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JOURNAL / 世界の食トレンド

ラード使いと卵黄が決め手。プエルトリコ経由のうずまきパン「マヨルカス」

America [Providence]

2023.06.12

ラード使いと卵黄が決め手。プエルトリコ経由のうずまきパン「マヨルカス」

text by Kuniko Yasutake / photographs by Kuniko Yasutake(photo1,2,4), Little Sister(photo3)

粉砂糖がたっぷりかかった真っ白なうずまきパン「マヨルカス」は、トロピカルな色調が印象的なカフェ「リトル・シスター(Little Sister)」の人気商品だ。スペイン発祥の「エンサイマダ」に似ているが、その味と名称の違いは、オーナーシェフ、ミレナ・パガン氏のレシピと彼女の故郷プエルトリコにある。

カリブ海に浮かぶ島プエルトリコは、米国の自治連邦区になる以前、4世紀に渡ってスペインの植民地だった。マヨルカ島出身のスペイン人が小麦や豚を持ち込むと、彼らがラードで作ったパンは「マヨルカス」と呼ばれるようになり、プエルトリコの食文化に浸透していった。だが現代は、ショートニングを原料として大量生産化が進んでいる。

2020年、ミレナ・パガン氏がプエルトリコの食材や料理を朝食、ランチ、ブランチで提供する同店をロードアイランド州プロビデンスにオープンした際、幼少期に慣れ親しんだマヨルカス専門店の味の復活を試みた。さらにラードを生地の練り込みと折り込みに使い、卵は卵黄のみ加えることで、マヨルカ島オリジナルの味に新たな捻りを加えたパンとして紹介しているのだ。その繊細な舌触りと弾力のある口当たりをストレートに味わうためにフィリングは入れず、ブラックフォレスト・ハム(スモークした生ハム)、目玉焼き、スイスチーズを挟んだサンドイッチとしても提供している。


(写真)ラードを練り込んだ生地にさらにラードを加えて折り込み、ふんわりサクッとした層が生まれる。あっさりした甘味、ほのかな旨味、そして切れの良い後口が特徴だ。

(写真)ラードを練り込んだ生地にさらにラードを加えて折り込み、ふんわりサクッとした層が生まれる。あっさりした甘味、ほのかな旨味、そして切れの良い後口が特徴だ。

パガン氏の技術は州外にも知れ渡り、2023年「食のアカデミー賞」を主催するジェームズ・ビアード財団が米国北東部のベストシェフ・セミファイナリストに彼女を選出した。小さな佇まいだが、ロードアイランドのランドマーク的な店になりつつある。

(写真トップ)ドーナツのような重量感は見た目だけ。ラードから連想される脂っこさが一切なく、2日目もパンのボリューム、食感、軽やかさをキープ。これはレシピだけでなく、調理スキルの高さによるものか。4.50ドル。

(写真)オーナーシェフのミレナ・パガン氏。マサチューセッツ工科大学を卒業後、会社勤めを経てから一念発起してキャリアチェンジ。2016年に同じくプロビデンスでベーグル専門店を開店・成功させた経歴を持つ。調理学校で学んだ経験は無いが、「練習、練習、また練習。自分の中の“グッド・テイスト”を追求してきた」と語る。

(写真)オーナーシェフのミレナ・パガン氏。マサチューセッツ工科大学を卒業後、会社勤めを経てから一念発起してキャリアチェンジ。2016年に同じくプロビデンスでベーグル専門店を開店・成功させた経歴を持つ。調理学校で学んだ経験は無いが、「練習、練習、また練習。自分の中の“グッド・テイスト”を追求してきた」と語る。

週替わりスペシャルランチ

(写真)週替わりスペシャルランチの例:チュレタス・ア・ラ・ハルディネラ(豚の野菜煮込み)、スイート・プランテン(熟した調理用バナナのフライ)、野菜ピラフとサラダ/19.50ドル。2023年5月に金曜の夜限定で予約制おまかせコースディナーの提供をスタート。メーリングリストに登録した顧客だけに招待状が届く。日曜夜のみの自然派ワイン・テイスティングも好評だ。



◎Little Sister
737a Hope Street, Providence, RI 02906
☎+1-401-642-9464
8:00~14:00(木曜、金曜)、9:00~14:00(土曜、日曜)
ワイン・テイスティング 18:00~20:00(日曜のみ)
月曜~水曜休
https://www.littlesisterpvd.com/

*1ドル=137円(2023年5月時点)

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