温めて、めぐりを良くする【冬の薬膳/生涯現役レシピ】
2022.12.19
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:生涯現役レシピ
生涯現役の秘訣は食にあります。体調に合わせて食材を選び、食事で身体の調子を整える習慣が、健康寿命を延ばします。食材の機能を生かす薬膳の知恵に着目し、薬膳料理家の村岡奈弥さんから冬に食べたいシニアミールを教わりました。
目次
- ■温めて、めぐりを良くする冬の薬膳
- ■体を温めて気と血のめぐりを促す「自家製 醤(ジャン)」
- ■体を温め、血のめぐりを良くする「ラム、小松菜、黒キクラゲの炒めもの」
- ■内臓の働きを良くして、気力・体力を養う「豚ロースの薄切り肉とブロッコリーの蒸しもの」
温めて、めぐりを良くする冬の薬膳
薬膳(中医学)では、内臓を「心」「肝」「脾」「肺」「腎」の5グループに分けて考えます。心は循環器系、肝は血液系、脾は消化器系、肺は呼吸器系、腎は生殖器系・泌尿器系を指します。互いに関係し合って機能するものですが、シニアミールを考える上で大切にしたいのが腎です。
腎は成長や生育を司り、水分代謝と深い関わりのある器官群で、生命エネルギーの貯蔵庫と称されます。腎の機能低下は生命力の低下につながると言えるでしょう。
そこで今回は、腎を温めて体液のめぐりを良くする料理をご紹介します。年を取るにつれ、体液は減り、みずみずしさが失われます。冬場は乾燥しますので、いっそう体液のめぐりを良くするようにと意識しました。
年を取ると、料理するのが億劫になりがちなだけに、お勧めしたいのが、ニンニク、ショウガ、酢など体を温めたり、めぐりを良くする食材で作る醤(ジャン)の作り置きです。ストックしておけば、レンジや蒸し器で加熱した野菜や肉にかけたり、炒めものの調味に使ったりと、様々に活用できます。
体を温めて気と血のめぐりを促す「自家製 醤(ジャン)」
【材料】(約200ml)
醤油・・・45ml
黒酢・・・60ml
日本酒・・・45ml
みりん・・・大さじ2~3
三温糖・・・大さじ2~3
ニンニク・・・3片
ショウガ・・・3片
丁子・・・3本
クミン・・・小さじ1/4~ 1/2
【作り方】
[1]ニンニクは横に2等分する。ショウガは皮を剥いて繊維を 断ち切るように薄切りにする。
[2]小鍋にすべての材料を入れて、弱火にかける。
[3]ゆっくり煮詰めていき、細かい泡が吹いてきたら、火を止める。
[4]冷蔵庫で10日間は持つので、多めに作ってストックしておくと便利。
体を温め、血のめぐりを良くする「ラム、小松菜、黒キクラゲの炒めもの」
【材料】(2人分)
ラムロース肉(約5mm厚)・・・100g
小松菜・・・4株
黒キクラゲ・・・ 3~4枚
オリーブ油・・・適量
塩・・・適量
醤(ジャン)・・・適量
【作り方】
[1] 黒キクラゲを水で戻す。小松菜は5cm長さに切る。
[2] 中華鍋にオリーブ油を流し入れて熱する。ほんの少量の塩を振り入れてから、小松菜を硬い茎の部分から投入し、炒める。火が通りにくければ、少量の湯を注ぐとよい。
[3] 黒キクラゲを加えてさらに炒め、 火が通ったら、バットに取り出す。
[4] 空になった中華鍋にオリーブ油を流し入れて、ラム肉を炒める。
[5] 醤を回しかけてから、小松菜と黒キクラゲを鍋に戻し、さっと合わせて、器に取り出す。
【薬膳のポイント】
●ラム
体を温め、気力を補い、疲労回復。足腰の冷えの改善に役立つ。
●小松菜
血を補う。免疫力の向上、美肌効果も高い。
●黒キクラゲ
腎を補い、血を補う。足腰の無力感を解消したり、腸の働きを整える効果がある。
内臓の働きを良くして、気力・体力を養う「豚ロースの薄切り肉とブロッコリーの蒸しもの」
【材料】(2人分)
豚ロース肉(薄切り)・・・100g
ブロッコリー・・・1/2 株
マイタケ・・・1パック
ユズの皮・・・少量
醤(ジャン)・・・適量
【作り方】
[1] ブロッコリーとマイタケは ひと口大にカットする。ユズの皮は針状に切る。
[2] 蒸篭にクッキングペーパーを敷き、 豚肉、ブロッコリー、マイタケを置いて、 豚肉の色が変わるまで蒸す。ブロッコリーが柔らかくなり過ぎないように。
POINT:豚肉は軽く塩をふり、日本酒を揉み込んでから蒸すと、よりおいしい。
[3] 器に盛り付け、好みの量の醤を回しかける。
【薬膳のポイント】
●豚肉
体に潤いを与え、肌の乾燥、喉の渇き、空咳にもよい。気と血も補う。
●ブロッコリー
消化器の機能を高めながら、精をつける。五臓全般の機能向上によく、虚弱解消に効果的。
●マイタケ
五臓の機能を高める。エネルギーを補い、抵抗力や免疫力を高める。疲労回復、虚弱体質の改善に。
(雑誌『料理通信』2018年12月号掲載)
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