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DINING OUT ARITA& with LEXUS

3日間限りのプレミアムな野外レストランバックストーリー

Feature / MovementNov. 21, 2016

photographs by Hide Urabe

日本各地に息づく自然や伝統文化の魅力を“期間限定のプレミアムな野外レストラン”として提示するプロジェクト、「DINING OUT」。
2016年10月8~10日、佐賀県・唐津市の名護屋城跡で開催された「DINING OUT ARITA& with LEXUS」は、パリで絶大な支持を得ている渥美創太シェフ、同じくパリにギャラリーショップを設けて日本文化の21世紀的価値創造に取り組む丸若裕俊さん、世界各地の酒造りの現場をフィールドワークしながら現代の食卓に寄り添うドリンクのあり方を提示するソムリエの大越基裕さんらが結集。若き才能が炸裂しました。


「黒イチジクの濃厚さに驚き、桐岡ナスのテクスチャーに惚れ込み、とにかくどの食材も力強くて個性的で魅力的でした」と渥美シェフ。




過去を見つめ、未来を拓く役割を、若き才能に託す




9回目を数える今回のテーマは<Re-spect>。有田焼400年の歴史とその源流を辿り、先人の知恵や想いを器と料理で今に表現しようとの狙いです。
「リスペクト」と言えば、ご存じのように「尊敬」や「敬意を表す」といった意味で使われますが、「過去を(re)見つめ直す(spect)」が原義。源流を振り返り、伝統に敬意を表し、その遺産を見つめ直した上で、未来を見定めていく――その役割を、総合プロデューサーである大類知樹さんは若い才能に託しました。

料理を担当した渥美創太シェフはまだ30歳。パリ11区にあるビストロ「クラウンバー」のシェフとして、今、パリでもとりわけ評判を集める存在です。今年の3月には、「The New York Times」の記事「Japanese Chefs Make Their Mark in Paris」の中で取り上げられ、話題になりました。
前回のDINING OUT ONOMICHIにシェフ6人衆の1人として参加したところを大類さんに見初められて、今回の起用に。その場の状況や食材のコンディションに合わせて、臨機応変に、大胆に料理を変えていく柔軟な発想、それを成し得る技術力とセンスに惚れ込んでのことでした。


渥美創太シェフ。辻調フランス校を卒業後、ロアンヌの「トロワグロ」、パリ「ステラマリス」、ジョエル・ロブション研究所、「TOYO」などを経て、12年より「ヴィヴァン」シェフ、14年より「クラウンバー」シェフ。




DINING OUTの料理のイメージを覆す




これまでのDINING OUTの料理には、ひとつのイメージがあったように思います。
それはコンセプチュアルであるということ。歴史、エピソード、伝統などからの着想であったり、それらの断片を盛り込むクリエイションが多くなされてきました。人はそこにDINING OUTらしさを見てきたとも言えます。
でも、渥美シェフの料理はちょっと違います。はっきり言って、コンセプチュアルな料理ではありません。
では、どんな料理か。ひと言で言えば、感応の料理です。極めてピュアな感性が、そこにある美しさに感応して、ごく自然に生まれる料理とでも言えばよいでしょうか。画家やカメラマンが目の前にあるものに突き動かされて、思わずデッサンし、シャッターを切る時、先立つのは感応であり、衝動ですが、それと同じ。無作為の純粋性ゆえのパワーが受け手の五感にストレートに働きかける。だからこそ、受け手は強い感銘を受ける。そうして、感応の連鎖が起こる……そんな料理です。

