【食のプロの台所】懐かしさと質実が同居する
「北川ベーカリー」主宰 北川桂
2026.08.13
text by Noriko Horikoshi / photographs by Hiroaki Ishii
連載:食のプロの台所
台所は暮らしの中心を占める大切な場所。使い手の数だけ、台所のありようがあり、その人の知恵と工夫が詰まっています。「古い家の味わいは壊さず、使いやすく」とリノベーションをオーダーした古民家で、粉にまみれてパンを焼く。店舗を持たないベーカリーを営む北川桂さんのキッチンを訪ねました。
北川 桂
自宅兼工房で卵・乳製品不使用、南部小麦でパンを作る「北川ベーカリー」主宰。店舗を持たず、自宅(完全予約制)と契約店、イベントなどで販売する。パン作りの先輩でもある夫、愛娘の葉ちゃんの3人家族。
Instagram:@kitagawapanya
(TOP写真)
自然光がたっぷり射し込む大きめの窓、明かり取りのチェッカーガラスなど、建具にも昭和テイストがにじむ。爽やかなグリーンのタイル貼りの壁は、ご主人の力作。台所は、一人娘の葉ちゃんとの語らいの場でもある。
“昭和テイスト”をにじませて
この空気には覚えがある。たとえば、まだ小学校が週5日制でなかった頃、半ドンでお腹を空かせて帰り着いた土曜の昼の台所のような。「昭和っぽい? よく言われます。木を多く使っているからかも。好きなんです。色味とか風合とか手ざわりの温かさが」
築50年以上の平屋住宅を改築。設計を担当したのは、「カモシカ」や「foodmood」など、木造民家をリノベーションした店舗デザインを多く手掛ける建築家の井田耕市さん。台所のリフォームに際しては、「とにかく使いやすく。でも古い家の味わいは壊さずに」とだけ注文した。
床材は、安価なラワン材にクリア塗装をかけただけのもの。無垢材にはない柔らかさが、素足での暮らしに心地よくなじむ。家族のためのパン生地をこね、粉まみれになることも多い場所だけに、「こまめに水拭きできる掃除のしやすさも気に入っています」と桂さん。
故郷の会津で買い集めた竹やマタタビ細工の編みカゴは、食器やリネン、野菜、乾物の物入れに。どっぷり民芸調の水屋になりそうな一歩手前で、キリッと景色を引き締めているのが、ハーマン製のガステーブルやステンレスの作業台だ。それぞれ対照的な質感に見えて、ベクトルは共通している。懐かしさと、質実と。「北川ベーカリー」のパンそのものにも思える。
(雑誌『料理通信』2017年10月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
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