食のバリアフリープロジェクト:FREEなレシピ 4
物性を考えて工夫する。
「シンシア」石井真介シェフ × デイリーフリー
2017.12.14
photographs by Masahiro Goda
テーマ:【 デイリーフリー 】
「デイリーフリー」とは動物性の乳製品を使わない食事。乳糖不耐症など、実は体質的に牛乳が苦手な日本人は少なくなく、取り組んでおきたい分野。東京・北参道の人気レストラン「シンシア」でひと工夫あるレシピを教わりました。
牛乳⇒豆乳ではなく、牛乳⇒豆腐。
フランス料理の場合、主素材ばかりでなく、フォンやソースなど、目に見えない形でも動物性食材を使います。濃度を付けたり、保形のために、小麦粉を使うケースも少なくありません。それだけに、アレルギーの有無は予約時に必ずお聞きするようにしています。食べることが好きで訪れてくださるお客様が多いせいか、今のところ、ヴィーガンなどの対応を迫られることはあまりありませんね。
ガストロノミーレストランである以上、たとえアレルギー対応していても、僕らしさが失われていたら意味がないと思っています。以前、グルテンアレルギーの外国人のお客様がいて、スペシャリテの「鯛焼き」(パイ生地で金目鯛とエビのすり身を包み、鯛焼き型で焼き上げる)の代わりに、鯛をカルタファタ(耐熱クッキングラップ)で包み焼きにしてお出ししました。パフォーマンス度も落とさないようにしたかったんですね。
「デイリー(乳製品)フリー」は牛乳アレルギーや乳糖不耐症に対応した食事ですが、うちの店ではまだ経験がなく、初チャレンジです。豆乳、アーモンドミルク、ココナッツミルク、ライスミルクなど、いろんな植物性ミルクを試してみました。
大前提として大事にしたのは、普段出している料理そのままの姿形に仕立てることです。同じテーブルで自分だけ違う料理を食べていると感じさせたくないのです。
写真上のフォワグラのコンフィは、酸味(ルバーブのコンフィチュール)、甘味(ニンジンのピュレ)、苦味(カカオ)、カリカリ(メレンゲ)、クリーミー(ホイップクリーム)、ふわふわ(牛乳の泡)、パリパリ(ビーツのチップス)といった多様な要素をアクセントとして食べるというものですが、牛乳を植物性素材に替えて作りました。下のムラング・シャンティイも牛乳を植物性に替えています。
ポイントはどちらもクリームにあります。豆腐で作るんです。
フォワグラに添えたクリームは、ほどよく水切りした絹ごし豆腐をロボクープでサラダオイルを加えながら撹拌して作ります。デザートのほうは、木綿豆腐をしっかり水切りしてココナッツオイルで同様に。豆腐の水分を抜いて脂肪分を加えることによってクリーム状にできるんですね。とろりとしたテクスチャーが欲しい時に豆乳を使うより有効です。
フォワグラに添えたクリームは、シーザードレッシングに仕立てるなど様々に応用がききます。デザートのクリームもいろいろ使えると思いますよ。
<RECIPE>
(料理・上)
■フォワグラのコンフィを豆腐のクリームや
アーモンドのカプチーノ、様々な酸味や甘味と合わせて
(作りやすい分量)
フォワグラのコンフィを、バニラビーンズ風味のニンジンのピュレ(甘)、ルバーブのコンフィチュール(酸)、カカオパウダー(苦)など、様々な要素と共に味わう料理。豆腐とサラダオイルで作るクリーム、アーモンドミルクの泡を添えている。フォワグラの下にはフレッシュな柿の薄切り。
◎ファワグラのコンフィ
フォワグラ……450g
マリネ液*……100ml
*白ポルト酒375g、メープルシュガー160g、コニャック25g、塩56gを混ぜ合わせたもの。
1 フォワグラは、マリネ液と共に真空パックにして一晩マリネする。
2 真空パックのまま常温に戻してから、52℃のスチームコンベクションオーブンで15分加熱。
