ホーチミンの市場から世界へ発信。「アナン・サイゴン」が描く新しいベトナム料理
Vietnam [Ho Chi Minh City]
2026.06.22
text by Rie Suzuki
「小さなバインミー」。ベトナムを象徴するストリートフードを遊び心たっぷりにアレンジ。サクサクとした軽い食感のバゲットは、フェラン・アドリアが作るバゲットにインスパイアを受けている。ウニのムースパテをフィリングに、薄切りのアンガスビーフで包んだ。
2018年、ホーチミン中心部の歴史ある生鮮市場の一角に建つ、間口が狭く奥行きの深いベトナム伝統建築「チューブハウス」を改装し、オープンした「アナン・サイゴン(Anan Saigon)」。2023年に初刊行された『ミシュランガイド・ベトナム』で星を獲得し、26年まで毎年星を維持し続けている。
オーナーシェフのピーター・クオン・フランクリン(Peter Cường Franklin)が手がけるのは、「キュイジーヌ・モイ(Cuisine Moi)」と呼ばれる新しいベトナム料理。屋台文化から着想を得ながら、市場で仕入れた新鮮な食材を用い、フレンチの技法によってベトナム料理をガストロノミーへと昇華させている。
中部ダラットに生まれたピーターの母親は麺の屋台を営んでいた。その原風景が料理人としての原点になったという。1975年のサイゴン陥落前に渡米し、イェール大学卒業後は、投資銀行家として約20年間、世界各国で活躍。その後、長年離れ離れになっていた母との再会を機に、自らのルーツであるベトナム料理に向き合うようになったという異色の経歴を持つ。
ピーターの料理の背景には、ベトナムという国が辿ってきた複雑な歴史そのものがある。中国、フランス、周辺東南アジア諸国──多様な食文化が交差しながら発展してきたベトナム料理。その文脈を理解した上で、現代的な感性によって再構築している点こそ、アナン・サイゴンの独自性と言える。
ベトナム料理がこれからどのように進化していくのか、その最前線を体現する一軒と言えるだろう。
◎Anan Saigon
Chef’s Tasting Menu – A Culiany Journey Through Vietnam Flavors from North to South 3.800.000ベトナムドン
ワインペアリング(5杯) 2.500.000ベトナムドン
https://anansaigon.com/
*1ベトナムドン=0.0061円(2026年6月)
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