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大地からの声――6
手放すことを教えてくれた。
たてみち屋 菅秀和さん

People / ProducerMay. 14, 2020

広島県尾道市瀬戸田。しまなみ海道県境の島で柑橘農園を営む菅秀和さんは「半農半伝」を掲げ、栽培の傍ら、自分たちが栽培する農作物の魅力や活かし方を伝えると同時に、農業の魅力や課題を伝えることにもエネルギーを注いできました。菅さんの眼に新型コロナウイルスはどう映っているのでしょうか?


問1 現在の仕事の状況

3月頭には対策を打ちました。

2月後半から「飲食店の営業が厳しくなっていくだろう」と予測し、3月頭には対策を打ちました。
たてみち屋の出荷先は、東京のレストラン、居酒屋、バーなどの飲食店と、それらへ卸す問屋や小売店です。前者が8割、後者が2割。日頃レモンサワーの売上が多いお店に「家呑みレモンサワーセットを販売してはいかがですか?」と提案。レモンシロップやレモン酢などのレシピ、お店のPRを添えたレモン果実の販売を働きかけました。

当初はあまり反応がなかったものの、4月に入って営業自粛が加速したこともあり、「何かできることをやらなければ」と必死に考える飲食店さんから注文が相次いだ。テイクアウトやお弁当は新たに購入する資材も多く、衛生面の心配もあります。その点、レモンは扱いやすい。レシピやフライヤーを入れておけば、SNSにアップしてくれるでしょうと勧めたおかげで、普段の倍以上購入してくださったお店もあります。


塩レモン、レモンシロップなど、レモンを丸ごと食べて使い切る提案を、開業以来、一貫して行なってきた。



問2 今、思うこと、考えていること

日頃から備えておくことが大事。

3年前、国による「収入保険」という制度ができました。自然災害や市場価格の下落といったリスクによる減収を補填してくれる保険で、私は制定翌年に加入。農業は自然災害を受けやすいこともあって、公的機関の保険や支援が比較的用意されているほうかもしれません。今回のような場合、もし、出荷が止まって減収ということになれば、保険の適用も考えられましたが、運良く世話にならずに済んでいます。

私は“市場に出荷せずに直売する”という経営方針を取っています。生産物は自分で責任をもって売り切らなければならない。自然相手の農業を営む上で、どのように売っていくのか、どのようにリスクを回避・軽減していくのかは、日常的に考え、手を打ってきたつもりです。自分で売り切らなければならない反面、一次産業と三次産業の両立という経営形態にあたり、商工会にも加盟できるし、経産省管轄の事業も適用されます。

飲食店の営業自粛がレモンの最盛期1、2月ではなく、シーズン終わりかけのタイミングだったこと、レモンという日持ちする性質上、販路が上手く調整できれば緊急を要する事態に陥りにくかったのは幸運でした。とはいえ、誰も想定し得なかった急転直下の展開に、普段から生き抜く知恵と技を磨いておくことが大切だとつくづく思ったのも事実です。日頃ジョギングをしていないのにいきなりマラソン競技に出れば身体を壊すのと一緒です。

問3 シェフや食べ手に伝えたいこと

それが自然なことであれば、残るものは残る。

新型コロナウイルスは「手放す」ことを教えてくれたと、私は思っています。
「手放す」とは単に捨てるということではありません。日本むかし話「わらしべ長者」の本質は「手に入れる」ことではなく「手放す」ことにある。わらしべを握ったままでは新しくやってくるものも掴めないでしょう。手放すから手に入る。手放さなければ、新しい思想も身に付けられないのです。

コロナによって、守っていたものまで手放さざるを得なくなって、どこか執着が解けたという側面もあるのではないでしょうか。手放すことを受け入れられると、執着がなくなって、新しいことを始められる。次のステップへ進むのに、頭の中の思考がスムーズになります。


