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RECIPE

レーズンを熟成酒に漬けてみる 大人用「レーズンバターサンド」

フェーズフリーな食材レシピ:レーズン

2022.09.15

photographs by Kouichi Takizawa

連載:フェーズフリーな食材レシピ

乾物や漬物など、常温で長期保存でき、ビタミンやミネラルなど栄養価も高い食材は、備蓄食品にも向く優れもの。普段から食事に取り入れ、使い慣れることで、「いざという時に賞味期限が切れていた」「食べ慣れない味で食が進まない」という問題も避けられます。「いつも」と「もしも」をつなぐフェーズフリー*な食材を、おいしく活用するレシピ。今回は、ドライフルーツ、レーズンで作るレーズンバターサンド。ラム酒漬けが主流のレーズンバターを、甘味と塩気を併せ持つ熟成酒で作る、ちょっとディープ&大人向けのレシピです。


常備したい食材:レーズン
教えてくれたシェフ:東京・吉祥寺「にほん酒や」高谷謙一さん

燗酒を中心とした日本酒と、和と郷土料理をベースにした料理を楽しめる「にほん酒や」店主。青森県出身。システムエンジニアを経て飲食業界へ転向。約10年の飲食店勤務の後、2009年吉祥寺に現店をオープン。牡蠣の塩辛や生カラスミなどの酒のアテはもちろん、すし酢やウスターソースをはじめ、調味料の自家製も行う。

ラム酒ではなく古酒に漬けてコク深い味わいに

酒場のレーズンバターといえば、ドライフルーツ入りのバターの塊を薄く切って提供するのが一般的ですが、うちでは常温に戻したバターを白くクリーム状になるまで練ってメレンゲと合わせたものをライ麦のクッキーに挟んで、軽くつまめるようにしています。

ビジュアルは「ラムレーズンサンド」ですが、レーズンを漬けている酒はラム酒ではなく、実は、日本酒の熟成酒を使っています。酒粕を1年以上寝かせて上澄みを瓶詰めした「酒粕再発酵酒」で、みりんを思わせる甘さと、淡口醤油のような塩気も感じさせる複雑な味わいが特徴です。一晩漬けただけでも、レーズンに風味がしっかりと移るほど濃い。熟成酒のリストに入れて出していた酒ですが、味の深さから調味料としても使えるのではないかと思い、考案しました。

和の味わいを主軸に据えた「にほん酒や」ならではのレーズンバターです。酒粕再発酵酒は入手が難しいので、5年以上熟成させた濃いタイプの日本酒であれば代用可能です。贅沢ですが、「秋鹿純米古酒2000年」で漬けると、爽やかな後味に仕上がるのでおすすめ。もし、熟成酒でもコクが弱いと感じたら、みりんを足してみてください。

飲みたい酒に合わせて、プルーンやアプリコットなど他のドライフルーツを漬けても面白いですよ! 


熟成酒で作る「レーズンバタークリーム」 材料と作り方

[材料](7個分)

<熟成酒レーズン>
熟成酒・・・200ml
レーズン※・・・50g
※レーズンは熱湯で軽く油と汚れを落とす。

卵白・・・1個分
上白糖・・・5g
無塩バター・・・75g
塩・・・少量

[使う酒のポイント]

コクのある熟成酒を
使用するのは、福井県美川酒造場で造られている「舞美人」の酒粕再発酵酒。搾った直後の酒粕をタンクに入れて押し固め、覆いをして半年から1年以上寝かせ、その上澄みをすくい、瓶詰めした酒。深いコクと滋味深さがあり、ラムにも負けない力強さ。

[作り方]

[1] 容器にレーズンを入れ、熟成酒を注ぐ。常温で一晩置く。

[2] 水分を切り、軽く刻む。


[3] ボウルに卵白と上白糖の半量を入れ、泡立て器で十分立てのメレンゲを作る。

[4] 別のボウルに常温に戻したバターを入れ、滑らかなクリーム状になるまでゴムベラでよく練り、残りの砂糖を加え、よく混ぜる。


[5] 4を分離させないように少量ずつ加え、ふんわりと空気を含ませるように混ぜる。
POINT:全体に白っぽくなり、硬さが出てくるまで

[6] を加えて全体に馴染ませ、塩を加えてよく混ぜる。

[7]ライ麦のクッキーで挟んで盛り付ける。冷蔵庫で1週間程度保存できる。

<展開例>タルティーヌ

アメリカンビスケットにレーズンバタークリームを薄く塗り、1カ月塩漬けにしたリコッタチーズをのせ、オリーブ油とピンクペッパーで風味付けした。さらに塩気が加わり、おつまみ感がUP。



◎にほん酒や
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-7-13 1F
☎0422-20-1722
17:00~22:00(土、日曜、祝日13:00~21:00)
木曜休
JR、京王線吉祥寺駅より徒歩8分
http://web-farmer.jp/

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。

(雑誌『料理通信』2017年5月号掲載)

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