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JOURNAL / 世界の食トレンド

刻々と変わる価格に一喜一憂 価格変動制の“株式バル”で得をするのは誰?

Spain [Madrid]

2024.03.21

刻々と変わる価格に一喜一憂 価格変動制の“株式バル”で得をするのは誰?

text & photographs by Yuki Kobayashi
(写真)ドリンクとフードメニューが交互に表示されてゆく電光パネル。注文はカウンター前に並ぶ形式で、順番を待つ間、注文を決めていたつもりでも刻々と変わる価格の上下に、優柔不断になってしまう。

激しく切磋琢磨するスペインのバル業界。首都マドリードの中心部にあり、飲み歩き人口の多いマラサーニャ地区も激戦区のひとつだ。典型的な親父バル、シックな内装で大人飲みを誘うバル、無国籍な品揃えのバルなど、消費者としてはどこに寄るか、嬉しい迷いに満ちた地区でもある。

その中でも2021年にオープンしてから、じわじわと話題になっているのが「ウォール・ストリート・マドリード(Wall St Madrid)」。なんと、価格変動制という新しいシステムを導入した新機軸のバルだ。

店内にはメニューを表示したデジタル掲示板があり、株式市場さながら、刻々と変わる価格を表示する。ドリンクも料理も5分ごとに価格が変わるので、客は価格の上下変動を見て、迷いながら自分のオーダーを出す。


利用客は 20〜30 代の若い世代

(写真)利用客は20〜30代の若い世代。株好きというわけではなさそう。

創業者のホアキン・バレンスエラ氏は言う。
「価格変動制は業界初の試みで、ソフトウェアを開発しました。AIを用いて、需要と価格の間で最大限の利益が出るようにシステムを構築してあります。同システムを使うと、他店よりもほんの少しだけ、価格を低く保てる利点もあります。5分ごとに変わる価格は店内のパネルで表示され、買い手にとって最も魅力的な商品、かつ私達にとっても最も売りたい商品が、“お買い得”として表示されるわけです。現在、さらにシステム開発を重ね、2024年末にはフランチャイズ展開を目指しています」

このシステムではフードロスも少ないという。安く仕入れることができた食材の料理は、安く提供できる。需要の少ない商品は、価格がやや下がってくる。そして安くなった商品を客は好んで買う、という好循環。

カウンターに並んでオーダーするスタイルだが、列で待っている間に価格が変動するのには、正直面食らう。「あれを食べたい」と思って並んでいても、価格が上がるとオーダーを躊躇してしまうのも確かだ。しかし、一軒で安く済ませたい若者には好評。もっとも、酔いが回ると価格変動などあまり注意しなくなる傾向も。バルの利益と選べる価格の多様性、客へのエンターテイメントを満たしたこのシステム、フランチャイズで成功するかを見極めたいところだ。

コロッケの価格は 8.2 ユーロ、餃子は 7.95 ユーロ。

(写真)フードはシンプルな料理が多い。取材時のコロッケの価格は8.2ユーロ、餃子は7.95ユーロ。同じ料理でも、他の客には自分と違う値段がついているということも起こりうる。比較はしないほうがよさそうだ。



◎Wall St Madrid
Corre. Alta de San Pablo, 25, Centro, 28004 Madrid
☎+34-602-545300
17:00〜翌2:00(土曜・日曜11:00〜、月曜・火曜18:00〜、金曜・土曜〜翌2:30)無休
Instagram:@wallstmadrid

*1ユーロ=162円(2024年3月時点)

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