「DINING OUTはいわばショック療法」と大類さんは言います。
「地元の人にとっては当たり前になりすぎて、そこにあるもの価値に気付かないことも少なくない。価値あるものも毎日見ているうちに目に入らなくなります。そんな地元の人々が無意識になってしまった価値に気付いてもらうことが、DINING OUTの役割」。“日本に眠る愉しみをもっと。”をコンセプトに掲げる通りです。
たとえば、今回の舞台である名護屋城跡の中でも、大類さんがディナー会場に選んだのは、崩れた石垣に囲まれた馬場でした。「崩れた石垣が焦点だったと言えます」と大類さん。
名護屋城は、豊臣秀吉が朝鮮出兵のために築いた城。朝鮮出兵の折に大陸から伴われて来た陶工たちが日本の焼き物文化に寄与したことを考えれば、有田焼400年プロジェクトの会場として、これほどふさわしい場所もありません。
「関が原の戦いの後、石垣の一部をわざと崩したと言われています。時の経過と共に、崩れた岩肌の隙間からいつしか樹が生い茂った」。崩れた部分に先人の意志があり、時間の堆積があり、自然が息づき、ストーリーがある。「崩れた石垣こそクローズアップすべきと考えたんですね」。
石垣をシンプルにライトアップした演出は、見慣れたものを見慣れぬものとして提示して、名護屋城の存在とその意味、何よりも美しさを強く印象付けました。

唐津市出身の篠笛奏者・佐藤和哉氏がスペシャルゲストとして参加。「からつ曳山囃子」「荒城の月」「舞姫」を演奏して、取り巻く自然との一体感を醸し出しました。


城跡の景色の中に埋もれていた石垣をすくい上げるように、そこにあるものに感応する才能を大類さんは渥美さんに見たのでしょう。
「埋もれているものを掘り起こすには、固定観念なく価値を見出せるまっさらな目、ピュアな感性がいい。従来の枠組みを軽々と超えられる発想とクリエイションの幅のある人材がふさわしい」

フランスでしか働いて来なかった渥美シェフは、日本の食材の生産現場を本格的に訪れるのは今回が初めて。「想像したよりはるかにすばらしかった。食材の味わいも力強く個性的でした。楽しくて、うれしくて、新しいことをやりたくなってしまって」、12品全品を新作として生み落としたのでした。


シェフのリクエストから生まれた器も




今回、クリエイティブプロデューサーという立場で関わった丸若裕俊さんは、有田・伊万里・唐津という3つの産地にまたがる形で窯元・作家たちとコミュニケーションをとりながら、伝統の上に立った新しい器の数々を出現させていきました。

有田・伊万里・唐津という3つの産地にまたがる13の窯元・作家が12の器を新たに制作。そのディレクションで手腕を発揮した丸若裕俊さん。


渥美シェフとはパリを拠点とする同士、6年に及ぶ付き合いだそうです。DINING OUTを共に手掛けることになって、「渥美シェフから『この器、カッコイイでしょ』と画像がLINEで送られてきたんですね。ギメ・ミュージアムにある作品でした。これはむずかしいぞと思ったけれど、職人の方たちが鍛錬した技術で応えてくれた」と語る器は、「トピナンブールのコンソメ」に使われています。

渥美シェフのリクエストから生み落とされた器。ギメ・ミュージアムの収蔵品の写し。「神への捧げ物のフォルムです」と丸若さん。

食材の個性がほとばしる料理の数々。




それでは、12品におよぶ料理と器の数々を見ていきましょう。

1皿目

レンコンのガレット
器:耐火匣鉢“ボシ”


九州一のレンコン産地佐賀県白石町の白石れんこんや唐津「みのり農場」の平飼い卵の卵黄、そして、シイタケ、米粉で作る棒状のガレット。本窯を焚く時に磁器を入れる耐火匣鉢“ボシ”を器に見立て、新潟県から取り寄せた天然の苔を張った上にのせて。

2皿目

クエセビーチェ
器:鳥形合子 福珠窯(有田)福田雅夫 & 徳幸窯(有田)徳永弘幸


玄海灘で水揚げされるクエをセビーチェに。玄界灘に浮かぶ馬渡島の固有種である柑橘・元寇の果汁でマリネして、ハコベやコリアンダーなどのハーブで風味をプラス。鳥形合子の蓋物の器に合わせて、「器と呼応するように、鳥が食べるハコベなどの草を使っています」と渥美シェフ。

