【特集】シェフが証言!見えないところで差がつく油「マルホン 太白胡麻油」をめぐる旅
2023.12.18
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text by Kyoko Kita / photographs by Masahiro Goda, Daisuke Nakajima(Comme’N)
乳脂肪でマスキングせず、香りの余韻を引き延ばす
柴田勇作シェフが優勝した2つの国際大会で使用したのが、徳島県の特産品である木頭(きとう)ゆずだ。「木頭は日本の柚子栽培の発祥の地。今でも丁寧に良いものを作り続けています。僕ができるのはお菓子を通じて、そのすばらしさを伝えていくことです」
「柚子は香りの食材」と考える柴田シェフ。お菓子にする上で意識しているのは「余韻」だ。「飲み込む時に鼻から抜ける柚子の香り。その余韻が長いほど、『柚子を食べた!』という印象が強くなるように思います」
そこで力を発揮するのが太白胡麻油だ。洋菓子によく使われるバターや生クリームなどの乳脂肪は、素材の香りをマスキングしてしまう傾向がある。その点、太白胡麻油は「味も香りもなくクリアなので、柚子の香りをストレートに品良く映し出すことができます。テクスチャーも滑らかなので、乳化しやすい。しっかり乳化できると、口溶けが良くなり、香りもさらに広がりやすくなります」。
クリーム、コンフィチュール、パウンド生地、それぞれのパーツに忍ばせた柚子の香りが時間差で弾け、食べ終わってからもその余韻に包まれる。以前から、師匠に倣って何気なく太白胡麻油を使ってきたという柴田シェフだが、木頭ゆずと出会ったことで、その魅力を再認識している。
「なぜだかわからないけど、食べやすい」パンの理由
町で愛される昔ながらのパン屋に生まれ、ふわっと軽い菓子パンに囲まれて育った大澤秀一シェフ。「コム・ン トウキョウ」にはガシッと火入れしたハード系のパンが多く並ぶが、どれをとっても、不思議と食べやすい。それは大澤シェフが、自身をはじめ日本人の慣れ親しんだおいしさを大切にしているからだ。
特徴的なのが、クラスト(皮)。「引きがなくて、脆いんです。だからストレスなく一口サイズにちぎれるし、サンドイッチにしても具材と一緒に嚙み切れる。最中の皮のようにパリッと割れてポロッと崩れる、そんなイメージですね」
その食感を生み出すのが、通常、製パン材料としてはあまり使われることがない太白胡麻油だ。
「最初はアレルギー対応としてバターの代わりに使ってみたんです。しかし実際に焼いてみると、しっかり練ってボリュームを出しても、皮が厚くならず、脆く仕上がることがわかってきました」
世界大会で作ったブリオッシュも、通常加えるバターの半量を太白胡麻油にした。「従来のブリオッシュとは少し違い、口溶けが滑らかでカステラに近い食感に焼き上がります」
「使う材料や作り方について、こうあるべきというこだわりはありません」と話す大澤シェフ。どんな年齢の人が食べてもおいしいと感じる味わいと食感を目指し、太白胡麻油使いの探究は続く。
おいしさはそのままに、作業性も食べ心地も今の時代にフィット!
おいしくて大好きなのに、歳を重ねたら体に合わなくなってきた。そんな食べ物はないだろうか。渡辺麻紀さんにとって、そのひとつがキッシュだった。「以前は生地にバターや生クリームをたっぷり使ったオーソドックスなレシピで作っていました。でも最近、それが重く感じるようになってしまって・・・」。では、生地を薄くすればよいかというと、そうではないという。「キッシュは生地とアパレイユ(卵液)と具材のバランスで三位一体となります。生地には、アパレイユと具材を支える厚みと風味が必要だと思うんです」。悩む中で、太白胡麻油を手に取った渡辺さん。
試作を繰り返していると、面白い発見があった。バターで作る時は、工程ごとに生地を休ませる必要があるのだが、太白胡麻油ではそれが不要だったのだ。「太白胡麻油に替えてみたら、時間も手間も3分の1くらいで済むことに気づいたんです。パート・ブリゼ(‟砕けた生地“の意)らしい、ザクザクホロホロとした食感もしっかり表現できました」
そして食べ心地も、驚くほど軽かった。「たくさん食べても全然もたれないんです。しかも、下焼きした生地は室温で1~2日経っても、動物性油脂にありがちな酸化臭が全くしません。時短になって食べ心地が軽く、作り置きできておいしさもキープできる。太白胡麻油で作るキッシュは、今の時代にとても合っていると思います」
「味も香りも個性がない」という、最強の個性を持った太白胡麻油。しかし目立たないことだけが、魅力ではないようだ。素材を生かすまっさらなキャンバスとなりつつ、実は使い手のクリエイティビティを刺激し、自在な表現をも可能にしていた。8人のシェフによる証言以外にも、まだまだ秘めた可能性があるに違いない。それを発見するのは、あなたかもしれない。
◎マルホン胡麻油公式サイト
https://www.gomaabura.jp/
(注釈)
※太白は竹本油脂の登録商標です
◎賛否両論
https://www.sanpi-ryoron.com/
◎フロリレージュ
https://www.aoyama-florilege.jp/
◎清壽
東京都中央区築地3−16−9 アーバンメイツビルB1F
☎ 03-3546-2622
◎PRISM LAB
2024年2月OPEN予定
徳島県徳島市万代町5−71−6 アクアチッタ内
@prism0202
◎コム・ン トウキョウ
https://commen.jp/
◎料理家・渡辺麻紀さん
@watanabemaki_makiette