RECIPE

豚バラ肉を茹でた煮汁で、米を炊く

「荒井商店」の豚バラの炊き込みごはん

レスキューレシピ【豚肉編】

2022.08.04

レスキューレシピ

photographs by Masahiro Goda

日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にせず活用するレシピをシェフに教わります。今回のテーマは「豚肉」。バラ肉から出た脂や煮汁を味づくりに生かす、豚肉活用術をペルー料理に学びます。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況（令和元年度）」

教えてくれたシェフ：東京・新橋「荒井商店」荒井隆宏シェフ

ペルー料理専門店「荒井商店」オーナーシェフ。1974年横浜生まれ。「オテル・ドゥ・ミクニ」「ザ・ロード・アンド・ザ・スカイ」を経て、2003年ペルーへ。現地のレストランなどで修業した後、2005年東京・新橋に現店開店。ペルーをはじめラテンアメリカの食文化を伝える。著書に『ちょいラテンごはん』（イマージュ）、『荒井隆宏のペルー料理』（柴田書店）がある。

肉は焼き過ぎない、煮過ぎない

ぐっと濃いコクのある豚バラ肉の旨味、穏やかながら後追いでじわじわくる辛味。ペルー仕立ての炊き込みご飯「アロス・コン・チャンチョ」は和食のようなほっとする味ではなく、ボリュームのある骨太な味わいが魅力です。

ぺルーは日本と同じ米食文化。肉や魚介を具にする炊き込みご飯は多く、豚、鶏、鴨などいろんなバージョンがあります。肉によって味付けを変えますが、豚バラ肉の場合は、甘くこっくりした脂身の旨味とバランスをとって、刺すような鋭い辛味でなく、後から静かにくる辛味をメインにします。今回はアヒアマリージョという黄色い唐辛子を使いました。最初はマイルドですが、後からじわじわ増す辛味が豚バラ肉と相性がいい。加熱すると辛味が増すので、最初にニンニクと一緒に炒めます。

豚バラ肉は脂が多く、そのまま炊き込むと少しギトギトになります。だから一度焼き色をつけて余分な脂を落とします。ただ、焼き過ぎると硬くなるので濃い焦げ色まで付ける必要はありません。軽く焼き色が付き、豚肉からジュワジュワと脂が出てきたら引き上げて、余分な脂を捨てます。脂を少し残して香味野菜を炒めたらビールでコクをプラス。現地ではチチャ・デ・ホラというトウモロコシの醸造酒を使います。肉が軟らかくなるし、甘味とコクが出る。パクチーペーストはペースト状の香菜に塩を加えたペルーの調味料。少量加えて肉の獣臭さを消します。

豚肉を煮る時間は、沸騰してから約５分。長く煮ると肉が硬く締まってしまいます。これぐらいでも十分だしは出ます。後はできたスープで米を炊くだけ。特別なだしは不要です。シンプルなレシピですが、食べ応えもあって、クセになる味わいですよ。

「豚バラの炊き込みごはん（アロス・コン・チャンチョ）」材料と作り方

【材料】（４人分）
豚バラ肉（ブロック）・・・400g
ニンニク（すりおろし）・・・１片
アヒアマリージョ（ペースト）・・・小さじ１
タマネギ（粗みじん切り）・・・150g
ビール・・・100ml
パクチーペースト・・・大さじ１
水・・・1000ml
長粒米・・・２カップ
ミックスベジタブル・・・80g
塩、コショウ・・・各適量
オリーブ油・・・適量