◎豆腐のクリーム
絹ごし豆腐……100g
塩……適量
サラダオイル……60g
1 豆腐をザルにのせて、半日置き、水切りする。
2 ロボクープに、水切りした豆腐と塩を入れて、サラダオイルを糸状に垂らし入れながら撹拌して、滑らかなクリーム状にする。
◎アーモンドミルクの泡
アーモンドミルク……適量
1 アーモンドミルクをブレンダーで撹拌し、上に浮いた泡をすくって皿に盛る。
◎メレンゲ
豆腐とココナッツのムラング・シャンティイのメレンゲ参照。砕いて使う。
◎ニンジンのピュレ
ニンジン……200g
バニラビーンズ……半本
サラダオイル……適量
1 ニンジンはサイコロ状に切る。
2 鍋にサラダオイルを熱し、ニンジンとしごき出したバニラビーンズの種を炒める。
3 ひたひたの水(分量外)を加えて、柔らかくなるまで煮る。
4 ミキサーにかけてピュレ状にする。
◎ルバーブのコンフィチュール
ルバーブ……400g
グラニュー糖……150g
1 ルバーブを小口切りにして、グラニュー糖をよく揉み込む。
2 鍋に入れて、水分を引き出すように弱火で加熱して、ジャムにする。
◎カカオパウダー
チョコスポンジ……適量
1 チョコスポンジを乾燥させてパウダーに砕く。
◎ビーツのチュイル
ビーツ……500g
ジャガイモ……100g
塩……適量
1 ビーツは皮を剥き、サイコロ状に切り、柔らかく茹でる。
2 ジャガイモは生のまま、サイコロ状に。
3 1と2と塩をごく少量の水(分量外)と共にミキサーで撹拌し、ピュレ状にする。
4 シルパットの上に薄く伸ばして、110℃のコンベクションオーブンで乾燥焼きする。
◎盛り付け
1 5mm厚さにスライスした柿(分量外)を皿に置き、5mm厚さに切ったフォワグラをのせる。
2 各パーツを適宜盛り付ける。
■豆腐とココナッツのムラング・シャンティイ
(作りやすい分量)
◎メレンゲ
卵白……100g
グラニュー糖……100g
粉糖……100g
1 ミキサーボウルに卵白とグラニュー糖を入れ、ホイッパーで高速で撹拌する。粉糖を2~3回に分けて加え、撹拌を続ける。
2 きめ細かな気泡ができて、ツノが立つようになったら、天板に直径4~5cmサイズに絞り出す。
3 130℃のコンベクションオーブンで1時間、90℃に落として3時間焼く。
◎豆腐のホイップクリーム
木綿豆腐……1丁
塩……1g
きび砂糖……30g
ココナッツオイル……10g
1 木綿豆腐はザルにのせて2日間水切り。
2 水切りした豆腐、塩、きび砂糖をロボクープに入れ、ココナッツオイルを糸状に垂らしながら、撹拌する。滑らかなクリーム状になったら出来上がり。
◎豆腐とココナッツミルクのアイスクリーム
豆腐のホイップクリーム……100g
ココナッツミルク……100g
きび砂糖……20g
1 ボウルに全材料を入れてホイッパーでよく混ぜ合わせる。
2 エスプーマに入れ、液体窒素の中に噴き出して凍らせ、アイスクリームを作る。
◎ココナッツオイルのパウダー
ココナッツオイル……100g
マルトセック*……30g
1 ボウルにココナッツオイルを入れ、マルトセックを数回に分けて加え、ゴムベラで混ぜて、パウダー状にする。
◎組み立て
皿にメレンゲとアイスクリームをのせ、ホイップクリームをかける。パウダーをふる。
◎ シンシア
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-13
原宿東急アパートメントB1
☎ 03-6804-2006
18:00~21:00LO
日曜、第1・3・5月曜休
8000円~、10000円~
カード可、18席、禁煙
東京メトロ北参道駅より徒歩5分
https://www.facebook.com/fr.sincere