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JOURNAL / 世界の食トレンド

「ノーマ」出身デュオによる革新的カクテルが缶入りで発売

America [New York]

2023.07.18

「ノーマ」出身デュオによる革新的カクテルが缶入りで発売

text by Akiko Katayama

RTD(Ready To Drink:蓋を開けてそのまま飲める)カクテルが人気を高めている。米国では2016年から2021年の間に、RTDカクテルは226%の販売量増*を記録する勢いだ。コロナの影響で自宅でのアルコール消費のニーズが高まったこと、スピリッツメーカー各社が、より多彩な味の品揃えを提供するツールとして活用していること、質の高い素材を使った商品が増え、RTDのイメージが高まっていることなどがその背景にある。

そんな中、独創的な発想でスピリッツを生み出す「エンピリカル(Empirical)」が、2023年5月、米国で缶入り商品の発売を開始し、話題を集めている。

エンピリカルは、デンマークにある世界屈指のレストラン「ノーマ(noma)」で活躍した料理人ラース・ウィリアムズ氏と、コンセプト開発担当者マーク・エミル・ハーマンセン氏が、2017年にコペンハーゲンに創業した蒸溜所。過去の懐かしい記憶や自然の恵みが生み出す繊細な味を伝えるスピリッツづくりを目指し、原料の発酵には麹を使用、蒸溜は一般的な85℃より格段に低い15〜20℃の真空下で行うなど、通常の製造工程に工夫を施し、ピュアな風味を追求する。

各国の旬を追って集める素材の可能性を引き出し、ボトル入り商品は、スピリッツのプロの間で高い評価を得てきた。


(写真)「エンピリカル」の共同創始者ラース・ウィリアムズ氏(左)とマーク・エミル・ハーマンセン氏。

(写真)「エンピリカル」の共同創始者ラース・ウィリアムズ氏(左)とマーク・エミル・ハーマンセン氏。

缶入り商品は「01」「02」「03」の3種(355ml/4缶36ドル)。素材の味をストレートに伝えるため砂糖不使用、アルコール度数はそれぞれ10%、8%、4.5%と、通常のカクテルより抑えめだ。例えば「02」はサクランボ、黒スグリの芽、若い松ぼっくり、クルミの木など、多彩な味がすんなり溶け合う印象的な味わい。

ウェブサイトのキャッチコピーは「カクテルでも、ビールでも、炭酸水でもない」。香水を嗅いで想像をかき立てられる――そんな感覚を覚える、全く新たなジャンルの飲み物である。
今後ドリンク市場を刺激していきそうな商品だ。

*市場調査会社Mintelの記事「Coke and Pepsi go hard with new RTD alcoholic drinks」より

(写真トップ)「Can 02」は美しいルビー色。日本への送料はかかるが、ウェブサイトから直接購入も可能だ。



*1ドル=143円(2023年6月時点)

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