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JOURNAL / 世界の食トレンド

Germany [Reinhessen] カビに強い新しいブドウ品種で造る「未来のワイン」

2023.01.19

2030年までに農薬の使用を半減するための法案をEUが採択したことを受け、ワイン業界は今、大きな転機を迎えている。カビに強い新しいブドウ品種が農家の間で大ブームに。

text by Hideko Kawachi / photographs by Zukunftsweine

欧州委員会(EC)は2022年6月、壊れた生態系を回復させるため、2030年までに農薬の使用を半減するための法案を採択した*。「化学農薬を減らすことは、土壌や空気、食べもの、そして最終的にはヨーロッパに暮らす人々の健康を守ることになる」と、EC健康・食品安全委員のステラ・キリアキデスは言う。欧州連合(EU)の共通農業政策は、農業に従事する人たちに発生する費用を5年の間支援していく予定だ。


この決定により、ワイン業界は今、大きな転機を迎えている。
ドイツでは、最大のワイン生産地ラインヘッセンの若いワイン農家たちが「ツークンフツヴァイネ(ZUKUNFTSWEINE:未来のワイン)」と呼ばれるプロジェクトをスタートした。

「シャルドネ」や「リースリング」といった有名なブドウ品種はカビが付きやすいため、年に8〜15回も農薬を撒く必要があるという。環境を壊すことなく、これからもおいしいワインを造り続けていくにはどうしたらいいのだろう? その疑問の答えとして辿り着いたのが、カビに強い新しい交配種を幅広く栽培することだ。農薬を撒く回数を減らせば、トラクターが何度も畑を行き来して土壌を傷めることも、二酸化炭素排出量も抑えることができる。問題はそのイメージだ。

「ソーヴィニエ・グリ」「フェニックス」「ハイバーナル」「カベルネ・ブラン」などといった新しい品種のワインは、耳慣れないこともあって、味の点でも劣るのではと、これまで売上が思うように伸びなかった。しかし、多くの農家がカビに強い品種でのワイン造りを始めたことで情報交換が盛んになり、品質も向上。さらに「未来のワイン」という名前で売り出すことで、消費者のイメージを刷新しようというわけだ。

農家の間では、このカビに強い新しい品種はすでに大ブームで、2024年まで苗の入手は難しいとか。ワインの明るい未来への切り札となるか? 気になるところだ。

(写真トップ)ラベルにはQRコードがついており、これをスキャンすればこの品種についてより詳しい情報を知ることができる

(写真)2022年12月、ドイツのサステナブル賞(German Sustainability Award 2023)を受賞した「未来のワイン」のメンバーたち。「持続可能性を持つワイン用ブドウ品種の栽培は、まだドイツの農地面積の2.4%ほど。それを変えていければ」

(写真)2022年12月、ドイツのサステナブル賞(German Sustainability Award 2023)を受賞した「未来のワイン」のメンバーたち。「持続可能性を持つワイン用ブドウ品種の栽培は、まだドイツの農地面積の2.4%ほど。それを変えていければ」



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