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JOURNAL / 世界の食トレンド

湯煎で4時間焼き、10時間かけて冷ますスウェーデンのご当地パン「ウップランズクッブ」

Sweden [Uppland]

2026.06.15

湯煎で4時間焼き、10時間かけて冷ますスウェーデンのご当地パン「ウップランズクッブ」

text by Sakiko Jin
かなりの甘さを感じる「ウップランズクッブ」。パンに使用するシロップはスウェーデン産に限定される。ウップランズコケリーエット社では、南部スコーネにあるスウェーデン唯一の砂糖工場が作る100%スウェーデン産、甜菜シロップを使っている。日持ちがよく、その贅沢な甘味が人々の心を満たすため、1800年代当初はウップランドの住人に重宝されたと言う。

スウェーデンの主食はジャガイモだが、実はパンの伝統も長く深く、州やその地方の特色を表すご当地パンがある。代表的なものに、エーランド島の石窯で焼くサワードウパン「エーランズリンパ(Ölandslimpa)」、ダルスランド州のライ麦とえん麦を使ったアニスとフェンネル風味のパン「ダルスランズカーカ(Dalslandskaka)」、ノーランド州の大麦とライ麦を使った薄焼きパン「トゥンブルード(Tunnbröd)」、ラップランドのサーミ族伝統のフライパンで焼く薄焼きパン「ガッコー(Gáhkku)」などが挙げられる。

中でもスウェーデン内で唯一無二の製法で知られているのが、ウップランド州の「ウップランズクッブ(Upplandskubb)」だ。

ストックホルム北部から、大学で知られるウプサラ市にまたがるウップランド州。ウップランズクッブは1800年後半、ウプサラにあった教師やメイドを教育する女学校でのレシピが発端と言われる。原材料はライ麦、小麦、水、シロップ、イースト、塩。蓋付きの円柱の型に生地を入れ、湯煎で焼き上げる。手間も時間もかかるパンだが、1920年代にウップランズクッベン株式会社が製造・販売を始めることにより、スウェーデン国内に広く知られるようになった。

グッブルーラ(Gubbröra)
オープンサンドのベースにうってつけのウップランズクッブ。「グッブルーラ(Gubbröra)」は、アンチョビまたはマチエスシルと呼ばれるニシンの酢漬け、茹で卵、ネギ、ディルに、サワークリームかマヨネーズを合わせる、スウェーデンでは定番かつミッドサマー(夏至祭)でも食される一品だ。ウップランズコケリーエット社創業者、マグヌスのおすすめの組み合わせの一つでもある。

現在、数少ないウップランズクッブの作り手でもあるウップランズコケリーエット(Upplandskokeriet )社は、ベルネクリント家が経営する小さな会社。創業者でもあるマグヌスは、2013年のクリスマスマーケットで食べて以来虜になり、最初は自宅の台所で作っていたが、その情熱が冷めることはなく、ついには2025年に食品会社を立ち上げ製品として販売を始めたという、ウップランズクッブの立役者だ。

2014年に原産地呼称保護(PDO)に認定されたウップランズクッブは、原材料はもちろん作り方にも厳格な決まりがある。発酵に最低5時間かけ、湯煎での焼成は4時間、型から取り出した後、最低10時間かけて冷ますという。レシピの多少の変更は可能なため、マグヌスは2013年から試行錯誤を繰り返し、最高の出来上がりになるレシピが完成した。

正しい切り方の説明をするマグヌスさん
湯煎での長い焼成の後で、正しい切り方の説明をするマグヌス。ウップランズクッブの作り方教室の他、それにまつわる歴史などの講演会も行っている。
原材料のライ麦、小麦はウップランド州産
規定により原材料のライ麦、小麦はウップランド州産で、製造地もウップランド州内に限られている。
湯煎で焼き上げるウップランズクッブ
湯煎で焼き上げるウップランズクッブは、表皮部分(クラスト)が中身(クラム)と同様の柔らかさ。10時間以上かけて冷ます工程によるものとマグヌスは話す。

量産される手軽で安い工場製パンが当たり前の昨今、ウップランズクッブをはじめとする伝統食は、時代の変遷と共に廃れてきているのが現状だ。だがマグヌスのように製品化に取り組んだり、ご当地パンの見直しプロジェクトも始まっている。再びスウェーデンの伝統食が返り咲き、光が当たる日が待ち遠しい。

ウップランズクッブを販売している小さなショップ
ウップランズクッブを販売している小さなショップ。オンラインショップでの注文、郵送も受け付けている。

Upplandskokeriet
https://upplandskubbkokeriet.se/

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