今、開墾作業の真っ最中。毎年10~20aの耕作放棄地を開墾してきた。「農地を次世代に引き継ぐための開墾。最初から手放すことを目的とした開墾」。



1820年前後にコレラ、1920年前後にスペイン風邪、そして、2020年に新型コロナウイルス。感染症の大流行は100年おきに起きている。という事実を知った時、これはもう自然の営みのひとつとして捉えるべきではないかと考えました。台風や寒波といった自然災害と同様の感覚で受け入れるしかない、と。

先人の知恵である発酵食品が見直されてきて、免疫力が話題になっていますが、“免疫力とは受け入れる力”と私は捉えています。腸内細菌叢の「叢」とは、くさむら・草木がむらがり生えている所の意味で、細菌で言えば、良い菌、悪い菌、何もしない菌、善悪関係なくいろんな菌が一カ所に集まってバランスのとれた状態のことです。

それらを丸ごと受け入れて、輪の中で一緒に生きていく、そんなイメージです。受け入れることは簡単ではないこともありますが、それでも喜んだり笑ったりすることで、生き残る力である免疫力は上がっていく。 免疫力とは身体の働きであると同時に心の働きでもあり、土作りと同じ働きがあると思うのです。

コントロールできないウイルスへの最大の対抗策は「共存共生」しかありません。
facebookの投稿でもたまに書くのですが、「それが自然なことであれば、残るものは残る」。私は自分にそう言い聞かせています。



菅 秀和(かん・ひでかず)
1974年生まれ、愛媛県 今治市 出身。食を軸にした職業を様々に経験した後、2014年、自身の農園をスタート。過去の営業経験を活かしたプレゼン技術から、都内や各地でレモンを使ったワークショップを多数開催。柑橘栽培を通して農業が抱える課題解決の糸口を探るべく様々な領域にアプローチをかける。

citrusfarms たてみち屋
http://www.tatemichiya.com/




大地からの声

新型コロナウイルスが教えようとしていること。




「食はつながり」。新型コロナウイルスの感染拡大は、改めて食の循環の大切さを浮き彫りにしています。

作り手-使い手-食べ手のつながりが制限されたり、分断されると、すべての立場の営みが苦境に立たされてしまう。
食材は生きもの。使い手、食べ手へと届かなければ、その生命は生かされない。
料理とは生きる術。その技が食材を生かし、食べ手の心を潤すことを痛感する日々です。
これまで以上に、私たちは、食を「生命の循環」として捉えるようになったと言えるでしょう。

と同時に、「生命の循環の源」である生産現場と生産者という存在の重要性が増しています。
4月1日、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、関連機関の世界貿易機関(WTO)、3機関のトップが連名で共同声明を出し、「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」との警告を発しました。
というのも、世界有数の穀物生産国であるインドやロシアが「国内の備蓄を増やすため」、小麦や米などの輸出量を制限すると発表したからです。
自給率の低い日本にとっては憂慮すべき事態が予測されます。
それにもまして懸念されるのが途上国。世界80か国で食料援助を行なう国連世界食糧計画(WFP)は「食料の生産国が輸出制限を行えば、輸入に頼る国々に重大な影響を及ぼす」と生産国に輸出制限を行わないよう強く求めています。

第二次世界大戦後に進行した人為的・工業的な食の生産は、食材や食品を生命として捉えにくくしていたように思います。
人間中心の生産活動に対する反省から、地球全体の様々な生命体の営みを持続可能にする生産活動へと眼差しを転じていた矢先、新型コロナウイルスが「自然界の生命活動に所詮人間は適わない」と思い知らせている、そんな気がしてなりません。
これから先、私たちはどんな「生命の輪」を、「食のつながり」を築いていくべきなのか?
一人ひとりが、自分自身の頭で考えていくために、「生命の循環の源」に立つ生産者の方々の、いま現在の思いに耳を傾けたいと思います。

<3つの質問を投げかけています>
問1 現在のお仕事の状況
問2 今、思うこと、考えていること
問3 シェフや食べ手に伝えたいこと






























































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