食のバリアフリープロジェクト:FREEなレシピ 7
摂るべきは、ビタミン、不飽和脂肪酸、抗酸化物質。
「HEINZ BECK」ハインツ・ベックシェフ × アルツハイマー予防
2018.03.15
photographs by Tsunenori Yamashita
テーマ:【アルツハイマー予防】
アルツハイマー型認知症の発症には食習慣が関係していると言われます。
ローマの三ツ星レストラン「ラ・ペルゴラ」を営みながら、医療関係者と連携して“美食と健康”を追求するハインツ・ベックシェフに、アルツハイマー予防の観点からレシピを教わりました。
皿の上だけでなく社会全体を考えて料理を作る。
約20年前から「美食と健康」をテーマに研究を重ねてきました。知人の医者と話をしているうちに、料理人はもっと病気と食事の関係について知識を深めるべきだと触発されたのがきっかけです。料理人が知識を持てば、患っている人々にとってよりポジティブな料理を提供できる。それはすなわち料理のクオリティを上げることであると私は考えました。
高血圧、糖尿病、子供の肥満、アレルギーなどに取り組み、医療チームと共に私の料理を食べた人の食後(1時間後、6時間後、翌日)のインスリン値を測ったこともあります。
2010年にはSIIA財団(高血圧と心臓血管に関する研究機関)の協力のもと、『Ipertensione e alimentazione(高血圧と食物)』を、2012年にはFIMP財団(イタリア小児科協会)の協力で『Consigli e ricette per piccolo Gourmet(子供の食育とレシピ)』を出版しました。
アルツハイマーには自分自身の好奇心もあって取り組み始め、2014年、ローマのアゴスティーノ・ジェメリ大学総合病院で行われたアルツハイマーのシンポジウムでスピーチもしています。
間違っても私の作る料理が病気を治すわけではありません。私たち料理人は医者ではなく、料理は薬ではない。しかし、食事と病気の関係への理解を社会に促し、若い時から正しい食事を摂るように提唱することは、医療費の削減につながり、個人的にも国にとっても節約になります。私は皿の上だけでなく社会全体までを考えて料理を作りたいのです。
アルツハイマー予防は日本のみならずイタリアでも関心の高い社会的課題です。イタリアの高齢率は日本に次いで世界2位ですから。
では、具体的にどんな食事が望ましいのか。
基本は旬のフレッシュな食材を使うことです。鮮度良く栄養成分を十分に蓄えた食材は何にもまして重要です。その上で、アルツハイマー予防や進行阻止にとって効果的な食材を選びます。たとえば、ビタミンA、C、Eやオメガ3脂肪酸を多く含み、抗酸化物質を含む食材ですね。
今回ご紹介した料理はどちらもその点を意識しています。ご存じのように緑黄色野菜にはビタミンやポリフェノールによる抗酸化作用が期待でき、キヌアは多くの無機質と食物繊維も含みます。クルクマは日本ではまだめずらしいかもしれませんが、臓器の解毒作用があるんですよ。
食材が持つ栄養素や役割と向き合っていくと、この2品の料理はアルツハイマー予防だけにいいわけではないことがわかります。心臓病や生活習慣病、子供の肥満にとってもプラスになる部分がある。それが食の良いところです。ピンポイントではなく、身体全体の機能を高めるように働いてくれる。
旬の野菜やフルーツをたくさん摂ること。動物性脂肪は控えめに。魚(甲殻類よりも魚)を食べる。赤身肉(牛、羊など)を食べたら、次は白身肉(鶏、七面鳥、仔牛など)を。1回の食事量は少なく1日の回数を多く食べること……等々、少し意識するだけで、食事の質は向上して、身体に様々なメリットをもたらすことでしょう。
ただ、自分に言い聞かせるんですよ。どんなに身体へのメリットを盛り込もうとも、レストランのシェフである以上、おいしさの感動を与えることが第一であると。
<RECIPE>
冬の野菜とニンジン、オレンジ、クルクマ、ヴェルヴェーヌのスープ
◎材料(1人分)
キヌア……15g
カボチャ……800g
カリフラワー(紫)……10g
ブロッコリー……50g
フィノッキオ……30g
黄ニンジン……20g
カブ(もものすけ)……20g
芽キャベツ……10g
根セロリ……6g
フィノッキオの芽……5g
タケノコ……15g
赤タマネギ……8g
ラディッシュ……6g
野菜のブロード……100g
塩……適量
マルトース……3g
ナッツオイル……1g
<茹で汁>
砂糖……10g
ホワイトバルサミコ酢……50g
水……50g
オレンジ果汁……100g
スターアニス……2g
フィノッキオの種……2g
1) 砂糖とホワイトバルサミコを入れた水を沸騰させ、オレンジ果汁、スターアニス、フィノッキオの種を加える。
2) 火を止めて30分置く。
3) シノワで漉して、塩(分量外)で味を調える。
<スープ>
ニンジン果汁……90g
オレンジ果汁……10g
ヴェルヴェーヌ……2g
クルクマ……1g
1) 全材料を混ぜ合わせて、真空パックにして、1時間休ませる。
2) シノワで漉して、塩(分量外)で味を調える。
1 キヌアは、塩をひとつまみ入れた野菜のブロードで15分間茹でる。
2 カボチャを丸ごと180℃のオーブンで40分焼く。熱いうちに皮をむいてさいの目に切り、ミキサーで滑らかなピュレにする。
3 カリフラワー(紫)はおろし器でおろして、ひとつまみの塩で和えておく。
4 ブロッコリー、フィノッキオ、黄ニンジン、カブ(もものすけ)、芽キャベツ、根セロリはそれぞれ適宜カットし、塩を入れた沸騰湯で茹でる。氷水に取って、水を切る。
5 フィノッキオの芽は塩とオリーブ油で和えておく。
6 タケノコ、赤タマネギ、ラディッシュは適宜カットして、茹で汁で別々に茹でる。
7 マルトースとナッツオイルを混ぜ合わせて、ナッツオイルのパウダーを作る。
8 1~7を器に盛り付け、スープをかける。
トレヴィーゾ産ラディッキオ、鯖とザクロのオーブン焼き
◎材料(1人分)
サバ(身のみ)……40g
ザクロ……1個
トレヴィーゾ産ラディッキオ……40g
ホワイトバルサミコ酢……10g
塩……適量
<ソース>
魚貝のブロード……200g
亜麻仁油……10g
E.V.オリーブ油……10g
レモン……5g
全材料をバーミックスで攪拌して、塩(分量外)で味を調える。
1 サバは適宜カットして、塩とホワイトバルサミコ酢でマリネしてから、表面をバーナーで焙る。
2 ザクロは丸ごと280℃のオーブンで約20分焼く。
3 ラディッキオは縦に細くカットする。
4 皿に、サバ、ラディッキオを盛り、ザクロを割って実を取り出して添える。ソースをかけて供する。
SHOP DATA
◎ HEINZ BECK
東京都千代田区丸の内1-1-3 日本生命丸の内ガーデンタワーM2F(入口は1F)
11:30~13:30LO 17:30~20:00LO
日曜休
昼6000円~、夜12000円~、
カード可、34席(個室含む)、禁煙
東京メトロ大手町駅D6出口直結
http://www.heinzbeck.jp/