3皿目

豆乳フラン
器:球形蓋物 中里太郎右衛門窯(唐津)中里太郎右衛門& 健太郎窯(唐津)村山健太郎


全国的に知られる地元唐津の老舗豆腐店「川島豆腐」謹製の豆乳を使用。大豆の味わいをしっかり感じさせる。器は球形蓋物のボンボニエールで、宝物を眺める気分で蓋を開けていただく喜びが。

4皿目

イソギンチャクとツガニのビスク
器:円筒筒蓋物 吉右ヱ門窯(有田)原田吉泰


日本で唯一、イソギンチャクを食べる有明海文化へのリスペストから。ツガニ(モクズガニ)は産卵を控えたメスだけを使ってビスク仕立てに。イソギンチャクは独特の食感。器の外側は金に彩色し、内側はプラチナ箔。「強い素材には強いデザイン」と丸若さん。食べやすいよう、蓋に盛る心配りも。

5皿目

イチジクと鰻
器:鉄釉平皿 殿山窯(唐津)矢野直人


唐津市にある「富田農園」の黒イチジクは濃厚な甘味を生かすべく、あえてそのままで。筑後川産のウナギは炭火で焼き、フォワグラは丁寧に火入れして冷やしている。器は夜空をイメージした皿。「この料理の間は、見上げずに見下ろしてほしい」と丸若さん。

6皿目

桐岡ナス
器:鉄釉深鉢 由起子窯(唐津)土屋由起子


多久市の伝統野菜、桐岡ナスを極限まで火入れ後、黒ニンニクのペースト入りのベニエ生地で揚げて。表面はさっくり、中は舌の上でとろける食感。鉄釉の深鉢に極薄の手漉き和紙を張り、燃やして料理の顔を覗かせるプレゼンテーション。石と見紛う盛り付けも秀逸。

7皿目

イノシシの煮込み
器:瑠璃釉の深鉢 瑞峯窯(有田)原田耕三郎


クジラを余すことなく食べる郷土食から着想を得て、「山クジラ=イノシシ」を頭から尻尾まで。頭は煮込み、肉はローストに、骨でフォンをとってソースに。ソースには30~40種から成るスパイス、エピス・トゥルトゥを炒めずに使うことで複雑な中にもクリアさを出した。キャベツを焼き込んだブリオッシュと共に。器は丸若さんいわく「海の中の月、玄界灘を表現した皿」。

8皿目

トピナンブールのコンソメ
器:反鉢 畑萬陶苑(伊万里)畑石修嗣


玄海町にある「中山牧場」で育てられた佐賀牛のフィレ肉の表面を強火で焙って小さくカット。菊芋を皮ごと搾ったジュースから丁寧にアクを除いて作る温かいコンソメをかけて。菊芋のチップと共に。器は、渥美シェフがギメ・ミュージアムで心打たれた名器の写し。

9皿目

ソール八丁味噌
器:粉引皿 隆太窯(唐津)中里太亀


有明海で水揚げされる舌平目を骨付きで火入れし、八丁味噌と焦がしバターを合わせたソースをまとわせている。ローストした唐津の自然薯とカタバミを添えて。隆太窯による粉引皿が素材をやさしく穏やかな表情に見せる。

10皿目

黒リゾット
器:白磁輪花向付 やま平窯(有田)山本博文


嬉野市塩田町で自然栽培された黒米をリゾットに。玄海灘の最高級の赤ウニをエスプーマでプラスし、マグロの心臓のカラスミをアクセントにして。花びらをモチーフにした白磁輪花向付の中で料理が佇む。

11皿目

香るブドウ
器:銀杏形手塩皿 李荘窯(有田)寺内信二


伊万里市で40年以上前からブドウの多品種栽培を手掛けてきたオーガニックのブドウ園「井上オーチャード」の多種多様なブドウを盛り込み、セリ科のハーブ、リベーシュのクリーム、自然派のロゼスパークリング「フェスティジャール」のアイスクリームを添えて。

