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JOURNAL / 世界の食トレンド

キノコの世界へようこそ 科学から衣類、建築にまで広がる菌類の可能性を知る

Sweden [Stockholm]

2023.12.11

text & photographs by Sakiko Jin
(写真)キノコにまつわるユニークな特別展「Fungi」に展示された、アーティスト、ビョーク(Björk)の2022のアルバム「Fossora」に合わせて作られた衣装。自然からインスピレーションを受けることが多いというデザイナーのダニエル・デル・コア(Daniel Del Core)によるキノコ、カビ、苔のミューテーション(突然変異)を彼なりに解釈したドレスと、ダーヴィッド・オーベリィ(David Åberg)が手掛けた3Dプリントのマスク。

ストックホルムにある「ノーベル賞博物館(NOBEL PRIZE MUSEUM)」では、ノーベル賞受賞者の研究の様子や輝かしい功績を常設展示で垣間見ることができるが、2023年9月から始まった特別展示「菌類 アートと科学におけるキノコ(Fungi―In Art and Science)」が、一風変わっていると話題になっている。

植物でもなければ動物でもない菌類だが、それらのどちらとも共生しており、環境次第では雌にも雄にもなりうるという。生誕の起源や、どうしたら菌糸が何百メートルもの地下に生息し繁殖できるのかなど、菌類は長きに渡って人間を魅了してきた。

酵母がパンやビールなどの食品形成の重要な鍵を握るように、伝統食品や飲料のほとんどが菌の持つ発酵力によりその味や保存性を高めている。また我々の日常生活は、抗生物質や各種ワクチンなど、菌がもたらすバイオテクノロジーの結果から成立っていると言っても過言ではない。


(写真)カールステン・ヘラー(Carsten Höller)による様々なキノコのオブジェ。菌類や菌糸を肉眼で見ることは稀だが、菌糸の塊が地上に出てきたものが、いわゆる私達が呼んでいる“キノコ”だ。

今回の展示では、菌類の使用範囲を科学研究の視野からデザインやファッション、建築などの範囲に渡って紹介している。また、近未来における菌の効用性にも注目を当てている。菌が持つ分解能力によって、余剰食品の廃棄物が建築素材やプラスチック、テキスタイルや革の代わりになり得る可能性が大だからだ。

(写真) スペインのメゾン「バレンシアガ」が2022年冬コレクションで発表した、ミセリウム(菌糸体)をベースとした代替皮革EPHEA™で作られたユニークなコート。

2018年にノーベル文学賞を受賞したオルガ・トカルチュクは大のキノコ好きで、「人間でなかったらキノコになりたい」と語るほど。キノコのレシピや毒キノコが書かれている小説『昼の家、夜の家』(日本語訳:白水社刊)にも展示を通して触れることができる。

近年の科学的発見で、微細な地下ネットワークがどのように生態系と絡み合い、私たちの世界を形作っているかが示されてきた菌類。まだまだ謎だらけで面白い菌類の展示は、1日があっという間に過ぎるくらい興味深い。

(写真)ミセリウム(菌糸体)の介助を経て、農産物の生産過程で生じる余剰食材や廃棄物がエコフレンドリーで値段も手頃な建築素材へと生まれ変わる。

(写真)座面がミセリウムで作られた椅子。

(写真)アマンダ・セリンダー(Amanda Selinder)による菌類のピグメント(色素)が合成染料の代わりになるかどうかの実験。



◎NOBEL PRIZE MUSEUM
Fungi – In Art and Science
会期:2023年9月30日~2024年1月7日
11:00~17:00(金曜~20:00) 月曜休
大人 140スウェーデンクローナ
学生・年金受給者 100スウェーデンクローナ
18歳以下・会員 無料
https://nobelprizemuseum.se/fungi-svampar-i-konst-och-vetenskap/

*1スウェーデンクローナ=14.2円(2023年12月時点)

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