米国人すしシェフの躍進が止まらない!グランドセントラル駅隣接のおまかせカウンター
America [New York]
2024.03.21
text by Akiko Katayama
(写真)おまかせすし店「コーラル」の前菜よりニジマスの一品。和洋の美しさを自然に融合させた盛り付けも印象的。
すしはすっかり米国食文化の一部となり、和の伝統を理解し、優れたすしを提供する米国人シェフも最近目立つ。その1人が、2023年10月にオープンした「コーラル(Coral:珊瑚)」の料理長ロビー・クック氏だ。
米国では1993年、ケーブルテレビ局「フード・ネットワーク」の開局を契機に、“料理”が急速に注目を集めるようになった。そんな中で育ったアイオワ州出身の氏は、メディアで見るシェフの活躍に喚起され、ことに関心があったすしを学ぶためにカリフォルニア州のすし専門学校に入学。卒業後、ニューヨークの調理師学校で料理全般を学び、定評ある「ボンド・ストリート(BondST)」で修業を積んだ。2006年、森本正治氏の「モリモト(MORIMOTO)」ニューヨーク店開店と同時に同店に移り、やがて氏の右腕として活躍。氏が「銀座でもきちんとすしを出せる」と太鼓判を押すほどの実績を上げた。
コーラルのメニューはおまかせ1本。モリモト時代に築いた人脈を生かして豊洲市場から仕入れた魚を使い、江戸前すしの伝統を礎に、様々な工夫を凝らした17品(275ドル)を楽しませる。
たとえば前菜のニジマス。冬にはリンゴの木で軽くスモークし、土佐酢と梅風味のゼリー、黒トリュフを添えて、旬を映した豊かな味わいを生み出す。「燻しに使う木は適宜入れ替え、季節の移り変わりを伝えます」とクック氏。一方キンメダイの握りには、甘味のある佐渡の塩と酸味にメリハリのあるライムを組み合わせて魚の旨味を引き立てるなど、氏が培ってきた独自のセンスを繊細に加える。
日本各地の郷土料理に見られるように、すしはそもそも地元の文化を反映させた食べもの。米国というダイナミックな土地で、すしを真摯に進化させる職人たちの活躍が、今後ますます期待できそうだ。
◎Coral
200 Park Ave, New York, NY 10166
https://www.coralomakase.com/
*1ドル=150 円(2024 年3月時点)