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PEOPLE / 寄稿者連載

空間づくりは、“愉快なおせっかい”から始まる?

東野華南子さん連載 「暮らしを創る、店づくり ―いい空間て、なんだろう― 」第5回 

2021.02.22

PEOPLE / LIFE INNOVATOR

連載:東野華南子さん連載

「健やかな精神は、健やかな体に宿る」
と言うけれど、もっと言うと、
健やかな店は、健やかな店主の家族に宿る。
なんとなく、そんな風に思っています。

だから、松本にある本屋あるいは喫茶店である「栞日」を移転するので改装してほしい、と4年前にそう依頼をもらって打ち合わせをして、真っ先に着工したのは、クライアントの自宅キッチンの改装でした。


打ち合わせ、のなかで気づいたこと

同い年のオーナーが営むそのお店は、朝から夜まで開いていて、
オーナーはほぼ一日(そして営業後も)ずっと店にいるような生活。
奥さんが二人の子供の面倒を見て、家のこともこなしながら店で焼き菓子を仕込む、
という状況でした。

私達が依頼をもらったのは移転に伴う改装で、
それまでよりも店舗が大きくなることも踏まえ、
オーナー夫妻と打ち合わせを重ねました。

そうして打ち合わせを重ねていくなかで気づいたのは、
「奥さんがなんとなく不安そう」ということ。

「そんなこといって、家のほうもやってよ」
「全然キッチンつくってくれないから大変なんです」

産まれたばかりの赤ちゃんをおんぶに抱っこにしながら
奥さんが冗談のように話すのを見て、
このプロジェクトはここから始めなきゃいけないなぁ、と思ったのでした。

なので、このプロへジェクトの最初の課題を、
「奥さんが快く、オーナーである旦那さんを応援できる環境をつくる」ことにシフト。 店の打ち合わせをしながら合わせて、
店舗のキッチンの改装の打ち合わせもスタートしました。
着工してすぐに、自宅にお邪魔して1~2日でささっと改装。
奥さんが、家事をしやすい環境づくりのお手伝いをさせてもらい、
さて次はお店だ!と舵を切り直したのです。


改装後のオーナー夫妻のキッチン。


店づくりの先に繋がる、家族の暮らし

もちろん、全てのプロジェクトでそこまで踏み込んでいけるわけではないけれど、
だからこそ、自分たちに出来ることがあるかも、という可能性と遭遇しちゃったら、
そこにはきちんとアプローチしたい。
時にそんなとんでもないおせっかいも含めて、
受け入れてくれる関係性を築いてくれるクライアントに恵まれてきたおかげで、
空間づくりを楽しく続けられているのだよな。ありがたいです。

いい空間をつくる。
そのために、店主が思いっきり頑張れる状況をつくること。
そして、家族が店主を応援できる心持ちでいられるサポートをすること。
こんなふうに個人の事情が見事に店舗に反映される店づくりは、
やっぱりすんごく面白い。
これからも私達らしい空間づくり、として「愉快なおせっかい」を
取り入れていきたいなと思います。



移転改装後の「栞日」。





東野 華南子(あずの・かなこ)
1986年埼玉生まれ。中央大学文学部を卒業し、カフェで店長、ゲストハウスでの女将経験を経て、2014年よりフリーランスデザイナーだった夫・東野唯史氏とともに「medicala」として空間デザインユニットとしての活動をスタートする。15年に新婚旅行で訪れたポートランドのDIYの聖地とも言われる古材住宅資材販売ショップ「ReBulding Center」に感銘を受け、名称の使用許可を得て、16年に同名にて店をオープン。代表取締役は唯史氏。リサイクルショップとしてだけではなく、「REBUILD NEW CULTURE」を信念に掲げ、捨てられていくものや忘れられていく文化を見つめ直し、人々の生活を再び豊かにする仕組みを作るチームを目指す。
http://rebuildingcenter.jp/





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