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JOURNAL / 世界の食トレンド

America [New York] 素材を選んで目の前で粉砕・包装。カスタムメイドのだし専門店

2022.11.24

素材を選んで目の前で粉砕・包装。カスタムメイドのだし専門店

text & photographs by Akiko Katayama

根強い和食人気が続くニューヨークでは、料理人やグルメの間で“旨味”や“だし”という言葉の認知度も上がっている。そんな中、2022年9月に開いた「ダシ・オクメ(DASHI OKUME)」が話題だ。

だし専門店「尾粂(おくめ)」は、1871年、日本橋で創業した水産会社「尾粂」の五代目、加納史敏氏が立ち上げた新事業。無添加にこだわっただし素材を消費者向けに提供するだけではなく、素材を自由に組み合わせるオリジナルだしパックの注文システムを発案し、日本で人気を集めてきた。

そのコンセプトをニューヨークに持ち込んだ同店だが、ややこの街には上級編すぎるのでは?
「実は少なからず不安を抱いていたのですが、だし素材がずらりと並んだショーケースを見て目を輝かせ、隅から隅まで写真や動画を撮られる方も多く、好調な滑り出しです」と加納氏。

ニューヨーク店では計30種のだし素材を用意。鰹節6種、小魚9種、海藻4種、キノコ3種、魚介2種に加え、だし文化に馴染みがない客層も試しやすいよう、トマトやニンニクの他、野菜6種も追加した。日本の店舗同様、注文には各素材の風味の説明を加えたオーダーシートを使用。そこに「コク・甘味・まろやかさ・風味の強さ・汎用性」のレベルの5段階表示も加え、初心者が容易に選択できるよう工夫している。

店内では選択の手間なしに購入できる定番パッケージ品も販売。さらに味噌や米など、だしに合う商品も並べ、だしの活用法も啓発する。

現在客層は、近隣住人から訪日経験者まで多彩だ。和食店経営者や洋食系米国人シェフが、料理のヒント探しや、独自のだしレシピ開発の相談のために来店するケースも目立つという。和食の礎であるだしを独自の形で紹介するスタイルが、今後どれだけ、この街に和食文化を浸透させていくかが興味深い。


(写真トップ)最近旬な店が目立ち始めたブルックリンのグリーンポイントの一角にある。敷地内にはモダンな和食器などを扱う小売店もあり、フレンチと和の魅力を折衷したおまかせ限定レストランも近々開店予定。和食文化発信の小さなハブとなるか。

(写真)多彩なだし素材をスタイリッシュに並べたショーケース。各素材の産地の思いに耳を傾けたり、その場で粉砕・包装するカスタムメイドのだしパック工程に熱心に見入るお客もいるといい、反応は上々だ。

(写真)多彩なだし素材をスタイリッシュに並べたショーケース。各素材の産地の思いに耳を傾けたり、その場で粉砕・包装するカスタムメイドのだしパック工程に熱心に見入るお客もいるといい、反応は上々だ。



◎DASHI OKUME
50 Norman Ave Brooklyn, NY 11222, USA.
https://okume.us/

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