12皿目

モンブラン
器:型打ち輪花皿 文祥窯(伊万里)馬場光二郎


モンブラン? 柿じゃなくて? という声が聞えてきそう。佐賀県大和町の干し柿の中に、九州産の栗のクリームが詰まっている。扱いづらいとされる泉山の磁石を使い、家屋の解体で出た廃材などを選定した木の薪で窯を炊く文祥窯の型打ち輪花皿で。

世界の最前線のワインとドリンク




もうひとつの大きな見所が、ソムリエの大越基裕さんによる料理とドリンクのマリアージュでした。世界的に注目度の高い生産者のワインと地元・佐賀の日本酒を組み合わせたラインナップは、「歴史ある地で、自然の中で、この地この時しかできない体験を提供しようと心掛けた」という大越さんの言葉そのもの。

「アンコールとノンアルコールを対等に12皿に合わせました」とソムリエの大越さん。アルコールを飲んでいる側がノンアルコールをうらやましがるほどのクリエイション度の高さを見せて。

評判の造り手のワインと造りの凝った日本酒に、提供温度の工夫もしながらサーブするというめくるめく展開。


オーストリアの先鋭的な自然派で台風の目とも言われるフランツ・シュトロマイヤー、オーストラリアの風雲児との呼び声の高いパトリック・サリヴァンなど話題の生産者を揃え、日本酒は「天山酒造」(小城市)のおりがらみをぬる燗で出し、低精白酒(75%精米)は冷やで、長期熟成酒は有田焼のぐい呑みでと、料理に寄り添いながら、自然派の新星あり、ブルゴーニュの名手あり、日本酒の古酒ありの自在な展開は類を見ないほど。

加えて、ノンアルコールドリンクも特筆すべき秀逸さ。「割ることがカクテルやノンアルコールカクテルの定石とすると、いずれも割らないカクテルです」と大越さん。割らずにプラスする、あるいは掛け算するイメージでしょうか。氷出しした「松尾製茶」(嬉野市)の緑茶にマスカットとパセリのフレーバー、マルク・アンジェリのリンゴジュースにだしと塩、ビーツジュースに「サガ・ビネガー」の梅酢と穂紫蘇、豆乳を合わせたカブのブイヨンにホワイトペッパー、「松尾製茶」の紅茶「雪花」にみりんの煮切りを加え、軽くスモークをかけて、ぬる燗で提供。なんと才気溢れる提案でしょうか。

ワインはオーストリアの自然派フランツ・シュトロマイヤーによるピノ・ブランで、グリーンな柑橘系のフレッシュな旨味。ノンアルコールドリンクは、嬉野市「松尾製茶」の緑茶を氷出ししてマスカットとパセリのフレーバーを加えて、ワインと呼応するかのようなテイスト。

ワインはプリウレ・ロックのニュイ・プルミエクリュ。ノンアルコールは、紅茶を60℃で淹れてみりんの煮切りを加え、軽くスモークをかけ、40℃のぬる燗で提供。ワインと同じテイストが見事に立ち上がってくる。

渥美シェフのアシストとして、「eatrip」の野村友里さん、「organ」の紺野真さんらが駆け付けて、キッチンに入りました。「創太シェフはひたすらおいしいものを作りたい人。コンセプトから料理を作るタイプではない。その分、不必要な装飾もなくシンプル。選ぶ食材は一級品」と紺野さん。


「DINING OUTは、才能が集まるプラットフォームになった」――総合プロデューサーの大類知樹さんは、今回、そう確信したといいます。
足元にあるものの価値に気付きにくい土地だからこそ、光を当てる仕事のやりがいは大きく、魅力も大きい。
DINING OUTによって、日本の各地に新たなストーリーが誕生していくであろう今後の展開が楽しみでなりません。

DINING OUT ARITA&の様子を、記事とあわせて動画でもチェック!



今回制作したオリジナルの器を限定販売中!詳しくはコチラから。
http://www.onestory-media.jp/









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