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JOURNAL / 世界の食トレンド

COVID-19対策―― 世界の飲食店はどう動いたか? ノルウェー編 | The Cuisine Press WEB料理通信

2020.06.10


COVID-19対策――

世界の飲食店はどう動いたか? ノルウェー編

Jun. 10, 2020

text by Asaki Abumi / photograph by FUGLEN COFFEE ROASTERS OSLO

世界の飲食店や飲食業に携わる人々はこの危機にどう対応し、何を学び、何を模索しているのか?コロナの禍中にいる、各国のジャーナリストがリポートします。

(5月15日時点の各国の状況に基づく。)





「フグレン」の生き延び方。
住宅街の焙煎所を“ご近所の販売窓口”に

3月中旬から、コロナ打撃で飲食店には激震が走った。飲食店は休業命令の対象ではないが、来店者と収入の激減により、歯がゆい思いでドアを閉めた店は多かった。「社交的距離1メートル」という感染防止対策は狭い店内では難しい。人口が多い首都オスロでは規則を守らない夜間営業店が多かったために、飲食店での酒の提供は禁止となった。

休業店が相次ぐ中、カフェ「フグレン」の経営者アイナル・クレッペ・ホルテ氏はすぐに行動を起こした。「ビジネスの形を変えなければいけないと、すぐに地元の小規模店や農家と協力体制を組みました」。人が消えた中心部にある本店は閉め、住宅街にある焙煎所「フグレン・コーヒーロースターズ・オスロ」は、"地元のピックアップポイント"というコンセプトで生存の道を開拓。コーヒー豆に加えて、地元ブランドのジュース、パン、ペストリーなどを店頭で販売し始め"ご近所の小さな販売窓口"となったのだ。「混雑したスーパーでの買い物は避けたいと思う人は多かった。安心して来られる場所があれば、新鮮な食べ物が手に入るし、外に出て気分転換をするきっかけにもなる」。

TOP写真:社会的距離がとれるように、イスを使い店内の空間を制限。これまでは販売していなかったパンや飲み物をレジに並べる。

ノルウェーには1950~60年代まで、町の通りには小さなパン屋や牛乳屋があった。しかし、人口の少ない国に海外から大企業が参入したことで地元の小規模店が潰れていき、現在、スーパーマーケット市場は大手3社が独占している。コロナの影響で小規模店はさらに苦戦を強いられているが、同時に人々は選択肢がスーパーしかない不自由さに気がついた。ホルテ氏らは、昔ながらの買い物の形を取り戻すことで生き延びようとしている。

「販売所は市内に3カ所あり、今は10ほどの小規模生産者と連携中ですが、今後は50ほどに増加予定です」。休業した本店は政府の支援金制度に申し込む予定だが、焙煎所ではその必要がないほど経営は順調だ。

政治家と市民の距離が近い北欧では、民主的対話を尊重するため、突然仕事を失っても保障の網が充実している。メディアが窓口となって議論を重ね、緊急対策案は何度か出されている。ホルテ氏の取り組みも地元紙で紹介されたが、支援策は足りないと抗議した。

「政府の仕事は評価するが、補償手当は大企業や独占市場向けで、小規模経営の会社には不十分。国内のサプライチェーンがどれほど弱いものだったか、国民は身に染みたことでしょう。農家や生産者を守ることがどれほど大事か認識し、食べ物の流れをサステナブルなものに民主化し、新しい基盤を作る必要があると、誰もが気づいたと思う」。コロナ禍が収束した後も、近所の販売所という形は継続する予定だ。




<世界のコロナ対策:ノルウェーの場合>


▼行動制限要請、地域・全国封鎖の時期
3/12~ 行動制限、在宅勤務要請
3/14~ 国境規制
(地域・全国封鎖はなし)

▼飲食業への要請や命令内容
3/12~:
・飲食店では1~2メートルの社会的距離を保つ
・ビュッフェ形式での提供禁止
・食べ物を提供しない店は営業禁止(カフェ、バー、ディスコ、ナイトクラブ、パブなど)
3/21~:
・首都オスロでは飲食店での酒の提供禁止(~5/5)

罰則:感染予防対策を破った場合は罰金・営業停止、禁錮6カ月



▼飲食業(企業全般)への主な救済策
◎ 売上・固定費補助
売上が前年比で3月20%減、4月以降30%減以上の企業を対象に、減少額と固定費合わせて月3000万ノルウェークローネ(約3億円)まで、5月末まで支給。休業命令が出た業種は固定費の90%を補助。休業命令が出ない業種(飲食業を含む)は、固定費の80%を補助。
(ただし1万ノルウェークローネ=約10万円は自己負担)

◎ 失業手当
3/20以降の失業者には、最初の20日間は賃金100%支給(企業が2日分、国が18日間を負担)。それ以降は、労働時間が40%以上減った場合は、業種と過去の収入額(納税額)に応じて最高80%を約26~52週間支給*

*これまでの規則で、学生や労働ビザで働く外国人は失業手当の対象者ではなかったが、市民からの抗議で支給対象者になった。個人事業主などへの支給条件も緩和される。






◎ FUGLEN COFFEE ROASTERS OSLO
www.fuglen.no

(『料理通信』2020年7月号/「ワールドトピックス」より)



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