースドミートのほか、プラントベースの卵液、チーズ、ミルクもめずらしい存在ではありません」と山本さん。


2019年に立ち上げたオンラインメディア「エシカルはおいしい!!」で、プラントベースに関わる世界各地の動向を逸早く伝えている。

セッションではまず山本さんが、特に畜産物の代替としてのプラントベースに関して、世界で今どのような議論がなされているのかを解説しました。キーワードは「健康」「耐性菌」「環境負荷」です。

最初のキーワード「健康」について。プラントベースドミートが登場した際、多くの人がまず気にしたのは「肉より身体に良いのか?」でした。「プラントベースドミートはまだ新しい分野なので、長期にわたる臨床研究ができていません。ただ、畜産に関してはすでに多くの研究で、摂取量が多くなるほど大腸ガンなどの罹患リスクが高まることが指摘されています。ですから現状でプラントベースが健康に資するタンパク源になることが期待されています」

次のキーワードは「耐性菌」。
「現在、世界では工業型・集約型の畜産が主流となっています。このスタイルで問題視されるのは、耐性菌の発現の温床になっているのでは、という点。工業型畜産業では、狭い場所に多くの家畜を入れるなど、家畜の健康よりも効率を重視した飼育が行われています。となると、病気の発生を抑えるために殺菌剤や抗菌剤を与え続けることが必須。そんなあり方が、殺菌剤や抗菌剤に耐性のある未知の菌――まさにコロナウィルスのような耐性菌――の発現に寄与しているのではないか、と指摘されているのです」

実際、WHOはすでに世界各国に、病気予防のための抗菌剤を餌に混ぜ込むのをやめるよう勧告を出しているといいます。「その結果、家畜は病気になる確率が増え、生産効率は落ちるでしょう。畜産物の値段は高騰するはず」。今までのような効率一辺倒の畜産から脱却し、生産量が下がった分はプラントベースが補う。そんな役割が期待されています。

そして最後のキーワードは「環境負荷」です。プラントベースは、従来の畜産業に比べて環境負荷が低いという点でも注目を集めています。
「ある試算によると、『人間が排出するCO2のうち、畜産業は14.5%を占めている(餌を作る、運ぶなどの工程も含めた場合)』。畜産品の生産は、食品の中では環境負荷が高く、なかでも突出しているのが畜肉、これに酪農が続きます」

このように「健康」「耐性菌」「環境負荷」の3点いずれにおいても、プラントベースを推進すべき状況が揃っていることは間違いありません。が、山本さんは「畜産や肉食のすべてが悪いわけではない」と言います。「問題は、現在主流となっている工業的畜産です。循環型で環境負荷が低く、アニマルウェルフェアなどにも配慮した畜産システムを構築した上で、適正量を食べるということが重要です」
さらに、プラントベースドミートについても注意すべき点があるという発言もありました。
「欧米で問題視されているのが、ブラジルなどでプラントベースを推進するあまり、森林を伐採して大豆畑などにしてしまう、環境破壊です。これでは意味がありません。どんな『肉』であっても、生産段階に配慮することが大事です。そして、畜肉とプラントベースドミート、培養肉などをバランス良く食べるということが必要になってくるのかもしれません」



植物精肉、培養肉、培養チキン、肉税、ミートフリーなど、畜産をめぐる最先端のワードが頻出する。

今、私たちが置かれている状況のなかでプラントベースはどんな役割を果たすことができるか、そしてどんなプラントベースを選ぶべきか、視野を広げて見ることが大切では、と山本さんは提言します。



クリエイティビティの新ジャンル

山本さんからバトンを受け継いだ加藤さんは、クリエイターとしての視点からプラントベースについて語りました。

2018年の「ファロ」リニューアルオープンに伴ってシェフパティシエに就任するまで、イタリアで長く活躍してきた加藤さん。「オステリア・フランチェスカーナ」のマッシモ・ボットゥーラなど、世界トップクラスの創造性を持つシェフたちのもとで働いてきました。


中学はイギリスで、高校からはイタリアで暮らした。持って生まれたしなやかな感性と海外のシェフたちとの仕事で培われた先進的な感覚が光る。

加藤さんが作るデザートの魅力は、造形性とメッセージ性を併せ持ち、かつ風味に富んでいること。産地を訪れた際に感じとった自然の豊かさが表現されている点も印象的です。

「ファロ」では、日本のガストロノミーレストランではめずらしくヴィーガンメニューを用意しています。プラントベースのチーズも提供されるという充実ぶり。プラントベースのデザートに取り組む時、加藤さんは制約を感じたことはないと話します。 「むしろ、プラントベースの追求はクリエイティブです。自分でゼロから作ることができますから。植物性でさえあれば、野菜、フルーツ、ミルク、調味料など好きに使える。これらを用い、時に蒸留したり、混ぜ合わせたり、乾燥させたりしながら、新しい風味やテクスチャーを作り出すのは刺激的です。海外のシェフたちはプラントベースを追求することを楽しんでいますね」


photograph by Masaharu Hatta
今年1~2月「ファロ」では高野山とのコラボレーションによるヴィーガンコースを提供。準備にあたりエグゼクティブシェフの能田耕太郎さんや加藤さんは高野山を訪ねた。


photograph by Masaharu Hatta
高野山の森にインスパイアされて加藤さんが生み出したデザート。ビジュアルばかりでなく実際に高野山の木を使っている。

プラントベースについて、加藤さんはこう考えます。「プラントベースは哲学だと思います。『何を食べればよいか』『何を食べるのが最良か』を自ら選びとる、ポジティブな思考なのです」

クリエイティブの世界におけるプラントベースは、「何かの代替」ではなく、「新しいジャンルの開拓」。そんなバイタリティと可能性を、加藤さんの言葉から感じることができます。



プラントベースから考える日本のグランドデザイン。

日本におけるプラントベースの現状はどうなっているのでしょうか。

加藤さんいわく、「イタリアではどんなスーパー、それこそ格安スーパーであっても、プラントベース専門のエリアが設けられています。それと比べると、日本は植物性の素材に対する意識はまだまだ低いと感じます」。山本さんも、「日本のプラントベース市場は世界から見ると相当遅れています」

日本がプラントベースに取り組むにあたり、避けて通ることのできない課題が原材料の自給率の低さ、と山本さんは指摘します。
「日本では、大豆の自給率が6%、豆類全体では7%、小麦は12%しかありません。今のままでは、日本のプラントベースの材料の大半は輸入品となり、輸送中に大量のCO2を空気中に排出することになる。先にも話した通り、世界では今、大豆の栽培地確保のために森林が大規模伐採されることが問題視されていますが、日本のプラントベースは、こうした他国の環境の犠牲の上に成り立たざるを得ない」


プラントベースに象徴される食の課題について語り合う。

この現状を打破するには、改めて日本の食のグランドデザイン――日本の国土でどのような食材を、どこで、どれくらい飼育・栽培するかという、長期的かつ大きな設計図――を描き直すことが重要となります。

「新しい食のグランドデザインを描く際にひとつ言えるのは、大豆や小麦の自給率を上げる必要があるということ。また、山地酪農や放牧のような循環型の畜産システムの割合を増やすこと。今、こうした山地や牧野で行われる畜産や酪農は、日本では5%にも達しません。もちろん、循環型でアニマルウェルフェアに配慮した畜産を推進すれば、生産量は今より減少し、また価格も高くなるでしょう。でも、それを受容することが社会全体に求められていると思います」

世界でプラントベースが盛り上がりを見せている今こそ、日本の畜産業における問題点と解決策について学んでほしい。そのタイミングに来ているのではないか――。日本の食の未来を考えた場合、「プラントベース」という視点は、様々な課題や解決策を浮き彫りにしてくれるのです。

そして、加藤さんは、日本でプラントベースを推進する担い手として、いわゆるZ世代――1990年代後半以降に生まれた若い層――に期待すると言います。加藤さんのプロデュースによるヴィーガンパフェを資生堂バーラーのサロン・ド・カフェでメニューにのせたところ、このパフェを選ぶほとんどがZ世代をはじめとする若い人たちだったそうです。


資生堂パーラーのサロン・ド・カフェで提供されたヴィーガンパフェ。ショコラとフランボワーズとローズのフレーバー。

「彼らは既存の価値観に執着せず、自分たちで情報を集め、環境問題や社会問題について調べる。その上で自分の行動を決める聡明な世代です」と加藤さん。「自分たちが食べているものについて好奇心を持って知り、何を食べるかを選択することは、どのような未来をつくっていくかへの投票と言えます。食に関しても、より環境負荷が低く、社会的に意義のある選択をする。そんな彼らに希望を持っています」



こちらは、本トークセッションをご覧になりたい方のためのアーカイブ動画となります。セッションの様子の録画・録音やスクリーンショット、および登壇者によるプレゼンテーション資料の無断転用は固くお断りいたします。





◎エシカルはおいしい!! あなたが食べるもので世界は変わる
https://www.ethicalfood.online/

◎銀座「FARO(ファロ)」
東京都中央区銀座8-8-3
☎03-3572-3911
12:00~13:30LO、18:00~20:30LO
日曜・月曜定休
東京メトロ銀座駅から徒歩7分
JR新橋駅から徒歩5分
https://faro.shiseido.co.jp/

*営業時間が急遽変更になる場合がございます。詳しくは公式ウェブサイトをご覧ください。





国連が、世界各国の報道機関とエンターテイメント企業を対象に発足させた「SDGメディア・コンパクト」は、SDGsに対する認識を高め、さらなる行動の活性化を支援することを目的としています。
料理通信社は「SDGメディア・コンパクト」の加盟メディアとして、今後より一層、食の領域と深く関わるSDGs達成に寄与するメディア活動を続けて参ります。













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